第249回 「罰を肴に・・・」 2024.10
先ほど、近所のスーパーで買い物していた時の事です。 いつもは、 夕方の、惣菜などの値段が半額になる時間を狙って行くのですが(苦笑)、 今日は仕事で帰りが遅くなってしまい、 夕方でなく夜、それもギリギリ閉店前、なんて時間になってしまったため、 惣菜売り場の商品は、ほとんどもう売れちゃってました。 残っているのは、 “大学いも” とか “ごま団子” とか、 そんな、御飯のおかずにも酒のツマミにもならないようなものばかりで、 いくら半額でも、この辺は要らないなぁ・・・、 なんて残念な気持ちになったのですが、 灯台下暗し、 僕が立ってた位置のいちばん手前に、エビフライが、ひとつだけ売れ残っていました。 奇跡です。 これは、もう、買うしかありません。 なんたってエビフライ(しかも半額)なのですから。 ところが、 幸運に感謝しつつそのエビフライに手を伸ばしかけた瞬間、 左横から何やら人影が・・・。そして衝撃。 ・・・突き飛ばされました。 なんと、僕は、突き飛ばされたのです。 なんだ、なんだ、どーした? と、訳がわからぬまま見ると、 驚く事に、それは、たぶん70代後半・・・へたすりゃ80代、って感じのお爺さんで、 僕になど目もくれず、 しれっと、その半額のエビフライを持ってたスーパーのカゴに放り込み、 そのまま黙って立ち去っていくではありませんか。 「・・・え?」 って、思わず声に出してしまいました。 いくら半額のエビフライが欲しかったとはいえ、 それを手に取ろうとしている見ず知らずの他人を突き飛ばしてまで 手に入れようなんて、 傍若無人にもほどがあります。ありえません、そんな所業・・・。 怒っていい(ブチギレてもいい)事態です。 けど、 僕、そういう時、いつも、反射的には怒れないンですよねぇ。 そもそもが、 愛に満ち溢れた穏やかで優しい平和主義者ですし(笑)、 何か不愉快な事をされたり言われたりしても、その瞬間は、怒りよりも驚きの方が勝っちゃうンですよね。 呆気にとられちゃうンです。 んでもって、ちょっと時間が経つと、 やっぱ、さっきのあれは無いよなぁ・・・、 とか、 よく考えたら、なんで僕があんな事言われないかんのだ? とか、って思い、 だんだん腹が立ってきて、 黙ってやり過ごしてしまった事を悔やみ、 ああすればよかった、こう言い返してやればよかった、などと、後になってからウジウジ考えてしまう性分なのです。 なので今回も、 僕を突き飛ばして半額のエビフライを奪い取っていったような相手なのに、 只々、唖然と見送るだけで終わってしまいました。 ・・・で、 仕方がないので、惣菜を半額で買うのは諦めて場所を移動し、 ストックが切れてたレトルトのカレーやカップ麺、あとは缶ビールなどをカゴに入れ、 レジへ向かったのですが、 やはり、 しばらく時間が経過したため、いつものように遅ればせながら、 ・・・待てよ。 やっぱ、ムカつくな、あのジジィ・・・。 べつにエビフライなんか、欲しけりゃ、乞食に恵んでやるつもりでくれてやるけど、 突き飛ばされるのは、納得がいかない。 絶対におかしい。 なんであんな事されて黙ってるンだ、僕は・・・。 ブチギレてやればよかったじゃないか。 あぁ、くそくそくそぉーっ! と、怒りがフツフツと込み上げてきました。 すると、レジに到着した際、 先ほどのお爺さんが、 会計を済ませ、レジの奥に設置してある台の上で、 スーパーのカゴからレジ袋へ、詰め替えをしているのが目に入ったので、 あぁ、あのカゴかレジ袋の中に、 僕が買う(食べる)はずだったエビフライがあるンだなぁ・・・、 なんて妬ましく思いながら(欲しけりゃくれてやるンじゃないのか?(苦笑))、 会計を済ませて僕もその台へと向かうと、 なんと、そのお爺さん、 手を滑らせたのか、詰め替えの途中で商品を床に落としてしまったのです。 しかも、 台に到着する寸前の、歩いている僕の足元に落ちてきたものですから、 僕、それを踏んづけちゃったンですよね。 ・・・あ、断っておきますけど、 決して、 エビフライの恨みで仕返しに・・・、 とばかりに、わざと踏んづけたのではありませんよ。 事故です、事故。 あまりに急だったので、避け切れなかったのです。 足をどけて見ると、それはトレー包装された鮭ハラスで、 ちょうど真ん中辺りが、僕のつま先の形にボコンとへこんでました。 思わず「あ、ごめんなさい」と謝った僕でしたが、 それで、そのお爺さんが文句言ってきたら、今度こそ絶対にブチギレてやろうとも思いました。 僕の足の形にへこんでしまったとはいえ、 包装してあるパックの上から踏んだだけですから、汚くない(食べられる)し、 それに不可抗力ですし、 そもそも床に落としたそのお爺さん本人に落ち度があるのですから、 なに、こら、てめェ、 さっき、人の事突き飛ばしといて、ふざけンじゃねェぞ、この野郎! てめェみたいな不道徳で野蛮なクズ人間に文句言われる筋合いなんかねェ、っつの! だいたい、 よぼよぼのジジィのくせに、揚げ物なんか欲しがってンじゃなねェよ、バ~カ! うどんとか湯豆腐とか、そういうモンだけチマチマ食っとけ、ボケ! ってなモンですよ(・・・どこが、愛に満ち溢れた穏やかで優しい平和主義者やねん!(苦笑))。 けど、 そのお爺さんは、 眉間にしわを寄せ、僕に何か言いたげな表情をチラッと見せはしたものの、 やはり、落とした自分が悪いから仕方ない、と思ったのか、 そのまま黙って、その僕の足の形にへこんだ鮭ハラスを拾ってレジ袋に入れ、肩を落として去っていきました。 ハ~ハッハッハッハ! ざまぁみろ!いやぁ~、痛快。天網恢恢疎にして漏らさず。 己の欲を満たすため他人に暴力を振るうような非道者を、神様が許すわけないのであります。 罰が当たったンだわ、タワケ! 半額シールが貼ってなかったから、 その鮭ハラスは正規の値段で買ったンだろうけど、 他人に踏んづけられて足の形にへこんでしまったら、もはや半額の価値も無ェぞ。 残念だったなぁ、おい。 僕の足の形にへこんだ鮭ハラスは、さぞかし美味しいと思うぞ。 よ~く味わって食えよぉ~っ! ・・・と、 心の中で、ではありますが、 去っていくお爺さんの背中に向かって、罵り、冷やかしてやった次第です (・・・ホントに、どこが、愛に満ち溢れた穏やかで優しい平和主義者やねん!(再苦笑))。
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