真水稔生の『ソフビ大好き!』


第250回 「漫才対人間ドラマ対怪獣バトル」 2024.11

先日、YouTubeでいろんなお笑い動画を観ていた際、
2丁拳銃さんの漫才に、
いちばん最初の挨拶の部分で、
小堀さんが、

 「どうも、佐藤栞里ですぅ」

ってボケて、
間髪入れずに修士さんが、

 「やめてぇ! 二度と言わんといてぇ、それ・・・」

ってツッコむのがあり、死ぬほど笑ってしまいました。

“クズ” とか “ヘドロ” とか呼ばれている小堀さんが、
あの、明るくて清純な佐藤栞里さんと顔が似ている、なんていうのは、
言われて初めて気づいた “まさかの発見” で
意表を突かれたし、
それを受け、泣きそうな表情で「やめてぇ!」と訴える修士さんのツッコミは、
もう、国民の総意(笑)。
漫才自体も、もちろんメチャクチャおもしろかったのですが、
その最初の挨拶の部分だけ、何度も繰り返し再生してしまった次第です。
傑作の “つかみ” 。
いやぁ~、笑った、マジで。 最高でした。


ところで、“2丁拳銃” と聞いて、
昭和の怪獣ブームの中育った僕らの世代がまず頭に浮かべるのは、
やはり、『ウルトラマンA』で沖田駿一さんが演じた、TACの山中隊員ですよね。

・・・え? 急に特撮・怪獣関係の話に持ち込むのは強引?

いえいえ、そんな事はありません。
怖くて厳しい先輩として、北斗星司に辛く当たるところは少しイヤでしたが、
副隊長的存在で、しかも、射撃の名手であり、
常にタックガンを2挺携帯して
戦闘時にそれをカッコよく使いこなす山中隊員には憧れましたし、
『ウルトラマンティガ』でGUTSのムナカタ副隊長を演じた大滝明利さん(僕の1歳上)も、
番組開始当初、“副隊長” という役を演じるにあたり、

 「副隊長といえば、2挺拳銃の・・・」

って、子供の頃の憧れを何かのインタビューで語っておられたのを憶えています。
みんな、忘れられないのです。

だから、
2丁拳銃さんの漫才を観て爆笑していながらも、
その時、もう、すでに、
なんなら、2丁拳銃さんの漫才動画を選んだ最初の段階で、
僕は山中隊員の事を思い出していたし、
これを今読んで下さってる特撮ファンの方も、
冒頭2行目の、

 2丁拳銃さんの・・・、

って時点で、脳のどこかに、あの山中隊員のいかつい顔が現れていたはずです。
ごくごく自然な、当たり前の事です。

そして、それは、
どんなに2丁拳銃さんの漫才がおもしろくても、どんなに佐藤栞里さんが気の毒(笑)でも、
薄れたり消えたりするものではありません。
それくらい、“2挺拳銃の山中隊員” は、僕ら当時の子供たちの心に強烈なインパクトを残したのです。


・・・で、
そんな山中隊員で僕がいちばん忘れられない『ウルトラマンA』のエピソードは、
第7話「怪獣対超獣対宇宙人」と
第8話「太陽の命 エースの命」の前後編です。
山中隊員の恋人でマヤって女性が登場するンですけど、
前編の冒頭で、メトロン星人Jr. に殺されちゃうンですよね。
それも、山中隊員から婚約指輪を贈られた直後に・・・。
あれは衝撃でした。

この前後編は、

 妖星ゴランが地球に接近し、
 衝突すれば地球は木っ端微塵になってしまうため、
 TACは迎撃ミサイルで対処しようとするも、
 メトロン星人Jr. が現れ、親の死は地球人のせいだと思って逆恨みでもしてるのか、その邪魔を謀る。
 そんな混乱の中、地球侵略を企む異次元人ヤプールが超獣ドラゴリーを送り込んできて、
 さらには、以前、帰りマンに倒された怪獣ムルチまでもが
 なぜか甦って(別個体が目覚めたのかな? ・・・まぁ、どちらにせよ、なぜか突然現れて)大暴れ。
 この、宇宙人(メトロン星人Jr.)と超獣(ドラゴリー)と怪獣(ムルチ)の一斉襲来に
 我らがウルトラマンエースも大苦戦、人類は絶体絶命の危機に陥ってしまう・・・、

っていうお話で、
まぁ、普通の子供なら、
その、

 メトロン星人Jr.とドラゴリーとムルチを一度に迎え撃つウルトラマンエース、

って大イベントバトルに胸が躍るところなンでしょうが、
幼い頃から
子供向け大人向けに関わらずとにかくテレビドラマが好きだった僕は、
先述のとおり山中隊員に憧れていた事もあって、
無残に殺されたマヤと、そんな形で婚約者を突然失った山中隊員が、もう、可哀想で可哀想で、
エースと超獣たちのバトルシーンどころではなかったンですよね、当時(小学2年生)・・・。

この前後編を観ると、今でも・・・ってか、人生の機微を知った今の方がより一層、
山中隊員とマヤ、
及びそれを取り巻く北斗と南をはじめとする隊員たちが直面してるその状況、
そして、それに伴う心緒や言動に、激しく感情移入してしまい、
エースと超獣たちの派手なバトルそっちのけで、人間ドラマの方に興味が行ってしまう始末です。

特撮(怪獣)ファン失格、ですかね?(苦笑)

では、そうならないように、
山中隊員でなく怪獣バトルの方に意識を集中して(笑)、劇中のシーンをコレクションのソフビ怪獣人形で再現してみましょう。

 
 
メトロン星人Jr. のソフビは、当時は発売されませんでしたので、
以前、第98回「美しき侵略者」の中で紹介した、ブルマァクのミニサイズのメトロン星人の人形で代用してます。
ただ、何の奇跡か運命か、このようにオレンジ成形でしたので、
色鮮やかだった『ウルトラセブン』のメトロン星人と違い、頭部がオレンジ色1色だったJr.の方もイメージしやすく、
劇中場面の再現に、神秘的な味わいをもたらしてくれています。  
 
  それにしても、
バーチカルギロチンを喰らって果てたメトロン星人Jr. の最期は、

 親子2代で体を左右真っ二つに引き裂かれる運命だったのか・・・、

と、なんだか感慨深いものがありましたね(笑)。 
 
ムルチのソフビは、
以前、第117回「感謝状 魚介類殿」第220回「イクラのプール」でも紹介したとおり、
『ウルトラマンA』放映時の1年前(『帰ってきたウルトラマン』放映時)に
ブルマァクから発売されておりましたので、そのミドルサイズの人形をそのまま使用。
  『ウルトラマンA』におけるムルチは、
まぁ、言ってしまえば、
ドラゴリーに簡単に殺されるため、
つまり、
超獣は怪獣よりも圧倒的に強い、という事を印象付けさせるため、
ただそのためだけに登場させられた “かませ犬” のような存在でしたが、
その哀愁に、
この、ブルマァクの、手抜きとしか思えぬぞんざいな塗装が、
奇しくもピタリとマッチ。
これまた霊妙なる雰囲気で、劇中場面の再現に “旨味” を加えてくれています。
           イメージで自由に遊べる昭和のソフビの可能性は、とてつもなく高いのであります。
 
  それにしても、
ドラゴリーがムルチを殺す様はエグいですよね。
アゴから胸にかけてを引きちぎり、お腹の肉をえぐると同時に足をももぎ取り・・・。

ムルチは鮭みたいな姿をした怪獣だけに、
3枚おろしにして後から食べよう、とでも思ったンですかね?(笑) 
 
 

・・・あ、
ドラゴリーのソフビは、この『ソフビ大好き!』では “お初” ですね、そういえば。
では、遅ればせながら、詳しく紹介させていただきましょう。

まず、今回、劇中場面の再現に用いたのは、こちら。
 

マルサン製、全長約13センチ。

一度倒産してその翌年の昭和44年に再建された、いわゆる “復興マルサン” のソフビです。 
塗装による別ヴァージョンの人形も存在します。

どちらの人形も、
実物のドラゴリーとは、まったく異なるカラーリングをしていますが、
そんな事は、一切、気になりません。
だって、この顔ですもの。

もう、病的なまで愉快で、可愛くて切なくて、たまりません。
カラーリングなんて、
どーでもいいです、好きにして下さい、ってなっちゃいます(笑)。
  『ウルトラマンA』放映時(昭和47~48年)に発売されたドラゴリーのソフビは、
以前、第248回「大宇宙の意思」で紹介したガマスのソフビと同じで、
この復興マルサン製の人形と、あとは、下記のブルマァク製のミニサイズが2タイプのみで、
スタンダードサイズの人形は発売されませんでした。 
  ブルマァク製 ミニサイズ2種、全長約10センチ。

またしても、
実物のドラゴリーとはまったく異なるカラーリングで2種、存在してます。 
  こちらも同じくブルマァク製のミニサイズで、全長約11センチ。

先述のマルサン製のドラゴリー人形と同じように、
ドラゴリーのドラゴリーたる所以と言える、
昆虫独特(ドラゴリーのモチーフは蛾)の、感情が一切わからない不気味な目を、
感情がわかる(愛嬌のある)目にして、温もりのある人形に仕上げてあるため、
実物のドラゴリーが放つ “得体のしれない恐怖” が、かなり薄れてしまっていますが、
これぞ昭和のソフビ怪獣人形、ですし、
それだからこそ、
先述した、ドラゴリーがムルチを惨殺するようなシーンも、
幼い子供が楽しく再現して遊べて、夢見る力を育む事が出来たのだと思います。
  ただ、
それとは正反対の方針の、
勝手なデフォルメなどせず、実物の怪獣の姿形に忠実な見ための人形を是とするのが、
平成以降の時代の、ソフビ怪獣人形という玩具の常識。

番組放映時から10年ほど経った昭和50年代半ばに発売されたこちらの人形は、
昭和のソフビではありますが、
もう、すでに、造形、彩色とも実物に似せてあり、時代を先取りした人形、と言えるでしょう。
ブルマァクやマルサンのドラゴリー人形と比べると、もう、段違いにカッコいいです。
 





ポピー製 キングザウルスシリーズ、全長約16センチ。 

目も、ちゃんと不気味です。
  ソフビ怪獣人形を集め始めた頃(今から35、6年前)、
名古屋市内の或る古着屋さん(古いオモチャも少しだけ扱ってました)で、
たまたまその日に入荷したダンボール箱の中に
袋入りのデッドストック状態で埋もれていたこの人形を見つけ、

 「この辺は
  (マルサンやブルマァクのソフビに比べると新しいので)、まだ値段をつけたくない」

と言って売るのを渋っていたその店のオーナーを、
1時間近くかけて説得し、拝み倒し、粘って粘って購入した事を憶えています。
 
マルサンやブルマァクのソフビで遊んでいた世代の僕は、
コレクターになるまでは
ポピーのキングザウルスシリーズの存在を知りませんでしたので(なんて初々しい話(笑))、

 こんなにもカッコいいドラゴリーのソフビがこの世にあったのか・・・、

って驚きで、

 これは何が何でも手に入れなきゃ・・・、

って思って必死だったンですよね(本当に、なんて初々しい話(再笑))。 


結局、
以前から幾度となく述べているように、
デフォルメ造形のソフビもリアル造形のソフビも、両方、大好きなンですよね、僕・・・。
だから、
このエッセイのタイトルは “ソフビ大好き!” なのであります。その一言に尽きます。
 

そう考えると、
ブルマァクからもマルサンからも発売されなかったメトロン星人Jr. のソフビも、
ポピーのキングザウルスシリーズかバンダイのウルトラ怪獣シリーズのどちらかで、
商品化してほしかったものです。残念。


・・・そうそう、
そのメトロン星人Jr. は、
劇中、マヤを殺害した後、マヤの体に乗り移ってTAC基地内に潜入しますが、
大人になってから知ったンですけど、
マヤを演じていた関かおりさんは、当初、南夕子役に抜擢されていながらも、
第1話および第2話の撮影進行中に事故で骨折してしまい、
泣く泣く降板していた女優さんだったそうで、

 自分が主役をやるはずだった『ウルトラマンA』で、
 出てきてすぐに殺されちゃう役や悪者宇宙人の役を、
 とっても複雑な心境の中、演じていらっしゃったンだろうなぁ・・・、

なんて思い、胸が締めつけられそうになります。


・・・あ、
やっぱり、怪獣バトルよりも人間ドラマの方に意識が行ってしまう・・・(苦笑)。







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