第220回 「イクラのプール」 2022.5
今日は珍しく東京で仕事がありました。 といっても、 或るテレビドラマの衣装合わせと簡単な打ち合わせのみ、でしたので、 今朝早く名古屋を出て、サクサクッと進んで先ほど終わり、 昼過ぎの今はもう、帰りの新幹線の車内です。 久し振りの東京ですので、 都内のアンティーク・トイ・ショップを覗いたり、 在京の友人・知人と会食したり・・・、って時間も取りたかったのですが、 たまたま名古屋でも夕方から仕事(こちらはラジオCMのナレーション録り)が1本入ってまして、 急いで戻らなければならないのです。 それに、その後は、 例によって夜勤のアルバイトにも出かけなくてはなりませんのでね。 まさに “貧乏暇無し” です(苦笑)。 ただ、せっかく東京まで来たのですから、 せめて駅弁くらいは食べて旅の気分を味わおうと、 さきほど東京駅で、こちらを購入しました。
僕、イクラが大好きなンですよねぇ・・・。 どれくらい大好きか、というと、 それはもう、イクラのプールで泳ぎたいくらい・・・。 冗談で言ってるのではなく、 本当にそんなプールがあったら、迷わず飛び込みます、僕。 だって、 息継ぎの度に大量のイクラが口の中に流れ込んでくるンですから。 贅沢の極み、というか、幸福の絶頂、というか、 罰が当たりそうなくらいの悦びを覚えます。 これを友人に話すと、 共感してもらえないどころか、 僕と同じようにイクラが好きな人にも「気持ち悪い」と言われて否定されてしまうのですが(苦笑)、 食べても食べても全然終わらず、 永遠を感じるくらい、あの赤い粒が周りに溢れているなんて、 サイコーだと思うンですけどねぇ、マジで。 まぁ、それはともかく、 本当にイクラが大好き。 プチッと弾けて舌の上でとろけるあの食感、 そして、大自然の恵みと生命の神秘を感じる濃厚で品のある味・・・、 たまりません。 それでは早速・・・、 いただきますっ! (^O^)
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まずは、こちら。 バンプレスト製 コレクタブル ソフビフィギュア、全長約16センチ。 |
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平成16年にクレーンゲームの景品として作られたものですが、 実物そっくりの造形・彩色ゆえ、 あの雨の中の登場シーンや格闘シーンの迫力が、 生々しく、鋭く胸に刺さるように甦ります。 |
皮膚の表面の艶が、 まるで雨に濡れてるようだし、 かつ、“魚感” も際立たせていて、 グッドです。 |
続きましては、 僕が子供の頃のソフビを・・・。 以前、第117回「感謝状 魚介類殿」の中でも紹介しましたが、 番組放映当時(昭和46年)は、 ブルマァクから、 スタンダードサイズとミドルサイズの2種類のムルチ人形が発売されていました。 |
こちらは、 スタンダードサイズで、全長約23センチ。 |
「・・・あれ? お前、なんか、手が変じゃね?」 っていう、帰りマン人形の戸惑いの声が聞こえてきそうですが(笑)、 そうなンですよね、 手が変なンです、ブルマァクのスタンダードサイズのムルチ、って。 これは、 その第117回「感謝状 魚介類殿」の中でも述べましたし、 ソフビファンの間では有名な話でもあるのですが、 間違ってキングマイマイ人形の両腕パーツが付けられて売られていたから、 なンですよね。 |
ただ、 子供の頃、この事を不満に感じていた記憶はありませんし、 大人(ソフビコレクター)になった今でも、それほど気になりません。 僕個人の感覚でなく、 おそらく同世代の人なら、皆、そうであろうと思います。 というのも、 当時は、デフォルメソフビの全盛期、 つまり、オモチャの怪獣人形が実物どおりの姿をしていなくてもいい時代でしたし、 ムルチなんていうマイナー怪獣に 強いこだわりや思い入れを持つ子供もいませんでしたのでね。 言ってみれば、まぁ、 どーでもよかった、 ンです。 そりゃあ、 タッコング人形やグドン人形に キングマイマイ人形の腕が付けられていたら大問題だったでしょうけど、 ムルチですからね、なんといっても。 憶えていない(知らない)人の方が、圧倒的に多いような怪獣ですから。 |
今でこそ、 このムルチが登場する『帰ってきたウルトラマン』第33話「怪獣使いと少年」が、 被差別部落や在日朝鮮人への差別問題をテーマに、人間の心に潜む残虐性を描いた、 ウルトラシリーズ最大の問題作として強烈に認知されてるため、 ムルチを知らないウルトラファンはいませんが、 子供の頃は、 そんなふうに深く物語を理解出来ないし、 帰りマンを苦しめるほどの強敵怪獣でもありませんでしたのでね、 印象が薄かったンです。 当時の事情をよく知らない世代の人は、 スタンダードサイズの人形になってるくらいだから、 そこそこ人気もあった怪獣じゃないの? って思うかもしれませんが、違うンですよ、それが。 昭和43年に第1次怪獣ブームの衰退とともに倒産するも、翌年に事業を再開したマルサンが、 『帰ってきたウルトラマン』放映時には 円谷プロの版権が得られなかったため、 オリジナル怪獣のソフビ人形を何十種類も発売していたのですが、 明らかに円谷プロのウルトラ怪獣を模したデザイン・造形のものがいくつもあり、 しかもそれが “マルサンのウルトラ怪獣シリーズ” という商品名で、 オモチャ屋さんの店頭に ブルマァクのウルトラ怪獣のソフビ人形と同じ扱いで並ぶので、 ブルマァクとしては、 本物のウルトラ怪獣の人形は、当社・ブルマァクの製品のみ、 っていう意地や主張から、 マルサンのオリジナル怪獣に張り合う形で、 帰りマン怪獣の人形をどんどん発売していったきらいがあります。 だから、 とにかく数や種類で負けるなとばかりに、 その怪獣に人気が有ろうと無かろうと御構い無しで、何でもいいから商品化。 違う怪獣の腕を付けられたまま平気で出荷されたムルチは、その最たるものでしょう。 もちろん、 いろんな怪獣の人形が売っている事は胸がときめくものでしたが、 おねだりして買ってもらうのは、 やはり、 『ウルトラQ』や『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』の怪獣人形から・・・、 でしたし、 『帰ってきたウルトラマン』の怪獣人形まで買ってもらえるような裕福な家庭の子供でも、 選ぶのは、 タッコングやツインテールやアーストロン、といったメジャーどころでしたから、 ムルチなんて、 決して需要に基づく商品化ではなかったのです。 需要が無い物を企業が商品化するわけない、 と、これまた当時の事情を知らない人なら思うかもしれませんが、 ブルマァクは、するンです。 半世紀という、とてつもなく長い月日が過ぎた現在でさえ デッドストック状態のものをちょくちょく見かける、 ミラーマン人形や『猿の軍団』の猿たちの人形など、 大量の売れ残り商品たちが、その証拠です。 過去にも幾度か述べているように、 ホント、 実に大味な社風の玩具メーカーなンですよね。 ソフビの売れ行きが絶好調な時期に、 あえて生産をストップさせて、 約1ケ月間にも及ぶ海外視察(豪遊旅行(笑))に出かけたり、 テレビ番組(『トリプルファイター』)のスポンサーに単独でなったり、 勢いで豪快に突っ走る会社なのです。 だから倒産してしまったンですけど、 今となっては、 それが魅力なンですよね、なんとも。 |
・・・話が長くなってしまいましたが、 そんなわけで、 ムルチ人形にキングマイマイ人形の腕がくっついていても、 僕らの世代のソフビコレクターは苦にならないわけです。 それどころか、 いかにもブルマァクだなぁ・・・、 なんて微笑ましく思ってしまうくらい(笑)。 |
ただ、 キングマイマイは幼虫から成虫へと変態する、“虫” の怪獣ですので、 魚の怪獣から虫の手が生えてる・・・、 なんて、 なんだか、寄生虫に乗っ取られた魚みたいで食欲が失せるので、 個人的には、 僕はこのソフビ、あまり好きではありません(笑)。 ・・・まぁ、 デザイン・造形のモチーフが鮭だからといって ムルチを鮭やイクラを食すイメージで見る僕の観点が、 おかしいンでしょうけど・・・(苦笑)。 |
こちらは、 ミドルサイズ、全長約12センチ。 |
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腕は付け間違えてないけど、 売る気あるの? って聞きたくなるくらい、粗雑でどうにも冴えない塗装。 これもまた、ブルマァクのブルマァクたる所以。 ホント、大味なのです、社風が。 |
・・・あ、そうそう、 ムルチの事を、 メイツ星人が操るメイツ星の怪獣だと思っている人が時々いますが、 それは間違いです。 「怪獣使いと少年」というエピソードタイトルが付けられているので 勘違いしてしまっているのでしょうけど、 ムルチはれっきとした地球の怪獣であり、べつにメイツ星人が操っていたわけではありませんから。 気象観測のために地球に来ていたメイツ星人が、 たまたま、地球人の少年がムルチに襲われているところに遭遇し、 少年を助けるため、念力を使ってムルチを地中に封じ込めただけであり、 物語の後半で再び出現して暴れ出したのも、 メイツ星人が死んでしまった影響で封印が解けたからであり、 メイツ星人は決して怪獣使いではないのです。 子供の頃ならいざ知らず、 大人になってからこの回をちゃんと観れば、容易に理解出来る事だと思いますので、 間違えて認識している人は、“大味” なンですよね、性格や理解力が。 ブルマァクと同じです(笑)。 ってか、 このエピソード、元々は、 「怪獣使いと少年」ではなく、 「キミがめざす遠い星」というタイトルでしたので、 タイトルを変更した人が、そもそも “大味” だったのでしょう。 この回を観たTBSのお偉いさんが「子供番組として相応しくない」と激怒し、 脚本を担当した上原正三さんと演出を担当した東條昭平さんが ウルトラシリーズから干されてしまった話はウルトラファンの間では有名ですが、 干されるべきは、 脚本家や監督ではなく、 お話の内容を正しく理解せず、的外れなタイトルに変更した人ではないか・・・、 と僕は思うンですけどねぇ・・・。 さてさて、 今回は “鮭とイクラ” から “ムルチ” に思いを馳せましたが、 帰りマンがムルチを倒した後、 万能武器であるウルトラブレスレットでムルチをさばいて、 イクラを取り出してくれたら良かったのに・・・、 って思うのは僕だけでしょうか・・・僕だけですね(苦笑)。 けど、 1匹の鮭から約3,000粒のイクラが取れる事から考えると 体長が50メートル近くもあるムルチから取れるイクラの量なら、 僕の夢である “イクラのプール” も実現可能ですので、 僕としてはそれを想像せずにはいられません。 ・・・ん? いや、待てよ。 体長が大きくなれば、お腹の中のイクラも大きくなりますね、そういえば。 ・・・ってことは、 ムルチから取れるイクラは、 一粒がだいたい野球のボールくらいの大きさ、ですかね? だとすると、 食べにくいですし、 息継ぎする度に口流れ込んでくる、なんて状態にも、なりませんね。 思うように食べられず、 只々、あのヌルヌルした感覚を全身で感じながら、 生臭いにおいに満ちたプールに浸かってるだけ・・・か。 それはイヤだなぁ、さすがに・・・。 やっぱ、食べてナンボ、ですからね、イクラは。 ・・・ってか、 ムルチはおそらく環境汚染のせいで突然変異した鮭でしょうから、 そんな生き物のお腹の中にあった卵なんか食べたら、 食中毒で死んでしまうかもしれません。 くわばら、くわばら。 そういう意味では、 “キングマイマイに寄生されてるムルチ” である、ブルマァクのスタンダードサイズのムルチ人形には、 この怪獣は食べられませんよ、 ってメッセージが込められているのかもしれません(笑)。 |