真水稔生の『ソフビ大好き!』


第117回 「感謝状 魚介類殿」  2013.10

先日、友人が寿司屋へ連れて行ってくれました。
この友人は、
僕が出演する舞台を毎回のように観に来てくれるうえ、
そうやって時々食事も奢ってくれるという、
実にありがたい存在なのですが、
実家が魚屋という事もあり、
魚にはちょっとうるさい人なので、
連れて行ってくれるお店の、寿司をはじめとする魚介類の料理は、
シビれるほど美味いものばかり。
誘いの連絡が来た時点で、唾液が大量に出てしまいます(笑)。

 「マミちゃん、寿司、食いに行かん?」

と言っていつも誘ってくれるのですが、
寿司を食いに行かないわけがないので、毎回、愚問です(笑)。

今回は、
この、ちらし寿司でした。

写真を見ただけで、
どれだけ美味しいものだったかは解っていただけると思うので、
コメントは必要ありませんね(笑)。

奥に写っているのは、
“つまみ” で注文してくれた、鰹のたたきと蛸ぶつ。
ちらし寿司が運ばれてくる前にほとんど食べてしまいましたが、
こちらも絶品でした。


寿司、刺身・・・、
本当に美味しいですよね。
毎日食べても飽きない自信があります(笑)。
だけど、
“売れない役者” という身分では、
経済的に回転寿司ですら贅沢に感じてしまう生活レベルですし(恥)、
たまに仕事のギャラが多かった時でも、
多かった分のほとんどをソフビ購入につぎ込んでしまう関係上、
僕は、それらを滅多に口にする事はありません。
なので、
この友人に奢ってもらえる時は、
いつも、舌や胃袋が泣いて喜んでいます(笑)。
友情と魚介類に乾杯。



というわけで、
今回は、
魚介類がモチーフになった怪獣・怪人のソフビを紹介します。 ・・・安易(笑)。


まずは、
ゴジラとの決闘で
岩をキャッチボールのように投げ合うシーンが印象的だったエビラ
その名のとおり、エビの怪獣です。

   
 



    上の2体がマルサン製で、下がブルマァク製です。
どれも全長約25センチ。 
     

  核兵器工場から流れ出た放射能廃液の影響により
  突然変異で巨大化してしまった海老、
  という設定なので、姿形は海老そのもの。
  よって、ソフビ人形の方も、
  そのまま
  伊勢海老のごとく
  祝い事の飾りつけに使えるような造形・佇まいになっています。

   
       
       

  ブルマァクのエビラ人形は、
  左右入れ替えたヒゲを前に倒して誤魔化してるだけで、
  マルサンのエビラ人形の金型を流用した商品である事は言うまでもありませんが、
  お腹の部分には、
  ブルマァクの刻印ではなく、マルサンのマークがそのまま消されずに残っています。
  つまり、
  マルサンのエビラ人形もブルマァクのエビラ人形も、
  お腹にある刻印はまったく同じ、って事です。

     


薄くて見えにくいですが、
東宝のマークの下に、
 1966
 JAPAN
とあり、
その下に、
マルサンのマークが入っています。

  ソフビ初心者の頃は、
  発売時期の異なる同じマルサンのエビラ人形だと思っていたのですが、
  或る時、先輩コレクターから、
  ブルマァクが
  自社の刻印も入れずにマルサンの人形をそのまま販売していた、
  という事実を教えてもらい、
  昭和40年代の大らかな空気を感じたのと同時に、
  ブルマァクという会社の大味な社風を知り、
  ただ懐かしさに駆られてソフビを集めるだけでなく、
  発売当時の事情やメーカーの特色などを研究していくと面白いかも・・・、と気づきました。
  それ以来、

   人形そのものを愛するのはもちろんの事、
   その人形の、商品としての背景も探ってみる、

  というのが、
  僕のソフビの楽しみ方になりました。
  つまり、
  エビラ人形は、
  僕の蒐集活動の奥行きが広がるよう導いてくれた、記念すべきソフビなのです。

     

  ちなみに、
  ゴジラ人形においても、
  ブルマァクはマルサンの金型を流用したのですが、
  こちらは、
  ちゃんとマルサンのマークを消して、ブルマァクの刻印が足の裏に入れてあります。
  ただ、
  商標の上には、このように、 “東宝” ではなく “円谷プロ” と刻まれています。

      版権をおろした東宝から、
何も言われなかったンでしょうか?

・・・う〜ん、
やっぱブルマァクは大味だ(笑)。




さて、
ゴジラ怪獣の次は、ガメラ怪獣から・・・。
『ガメラ対深海怪獣ジグラ』に登場した、ジグラです。

環境汚染が進んで暮らせなくなったジグラ星から、
地球の海に移り住むためにやってきた侵略宇宙人ですが、
ガメラに宇宙船を破壊されたため、水圧の影響で巨大化してしまいました。

サメをモチーフにデザイン・造形されており、
鋭利でカッコいい姿と奸悪な面構えをしています。

           











日東科学教材製 スタンダードサイズ、
全長約21センチ。 
                       
               
日東科学教材製 ミドルサイズ、
全長約12センチ。 
   
日東科学教材製 ミニサイズ、
全長約9センチ。


  上の、映画放映時(昭和46年)に発売されていた人形たちも、
  下の、平成になってから発売された人形たちも、
  皆、着ぐるみに忠実に造形されているので、どの人形を見ても、映像がストレートによみがえります。

   













バンダイ製 ガメラシリーズ、
全長約20センチ。
       
     










バンダイ製
セット売り(強いぞ!ガメラ 復活大結集BOX)の中の1体、
全長約17センチ。
       
   









バンダイ製
セット売り(ガメラカーニバル)の中の1体、
全長約10センチ。
       
       
      トミー製
セット売り(大映特撮シリーズ)の中の1体、
全長約10センチ。

※玩具イベント限定品
    トミー製
セット売り(大映特撮シリーズ)の中の1体、
全長約12センチ。

※玩具イベント限定品




       


 
「地球のこの美しい海は、
 私のように美しい姿の生物が支配すべきである」

などと、生意気な事をヌカしていましたが、
ガメラとの対決では、
背びれを棒で木琴のように叩かれ
『ガメラマーチ』を奏でられる、という
とんでもない屈辱を味わわされたあげく、
火炎放射で焼かれて、あえなく御臨終。
ざまぁみろ、です。

 海も魚も、我々人間のものだっ!
  (キリヤマ隊長風(笑))

 

     




ゴジラ怪獣、ガメラ怪獣、と来れば、
次はやっぱり、ウルトラ怪獣。

ウルトラシリーズ全作品の中で一番の問題作と言える、
『帰ってきたウルトラマン』第33話「怪獣使いと少年」に登場した、巨大魚怪獣ムルチ
おそらく鮭がモデルでしょうか、
強いインパクトのあるデザイン・造形の怪獣です。

     















ブルマァク製 スタンダードサイズ、
全長約23センチ。


  在日朝鮮人や被差別部落などの問題をテーマに据え、
  日本人批判がされているこのエピソードは、
  脚本家・上原正三さんの代表的作品であり、
  見応えがあるし、
  ファンからも高い支持を得ている事は頷けますが、
  主人公の少年がいじめを受ける、正視に耐えないシーンや、
  救いの無いラストなど、
  個人的にはあまり好きではありません。
  シナリオ(原題は「キミがめざす遠い星」)を読むと、
  映像から受けるほどの重さや暗さは感じられないのですが、
  本編の演出を担当した東條昭平監督が、
  沖縄人である上原さんの心情を読み解き、
  あんな、
  差別に対する怨念が異様なまでに色濃く出た作品に
  仕上げてしまったンだと思います。

  ・・・と、
  つい、このエピソードについては
  思いを語りたくなってしまうのがウルトラファンの性ですが(笑)、
  今回はとりあえず
  そんなマニアックな話は置いといて・・・。

  大雨の夜にムルチが登場する物語冒頭のシーンは、
  数あるウルトラ怪獣出現シーンの中でもトップクラスと言える迫力。
  放映当時小学1年生だった僕は、
  子供番組を逸脱した内容だったからか物語の記憶はまったく無いのですが、
  その、ムルチの登場シーンだけは、強く印象に残っています。



  ・・・で、
  人形の方はというと、
  放映当時のこのソフビ、
  キングマイマイ人形の腕が
  誤って付けられたまま販売されていました
  (キングマイマイ人形にはムルチ人形の腕が付けられました)。

        マルサンのデフォルメ造形を発展させつつ
劇中の着ぐるみにも似た造形をめざし、
美しく洗練された、
こんなにもカッコいい怪獣人形を完成させながら、
別の怪獣の腕を付けて出荷・・・。

とことん大味なブルマァクの社風に、
ムルチ本人も笑うしかない、といったところでしょうか(笑)。


      同じくブルマァク製の、
こちらはミドルサイズで全長約12センチ。

これも大味な社風ゆえでしょうか、
ろくに塗装もしないで、この状態で流通させていた模様です。
売る気あったのか?(笑)

当時、オモチャ屋で見た記憶は無いのですが、
これが売ってても、
まず買わんよなぁ、子供。
腕が違ってっても、絶対、スタンダードサイズの方に惹かれます。




そして最後は、
必然的に
仮面ライダーシリーズから、
僕が愛して止まないショッカー怪人を・・・。

カニバブラー
溶解泡を吐く、カニの怪人です。

   














バンダイ製 スタンダードサイズ、
全長約25センチ。


   











バンダイ製 ミニサイズ、
全長約12センチ。

カラーリングの違い、
下半身にモールドの有無、と
いろんなバリエーションがあります。
         


  カニバブラーの吐く溶解泡、どう見ても
  シャボン玉を吹いているようにしか見えない、実にショボいものなのですが(笑)、
  あっという間に人間を溶かしてしまう、
  見た目からは想像もつかない恐ろしい威力なのです。

  そんな危険な泡を
  ライダーは顔面に受けてしまいますが、まったく溶かされませんでした。
  子供の頃は、
  「さすがライダーだ!」と思い、
  ライダーの強さ・凄さだけを感じるカッコいいシーンだったのですが、
  大人になってから再放送を観たら、
  ライダーに泡を吹きかけた際、カニバブラーが、

   「どうだ、ライダー、目が見えンだろう?」

  と言っていたので、ズッコケてしまいました。
  ライダーには
  溶解能力が効かないのをわかってて、
  視界を妨げるために
  泡を吹きかけただけの事だったンですね。
  しょうもなぁ〜(笑)。

  もちろん、
  泡が目に入ったくらいで我らのライダーがひるむはずもなく、
  哀れカニバブラーは、
  程なく葬り去られましたとさ。ぷぷぷ。

     



  ショッカー怪人は、
  子供の頃の記憶では恐くてカッコいい印象が強いのですが、
  今、見直してみると、
  このカニバブラーに限らず、結構マヌケな言動をするヤツが多く、ガッカリしてしまいます。

  でも、
  そこがまたなんとも愛おしく、
  子供の頃からの思い入れ以外の感情も加わり、
  更に好きになってしまう、魅力的なところでもあります。
  また、
  放映当時のソフビ人形のデフォルメ造形が、
  ショッカー怪人の
  そんなマヌケな内面的性質を絶妙に表現していた事にも気づき、
  感動してしまうのです。

    実物のカニバブラーと全然違う顔してるし、
似ているのはこの赤い鋏だけ・・・、
っていうくらいの緩い造形の人形なンだけど、
それがなんとも
劇中のマヌケな言動に通じていて、
実物のカニバブラーを実感させてくれます。

不気味でちょっと恐いけど、
なんだか愛嬌もあって、
そして温かくて・・・、
やっぱ、
昭和のソフビは、奥が深くて魅力的です、実に。
 


  余談ですが、
  漫画家の吉田戦車先生が、昔、

    カニバブラーの “バブラー” が
    バブル(泡)をもじっての命名である事に25歳の今気づいた、

  と、何かに書いておられたのですが、
  僕はそれを読んで、

     あぁ、そう言われてみれば、そうだったのかぁ、

  と、先生より1歳遅い26歳で気づきました(苦笑)。


  ・・・いくら余談とはいえ、
  どーでもよすぎる話ですね。スミマセン(笑)。




いかがでしたでしょうか?
魚介類がモチーフになった怪獣・怪人を、
ゴジラシリーズ、ガメラシリーズ、ウルトラシリーズ、ライダーシリーズ、の
特撮四天王の中から、それぞれ1体ずつピックアップしてみました。

料理になっても、怪獣や怪人になっても、
そしてソフビになっても、
魚介類は実に魅力的なものです。

舌も胃袋も、そして心も満たしてくれる、素晴らしい海の恵み・・・。

魚介類による生態系サービスから、
実に多くの “癒し” を受けて僕は暮らしてきたンだなぁ・・・、と
改めて拝謝する今日この頃なのであります。



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