真水稔生の『ソフビ大好き!』



第246回 「還る」 2024.7

いやぁ~、暑いですねぇ、毎日、毎日・・・。
あまりに暑すぎて、
セミすらも、夏バテ気味なのか(笑)、
例年のような激し勢いでは鳴いていないような気がします。

・・・そんな中、僕は、
本日(7月10日)、60回目の誕生日を迎えまして、ついに還暦、と相成りました。

いやぁ~、60歳ですよ、60歳。
僕がこの世に生まれてきたの、60年も前の事なンです。

 どんだけ昔やねん!

って自分自身にツッコんでしまいそうですが、

 気づいたら、こんな年齢になってた・・・、

って感じなンですよねぇ。
お気楽な話です、我ながら(苦笑)。

ただ、
今日、今現在、こうして無事に生きていられるのは、とても幸運な事。

 ありがたいなぁ・・・、

って、思います。

 


それにしても、
60年前の夏はこんなにも暑くはなかったであろうとはいえ、
決して快適ではないこんなシンドい季節に、母親は、よくぞ頑張って僕を生んでくれたものです。
改めて感謝。

お母さーん、ありがとうねーっ!

そっち(天国)も、やっぱ夏は暑いですかーっ?


・・・あ、そうそう、
天国には父親もいますので、ついでに(笑)、

お父さんも、ありがとうねーっ!

あなたの息子、還暦になりましたよーっ!
 

そういえば、
父親は59歳で他界していますので、父親の年齢を追い抜いちゃったンですよねぇ、僕・・・。
働きづめで早死にしちゃった父親の年齢を、
こんなノーテンキに暮らしながら(苦笑)追い抜いてしまっては、
なんだか罰当たりな気がしないでもないのですが、
父親が見られなかった年齢の景色を、僕が今こうして見ている事は、
もしかしたら、
ろくに親孝行も出来ぬまま父親を亡くしてしまったバカ息子の、唯一の親孝行かもしれません。
そう、信じます。・・・信じたいです。・・・信じるしかないです(苦笑)。


さてさて、
還暦となる60歳の誕生日を迎えて
そんなふうに天国の両親へ思いを馳せ、殊勝な気持ちでいたところ、
或る後輩から、“誕生(還暦)祝い” という事で、これが届きました。
鹿児島の酒造メーカー・さつま無双の “芋焼酎 赤もぐら”。

原料に紅さつま芋が使われているので “赤” だそうなのですが、
赤ちゃんに還る意の還暦の “赤” に引っかけて、選んでくれたそうです。
 

・・・で、お礼のメールを送ったら、すぐに返信が来たのですが、
その返信の最後に、

 >御両親に感謝しながら飲んで下さいね

とあったので、

 ・・・え?
 今、天国の両親の事を思ってた僕の脳内を見たの?
 怖い怖い怖い。何何何? 新子景視?(笑)

と思い、
再度メールを送って確認すると、
僕がずっと以前に、

 誕生日は自分を生んでくれた両親に感謝する日だ・・・、

みたいな事をその後輩に言ったそうで、
それが、その後輩の心にずっと刺さっていた事が判明しました。

 あぁ、なんだぁ、そういう事か・・・、

と納得しつつ、

 いい事言うなぁ、僕・・・、

と我ながら感心してしまったのですが、
そんな事を言った記憶、まったく無いンですよねぇ・・・。

なので、たぶん、
その当時読んできた本にそんな言葉が書いてあったか、
あるいは、
直前に観たテレビドラマで誰かがそんな台詞を言っていたか、か何かで、
それを、単なる思いつきで、
相手が年下の後輩だったからカッコつけて言っただけの事でしょう(苦笑)。

とはいえ、
何年も後になって、
その言葉が自分の誕生日(それも記念すべき還暦の)に還ってきたわけですから、
妙に胸に沁みてしまいました。
両親の愛や、その後輩の気遣いが、
紅さつま芋のコクのある甘みに現れているような気がして、
とても幸せな気持ちで、今、独り、飲んでいるところです。


ところで、この "芋焼酎 赤もぐら”、
“赤” は、紅さつま芋の “赤” だとしても、
“もぐら” は、どこから来てるのか、どうして “もぐら” なのか、
気になったので調べてみたら、

 土から掘り出した芋がもぐらに見えたから・・・、

と、さつま無双さんのホームページに記されていました。

 な~んだ、
 本当にあの動物の “もぐら” が由来なんだ。“まんま” だなぁ・・・、

と笑えてきたものの、“もぐら” は漢字で書くと “土竜” ゆえ、

 あっ、僕の干支である辰(竜)にも掛かってるじゃん! 凄い!

と、なにやら運命的なものを感じてしまいました。

相変わらず大袈裟に物事を捉えてしまう僕ですが(苦笑)、

 この “赤もぐら(赤土竜)” は、
 還暦(赤ちゃんに還る年齢)を迎えた辰(竜)年の僕が飲むに相応しいお酒だ・・・、

と嬉しくなった次第です。



なので、
今回は紹介するソフビも “赤もぐら”(笑)。

モグラング
ポピー製、全長約11センチ。

『仮面ライダー』に登場したショッカー怪人・モグラングのミニサイズ人形で、
番組が始まった昭和46年に発売された商品です。
実物のモグラングの体色とは異なる “赤” が、成形色となっています。
2体とも、
青み掛かったグレーの塗装が施されていますが
メタリック(向かって左側)とマット(右側)の違いがあります。
   


劇中、モグラングは、
セメントタンクに蹴り落とされる、という最期を遂げますが、
このミニ人形は、
グレーの塗装がセメントに見えて、その場面にピッタリの印象。 
本来は威嚇の表現として
造形されたであろう両手上げのポーズが、
苦痛の表情にも見える顔の造形にもアシストされ、
もがきながらセメントタンクに沈んでいく様に思えてしまいます。

目の部分の粗雑極まりない塗装も、
涙とセメントでグッチャグチャになってるみたいで、
辛そうな雰囲気が、巧い具合に出てますしね。



・・・あぁ、なんか、焼酎とソフビの “ダブル赤もぐら” のおかげで、
とってもいい感じに酔えてきました。 

気分がいいので、
ついでに
同じ時期に発売されたスタンダードサイズのモグラング人形も詳しく紹介させていただきましょう。
バンダイ製、全長約24センチ。

こちらは、
塗装色でなく成形色がこの色ですので、
もう、セメントにどっぷりと浸かった状態のようです。

・・・っていうか、
モグラングは本来この体色なンですけどね(笑)。


以前、第35回「ショッカー怪人に魅せられて」の中で
この人形をチラッと紹介した際にも述べましたが、
当時、全部で30種以上発売された
スタンダードサイズのショッカー怪人人形の中から、
このモグラング人形を選んで
おねだりして買ってもらった子供は、
なかなかの “怪人通” だと思いますね。
もっと言うと、
真の『仮面ライダー』ファン、ではないでしょうか・・・。

だって、
派手さが無いじゃないですか、まったく。
子供のオモチャなのに、
子供に媚びてないンですよね、一切。
売る気あるの? って、思っちゃうくらい。
実物どおり、とはいえ、やはりこの彩色は地味だし、
造形も、
モグラングの特徴の一つである巨大なショベルのような左手を、
面倒くさいからか、コスト面の都合なのか知らないけど、
こんな、普通のサイズの普通の手にしてしまっていて、
外形の特異な形状は子供が喜びそうなところなのに、
そこにまったく注力していないし、
そもそも、
モグラングという怪人自体が、
必殺技のライダーキックを喰らって華々しく爆死して散るのでなく、
先述のとおり、
セメントタンクに沈められて窒息死、という地味な最期を遂げた事に象徴される、
言わば、“華” の無い怪人でしたので、
とことん地味な怪人人形、なンですよね、これ。 
なので、
ショッカー怪人の魅力を深く理解している子供でないと、
目に留めないと思うンです。
店頭には、
蜘蛛男やトカゲロンやキノコモルグなど、
色鮮やかでカッコいい人気怪人の人形が
ほかにもいっぱい並んでたンですから・・・。

子供の時にこれを買ってもらおうと思った、なんて、
ホント、“『仮面ライダー』愛” に満ちた人。
今、ここへ招待して、一緒に飲みたいです(笑)。














 ・・・渋い。 
    それにしても、
モグラング、って、モグラの怪人なのに、
なんでモグラでなく、こんな海坊主みたいなオッサン顔してるンですかね?
素体にされた人間がこんな顔してて、
そのインパクトにモグラの個性が負けちゃったのでしょうか・・・(笑)。
こういう、
安易にモチーフとなった動植物そのものの容姿をしていない、ってところが
ショッカー怪人の、延いては『仮面ライダー』の、奥深い魅力のひとつですから、
そういった意味でも、
やっぱ、当時、この人形を持ってた子は、凄いと思います。

そういえば、
劇中、ゾル大佐が謎の液体(改造人間を元の人間に戻す薬?)が入った瓶を手に、
モグラングに向かって、

 作戦がうまくいったら、これでお前を元の人間に戻してやる・・・、

みたいな事を言っていたのを憶えています。
ゾル大佐の事ですから、そんなの嘘に決まってるでしょうけど、
それに頷いたモグラングは、そう願って、そう信じて、任務の遂行をしているわけで、
もしかしたら、
家族を人質にとられていたか何かで、脅されて、仕方なく悪に手を染めてしまっていたのかもしれません。
どんな人間がどんな事情でモグラングに改造されてしまったかは不明なものの、
今思うと、
あのやりとり、とても哀しいシーンだったと思いますね。
やっぱ、やっぱ、そんなモグラングを、人形を買ってもらって抱きしめるまで愛した子供のセンスは、凄い。


・・・あぁ、ホント、気分がいいなぁ。
よぉし、もう、ほかのモグラの怪人のソフビも、一気に紹介しちゃいましょう!

モグラルゲ
ポピー製、全長約15センチ。

以前、第54回「僕らのバロム・1」の中でもチラッと紹介しましたが、
これは、ショッカー怪人ではなく、ドルゲ魔人。
昭和47年に放送された『超人バロム・1』に登場した怪人(魔人)の人形で、
番組放映当時の商品です。

実物のモグラルゲの体色は、
モグラングと同じような濃いめのグレーで、やはり地味で渋い印象ですが、
人形の方は、
さすが昭和のソフビ、オモチャ売り場で子供の目を惹くため、実物の体色など無視して、
このようにド派手な彩色となっております。
 
太陽の光が苦手なモグラルゲは、地上ではサングラスをかけてましたが、
戦闘中にバロム・1にそれを外されたら、

 「目が焦げるぅ~」

と言って急に弱っちゃったのを憶えています。
このソフビは、
サングラスをしていない状態だし、
黄色成形に、日焼けしたような赤とギラギラ感のあるシルバーの塗装で、
灼熱の太陽をイメージ出来る彩色となっていますので、
その苦手な太陽の光を全身に浴びて、ヨレヨレ状態の人形だと思えば、
なんとも深い “味” が感じられます。
 
             
・・・あと、
個人的に、このモグラルゲの回は、
砂川啓介さんが演じた “松叔父” こと木戸松五郎の活躍が、強く記憶に残っていますね。
分厚いコンクリートの壁を、素手でぶち抜いたンですよねぇ、松叔父・・・。
あれには本当に驚かされました(笑)。
いくら空手の心得があるとはいえ、人間業ではありませんから、あんなの・・・。
そのおかげで、
松叔父と一緒に壁のこちら側にいた健太郎と、壁の向こう側にモグラルゲと一緒にいた猛がバロムクロス出来て、
バロム・1が登場し、モグラルゲを倒す事が出来たのですが、
あんな、バロム・1並みのパンチ力があるのなら、
子供二人がバロムクロスして変身するのなんか待たなくても、
松叔父が自分だけでモグラルゲを倒せただろう、って思います(笑)。



松叔父は、
定職にも就いていない、いわゆる、だらしない大人だし、
おっちょこちょいで、ドジで、頭も悪そうで、
主人公のヒーローを助けて共に悪と闘う “生身の人間” としては、
『仮面ライダー』における滝和也と比べると、あまりに残念なキャラクターであり、
視聴者だった僕ら当時の子供たちが憧れる存在では絶対になかったのですが、
このモグラルゲの回以降、僕はずっと、

 本当は、この人はめちゃくちゃ凄い・・・、
 実は、滝和也より強い・・・、

って思いながら、番組を観ていました。



再び、ライダーシリーズに戻りまして、
今度は
昭和48年に放送開始の『仮面ライダーV3』に登場した、この怪人。
ドリルモグラ
ポピー製、全長約8センチ。

番組放映当時の商品です。

 思いつめた恋心が歪んだ感情を生み出し、
 やがては、こんな悪魔の怪物と化してしまった・・・、

という、哀しく惨めな怪人。
僕のような、
女にモテた事が一切ない淋しい男には、身につまされます(笑)。
それでいて、
この、可愛らしいソフビ人形としての仕上がりが、また切ない・・・。
    詳しくは、
以前、この人形を紹介させていただいた、
第226回「渡る世間に鬼(デストロン)はあり」をお読み下さいませ。
共感していただけた方とは、
これまた是非、一緒に飲みたいですね(笑)。




モグラ獣人

バンダイ製 プレイヒーローVS仮面ライダー対決セット、全長約9センチ。

平成18年に発売された食玩ソフビで、アマゾンライダーとのセットでした。
      昭和49年放送開始の『仮面ライダーアマゾン』に登場した怪人(獣人)で、
鼻の先が花のような形状をしているので、
おそらく、ホシバナモグラがモチーフでしょう。


平成ソフビなので、
造形も彩色も、ほぼほぼ実物どおり。
それゆえ、劇中での活躍がストレートに甦ります。
   

活躍、と述べたのは、
モグラ獣人は最初こそアマゾンに襲い掛かかる敵だったものの、
任務失敗で処刑されかけたところをアマゾンに助けられ、改心し、
以降のエピソードでは、
多少のジレンマは抱きながらも、
悪を倒すため仮面ライダーに協力する、史上初の “正義の怪人” となったからです。

第21回「仮面ライダーシリーズの底力」の中でも述べましたが、
キノコ獣人がばら撒く殺人カビの解毒剤を作るため、
命と引き換えに自身が浴びたその殺人カビをアマゾンのもとへ持ち帰り、
アマゾンの腕の中で息を引き取る最期は、めちゃくちゃ泣けるし、
その後の、
解毒剤を飲んで殺人カビも効かない体となったアマゾンが、
モグラ獣人を殺されたその怒りと悲しみをぶつけるかの如く、
一切の反撃も許さず、一方的にキノコ獣人をボコボコに打ちのめすバトルシーンは、激しく心が震えます。
 
    人類の平和のため悪と闘う・・・、というよりは、
仲間の仇を取るためにキノコ獣人を只々殺しにかかる・・・、というアマゾンのその様が、
主題歌の、

 ♪正義のためなら鬼となる

 ♪友よ お前のためならば

って歌詞を、シビれるように実感させてくれます。

 仮面ライダー6号が、何ゆえ野獣なのか、何ゆえアマゾンなのか、

が解かる、仮面ライダーシリーズ史上、屈指の名場面だと思います。

僕よりちょこっと年上の、

 仮面ライダーシリーズは、V3の途中で観るのやめちゃった・・・、

なんて方や、
僕よりちょこっと年下の、

 リアルタイムの仮面ライダーはスカイライダーなンです、

なんて方は、
あの回・あの名場面を
知らなかったり観た事が無かったりするでしょうから、
それを思うと、

 やはり、60年前に生まれてきた僕は恵まれていたンだなぁ・・・、

って、嬉しくなってしまいます。



さてさて、
赤ちゃんに還る還暦といいながら、
ほろ酔い気分にも後押しされて、
仮面ライダーシリーズや『超人バロム・1』を観ていた小学生の低学年の頃に気持ちに還っちゃってますが、
ホント、いい時代に生まれてきたものだ、と改めて痛感しています。

この感謝の気持ちを胸に、
これからも精一杯、生きていきたいと思います。
今度は赤ちゃんに還るのではなく、土に還るその日まで・・・。



・・・あ、
お墓の下にも、もぐら、っているンですかね?
土に還ったら、確かめてみよ、っと(笑)。








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