真水稔生の『ソフビ大好き!』


第245回 「敬礼すべき怪獣」 2024.6

昨夜、車を運転中、
たまたまパトカーと並んで信号待ちしていたのですが、
そのパトカーの方をチラッと見たら、
ハンドルを握っている警察官の方が、ガムを噛んでいました。

・・・(笑)。

まぁ、べつに悪い事ではないと思いますし、
ガムを噛むと脳が活性化して集中力も高まるそうですから、
全然いいンですけど、
どうして笑えてきたのかというと、
その警察官の方1人きりの車内でしたのでおそらくリラックスしてたのでしょう、
人目をはばからずクチャクチャやってるその行儀の悪い噛み方やかったるそうな表情が、
なんか、イキっているチンピラみたいだったンですよね。
それが、制帽や制服から受ける生真面目でお堅い印象とはどうにも合致せず、可笑しかったのです。

けど、すぐに、

 ・・・ん?
 ガムを噛んでる柄の悪い警察官?
 ・・・あぁ、八百だぁ!

と、
子供の頃に観てたテレビドラマ『ワイルド7』で手塚茂夫さんが演じていた “八百” を思い出し、

 あぁ、おそらく、この方も、
  ♪悪にゃめっぽう強いヤツ~
で、
  ♪悪に向かえば燃えるヤツ~ 
 なンだろうなぁ・・・、

なんて思って(笑)、

 この世のドブさらい、どうも御苦労様です。 いつもありがとうございます・・・、

と心の中で敬礼した次第です。


手塚茂夫さんの演じる八百・・・、好きだったンですよねぇ、僕。

以前、第172回「お江戸の空に春をよぶ」でも述べたように、
本郷猛よりも一文字隼人が好きだったり、
“遠山の金さん” では中村梅之助(四代目)さんが演じた金さんがいちばん好きだったり、
同じカッコいい大人でも、
クールで凛とした感じの人より、
ちょっとくだけた感じの、遊び人っぽい人に惹かれるンですよね、子供の頃から。
なので、八百。
もう、ドンピシャ、でした。

番組放映時(僕は小学2年生)、
ワイルド7ごっこ
(といっても、同級生数人と主題歌を合唱しながら自転車で走るだけ(笑))をする際にも、
みんなは小野信也さんが演じていた飛葉になりきってましたが、
僕だけは、八百になったつもりで楽しんでたくらいです。

第何話だったか、
郷鍈治さん演じる殺し屋と八百が、荒野で一騎打ちとなるシーンがあったンですけど、
あれ、シビれたなぁ・・・。
どう見ても郷鍈治さん演じる殺し屋の方が怖いし強そうなのに(笑)、
一回転して相手の的を外し、その一瞬の隙をついて撃ち、勝利するンですよねぇ、八百が。
それも、ガムを噛みながら・・・。
子供心にめっちゃカッコいいと思ったので、忘れられません。

そういえば、
手塚茂夫さんは、『ウルトラマンレオ』でMACの隊員も演じられてましたね。
僕は、前番組『ウルトラマンタロウ』の幼児向けな作風に失望して
ウルトラシリーズから心が離れてしまった子供でしたので、
第74回「燃えろレオ! 燃えろオレ!」で述べたように、
『ウルトラマンレオ』をしっかりと観たのは再放送で、中学3年生の時でした。
なので、
『ワイルド7』を観ていた時からは7年も経過していたため、
手塚茂夫さんが出てきても、最初は気づかなかったのですが、

 ・・・あれ?
 この人、どっかで見た事が・・・あ、そうだ!
 八百、演ってた人だぁ!

って認識出来た時は、めちゃくちゃ嬉しかったものです。


ただ、
一般的に、手塚茂夫さん、といえば、
『ワイルド7』の八百でも『ウルトラマンレオ』のMAC隊員でもなく、
やはり、なんといっても、
『太陽にほえろ!』で松田優作さん演じるジーパン刑事を射殺した、
あの犯人役が有名ですよね。
『太陽にほえろ!』を観ていなかった世代の人でも、あの殉職シーンだけは知ってるくらいですから・・・。

僕はリアルタイム(これは『ワイルド7』から2年後の小学4年生の時)で観てましたが、

 憧れていた八百の手塚茂夫さんが犯人役、

という事で、複雑な心境だった事を憶えています(苦笑)。
衝撃的でしたもんねぇ、あの殉職シーンは・・・。



・・・そんなわけですので、
今回はウインダムのソフビを紹介させていただく事にします。

・・・え? 急になんだ、って?

だってェ~、“殉職” といえば、ウインダムじゃないですかぁ~。
ガッツ星人に殺されちゃったでしょ? あいつ・・・。

 ♪守れ ぼくらのしあわせを~

って、『ウルトラセブン』の主題歌の歌詞の中にありますけど、
僕らの幸せを守るために、死んだンですから、ウインダムは・・・。
ヒーローですよ、立派な。
その事に敬意を表している特撮ファンなら、
“殉職” というキーワードからウインダムを思い出すのは当然の事。

それに、急ではありませんよ。
『ワイルド7』の八百といえば手塚茂夫さんで、
手塚茂夫さんといえば、『ウルトラマンレオ』のMAC隊員で、
そのMACの隊長は、モノロボシ・ダンですから、
モロボシ・ダンが『ウルトラセブン』で
手下として使っていた3匹のカプセル怪獣(ウインダム、ミクラス、アギラ)のうち、
唯一、戦闘中に悪者に殺されてる、つまり殉職してるウインダムも辿り着いても、何の不自然さもありません。
むしろ必然的な流れです。

当然必然的、となれば、
もう、そりゃあ、どうしたってフィーチャーするのはウインダムでしょう。

しかも、
ウインダムのデザイン・造形のモチーフは、
フクロウ科の鳥のミミズクで、
そのミミズクの一種であるコノハズク
(ここ愛知県の県鳥に選定されています)をモデルにした “コノハけいぶ” は
愛知県警察のマスコットキャラクター、と来てますから、
事の発端の、
僕の車の隣でパトカーを運転しながらガムを噛んでいた警察官の方とも、繋がります。

もう、これしかないですよ。今回はウインダム。完璧(笑)。

 マルサン製 スタンダードサイズ、全長約24センチ。

 3種とも、
 『ウルトラセブン』本放送時および本放送終了直後の昭和42、43年の商品です。
 向かって右端の人形は、以前、第174回「夢見る大人のひみつ基地」の中でも紹介しました。
   
 昭和のソフビながら、過度なデフォルメはされておらず、
 実物の姿にかなり近い造形で、落ち着いた魅力がありますが、
 それでも、
 シンメトリーを壊す事で、怪獣の呼吸や動きを表現し、
 子供と一緒に “夢の生き物” を大胆に楽しもうとする “マルサン魂” は、
 しっかりと息づいています。
 右手だけ、親指を内側に折っているのは、その象徴と言えますね。
 マルサンが作っていた怪獣ソフビは、フィギュアではなく、あくまでもオモチャの人形、なのであります。

それに、ウインダムは、
ロボットではなく、あくまでも怪獣(機械生命体)なので、
“呼吸” の表現は必要ですし、
着ぐるみの中に人間が入って演じた “動き” は、コミカルな面もありましたので、
そういった意味で、
ロボットのようなカッコよさと生き物である事の生々しさが巧く絡み合い、
かつ、
着ぐるみ怪獣の鈍臭い味わいも絶妙に感じられるこのソフビの造形は、
いかにもウインダム、って感じで、奇跡の完成度。
昭和の傑作ソフビのひとつ、だと思います。
さすがマルサン、素晴らしいです。







同じくマルサン製で、
こちらはミドルサイズ、全長約18センチ。

番組放映時の商品で、
スタンダードサイズに倣って、やはり、右手の親指を内側に折っています。
   
   
こちらは、
ブルマァク製 スタンダードサイズで、全長約24センチ。

第31回「夏だ!ビールだ!ソフビが美味い!」の中でも紹介した人形で、
昭和45、46年頃の商品です。

マルサンの金型を流用し、
カラーリングも、先に紹介した3種の向かって右端のものに倣ってます。

     



それゆえ、
現在では、
足の裏のメーカーの刻印を見ないと、
どちらがマルサン製でどちらがブルマァク製か、は判別が困難です。  

 ブルマァクは、
 『ウルトラセブン』の放送終了後、怪獣ブームの衰退とともに倒産してしまったマルサンに替わり、
 昭和40年代の半ばから後半にかけてソフビ怪獣を販売して、怪獣ブームの再来を仕掛け、
 再来どころか、
 それを大きく上回る盛り上がりの “第2次怪獣ブーム” という、
 児童文化の歴史に残る、特筆すべき事態を招く事に成功したメーカーですが、
 マルサンの金型を流用するだけでなく、
 独自の金型で、ブルマァクの造形によるソフビ怪獣も多数、世に放ちました。
 ウインダムも、
 スタンダードサイズの人形は、このようにマルサンの金型だったものの、
 下記に紹介するジャイアントサイズやミニサイズの人形は、ブルマァクが新たに起こした金型によるものです。

ブルマァク製 ジャイアントサイズ、全長約37センチ。

二本足で立つ大きなサイズのソフビで、
しかも、頭でっかちな造形ゆえバランスが悪く、
写真を撮るために自立させるのに苦労しました。
でも、
この、よろめいているような感じが、
劇中の、ガッツ星人の円盤から攻撃されて倒れてしまう寸前のようで、
ウインダムが殉職してしまった悲しみがリアルによみがえり、
改めて、黙祷を捧げた次第。



やはり、右手の親指が内側に折られています。
・・・べつに、
絶対にそうしなきゃいけない、なんて事はなかったと思うンですけどね(笑)。
 

 なので・・・かどうかは不明ですが、
 ミニサイズは、こんなポーズの造形でソフビ化。右手の親指を内側に折る呪縛(笑)から、解放されています。
 ブルマァク製 ミニサイズ、全長約11センチ。

 勇ましく戦闘ポーズをとっているのに可愛い・・・、

というのは、
昭和のミニソフビあるある(笑)ですよね。
懐かしさとともに、その心地よい違和感で、心を和ませてくれます。

     
     



こちらは、
ポピー製 キングザウルスシリーズで、全長約17センチ。

足の裏に、
その怪獣の足型がモールドされているのが特徴の、
昭和50年代半ばの商品。
 
 ブルマァクも倒産し、
 第2次怪獣ブームも完全に去ってしまった時期に流通していたものですので、
 ソフビ怪獣というオモチャの歴史上において、なんとも地味な存在のシリーズとなってはいますが、
 これまでにもいろいろ紹介してきましたとおり、魅力的な人形はたくさんあります。
 このウインダム人形も、そのひとつ。
 現在のようなソフビブームがあるのは、
 そんな、怪獣の人気や需要が今イチだった時代にも、
 良質な人形で “ソフビ怪獣” というオモチャの一ジャンルを支えた、
 このポピーのキングザウルスシリーズのおかげ、だと僕は思っています。感謝。

 僕は、マルサン・ブルマァク時代の子供でしたので、
 このソフビで遊んだ思い出はありませんが、
 今述べたような理由で、この人形が愛しくてたまらないのであります。
   
指を内側に折ってはいませんが、
“マルサン魂” の継承か、右手と左手の形状を変えてあるので、
これから闘おうとしているウインダムの意思を感じますね。

拳を握ってるのが左手という事は、ウインダムは左利きなのかな?(笑)





 
 そして、
 怪獣ソフビといえばバンダイ、の時代へ突入。
 まずは、定番のウルトラ怪獣シリーズ(ウルトラ怪獣コレクション)から御紹介。
これは、
初版の人形で全長約19センチ。
昭和58年の発売。
このシリーズで、唯一、人形にタグを打ち込む事無く、
マルサンやブルマァク時代のように
人形が袋に入れられた状態で販売されていた、いわゆる2期の人形。
全長約18センチ。昭和61年の発売。

平成元年に、
鮮やかなカラーリングにリニューアルされました。
全長約18センチ。
平成2年か3年の頭くらいでしたか、
気づいたら、こんなカラーリングで発売されていました。
なんだか地味・・・っていうか、
塗装の量をケチってるみたいで、貧乏くさい印象です(笑)。
全長約18センチ。 
その平成3年には、
価格が500円から600円に値上げされたのですが、
その際、
このようにシルバーのスプレー箇所が少し増えました。
塗装の量を増やし、見た目をきれいにに整えたのは、

 湾岸戦争による石油価格の高騰化が原因とはいえ、
 値上げするのが消費者に申し訳ないと思ったバンダイさんの気遣いによる、
 せめてものサービス・・・、

だった気がします(笑)。
全長約18センチ。


平成7年、
PL法の施行により、
素材が硬質ソフビから軟質ソフビへと推移しました。
その際、全長約19センチ、と初版と同じ大きさに戻りました。
 
   
    途中から、とさか(?)の部分に、オレンジや赤の塗装が入るようになりました。
 
 
 ここからは、
 ウルトラ怪獣シリーズ以外の商品を御紹介。
まずは、コレ。
全長約11センチの、言わばミニサイズ人形。
“怪獣くん” というシリーズで、昭和58年の発売。
 
   
   
こちらは、
さらに小さく全長約8センチ。
“ウルトラマン全集” というシリーズの食玩ソフビです。
平成7年の発売。
   
   
今度は、逆に大きく、全長約27センチ。
バンダイの商品ではなく、
バンプレスト製の “ウルトラセブンフィギュアコレクション” という、
平成21年のプライズ(クレーンゲームの景品)ソフビです。
   
   
再度、ウルトラ怪獣シリーズに戻りますが、
こちらは、
平成18年放送開始の『ウルトラマンメビウス』に登場したウインダムですので、
番外編、として紹介させていただきます。
全長約19センチで、その平成18年の発売。

『ウルトラマンメビウス』に登場したウインダムは、
『ウルトラセブン』で殉職してしまったウインダムとは、当然の事ながら別個体。
・・・ってか、そもそも生き物ではありません。地球防衛のために作られた “兵器” です。

 M78星雲からウルトラセブンが小さなカプセルに収縮して地球へ連れてきた怪獣・・・、

なんていうメルヘンチック(笑)な存在では、ないのであります。

それゆえに、温かみのある昭和のソフビでなく、殺伐とした平成のソフビにピッタリ。
この人形は、理に適ったカッコよさが光るソフビ、と言えます。 
兵器ゆえ、カスタムも可能。
劇中で、“ファイヤーショット” なる火炎弾を放つ銃口が備え付けられました。
その名も “ファイヤーウインダム”。
同じく平成18年の発売で、全長約19センチ。
 
こちらは、
平成20年に、
カラーリングを微妙に変えて、
『ウルトラセブン』のウインダム、として発売された人形。全長約19センチ。
 
    別個体なンですから、
そこは、こだわって、新たに金型を起こして新造形で発売してほしかったものです。
色だけ、ちょこっと変えて、

 「ハイ、こちらは『ウルトラセブン』のウインダムになりま~す」

と言われても、
なんだか馬鹿にされているようで・・・。 まぁ、喜んで買いましたけどね(苦笑)。
 
     
     
 


さてさて、
今回取り上げたウインダムですが、
時々、“ウインダム” を、なぜか “ウィンダム” と表記した記事を目にする事があります。
気になっちゃうンですよねぇ、あれ・・・。
命を散らしてまで僕らの幸せを守ろうとしてくれた相手に、失礼すぎるでしょ?
地球の平和のために殉職したのに、
その地球人に名前を間違えられていては、ウインダムも浮かばれません。

以前、第158回「熱く正しく」の中でも述べたとおり、
名前の誤表記は、
書き手の愛の無さや配慮の足りなさを感じさせる、恥ずべき失態。
人間なので間違いは付き物ですが、そこは細心の注意を払い、正確にお願いしたいものです。

だいたい、“ウィンダム” だなんて、
口に出して読んでみたら、すぐに、おかしい、って気づくじゃないですか。
ファーストサマーウイカさんの事を “ファーストサマーウィカ” って言ったり、
上戸彩(ウエトアヤ)さんの事を “ウェトアヤ” なんて言ったりする人は、いないのですから(笑)。
“ウインダム” を “ウィンダム” だなんて、
それくらい素っ頓狂で気持ち悪い事なのです。やめて下さい、ホント。
よろしくお願いします。
               









 






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