真水稔生の『ソフビ大好き!』



第241回 「身も蓋もない事を言うヤツには解かるまい、愛と哀しみの3分勝負」 2024.2

僕は松本さんを信じています。

・・・いきなりスミマセン。
昨年末からずっと週刊文春が報じている、例の松本人志さんの性加害疑惑の件です。
本題に入る前に、
どうしてもこれだけは一言言っておきたかったものですから・・・。

まぁ、

 だから何? それがどうした?

って話でしょうけど(苦笑)、
僕が、松本さんのファンであり、松本さんを尊敬している事を、
この『ソフビ大好き!』の中で
これまで何度も述べてきましたし
(例えば、第42回「大ソフビ人形」第180回「松本さん」など)、
つい、このあいだも、
第233回「アイ案」の中で
YouTuberの中田敦彦さんの “松本人志批判” に強く異を唱えたばかりですし、
それでいて今回の騒動について何も発しずに原稿を書き始めるのは、どうにも気持ち悪かったのでね、
冒頭からちょっと失礼させていただきました。

これを読んで、

 「そんなの、ただの “松本擁護” だ!」

って言う人もいるかもしれませんが、
そう思われるならそう思っていただいて結構です、僕は松本さんのファンなのですから。
けど、
あくまでも疑惑、つまり、事実かどうかわからない現時点で、
顔も名前も知らない、どこの誰だかわからない女性の言ってる事(それも週刊誌の記事)と
何十年にわたりテレビ等で観てきた、大好きで尊敬している松本さんの言ってる事と、
どっちを信用するか、って言ったら、
そんなの、どう考えたって後者になりません?

そもそもが松本さんの事を嫌いだったり、
人生の成功者である松本さんに対してやっかみのような感情を抱いていたり、
そんな人たちが
ここぞとばかりに松本さんを攻撃しているのは問題外ですが、
そうでない人たちが、
週刊誌に書いてある事を鵜呑みにして、全部事実だと認識しちゃう思考は、僕には理解出来ません。
ましてや、それで松本さんを非難するなんて、どうかしてます。

もちろん、僕だって、
何も松本さんを聖人君子だなんて思ってませんけど、
いくらなんでも
おどろおどろし過ぎる記事の連続で現実味が無いし、松本さんに対する悪意すら感じます。
なので、
松本さん御本人が「事実無根」だと言っている以上、僕はフツーにそっちを信じます。

当たり前の感覚だと思うンですけど・・・。
違います? おかしいですか?

少なくとも、
今回の騒動をおもしろがって、松本さんの悪口を匿名でネットに書き込んでる人や、
松本さんを加害者だと決めつけ糾弾・侮辱するYouTube動画をあげて偉そうにしてる人よりかは、
断然、まともな神経してるつもりですけどね。


とにかく、まぁ、
僕が今言いたいのは、そういう事です。


それにしても、
松本さんの芸能活動休止を受けて、
『ダウンタウンDX』も『水曜日のダウンタウン』も『酒のツマミになる話』も、
もちろん『ガキの使いやあらへんで!』も、すでに面白さが半減してるし、
このまま松本さんが復帰してこなければ、
今年は、きっと、
『M-1グランプリ』も『キングオブコント』も、全然盛り上がらないだろうなぁ・・・。

あ~、つまンない。



つまンないと言えば、
つい先ほど・・・、あ、ここから本題に入ります。

つい先ほど、
仕事帰りにドラッグストアで買い物をしていた時の事。
僕よりは若そうでしたから、40代後半~50代前半・・・といったところでしょうか、
男女二人組の客がいたのですが、
僕がその人たちの後ろを通り過ぎようとしたら、男性の方が振り返ったので、目が合いました。
まぁ、それはいいンですけど、
ちょっと気になったのは、
その男性が、僕を見た瞬間、表情が変わり、ビミョーに気色悪い笑みを浮かべたンですよね。
でも、まったく知らない人だし、

 なんか感じ悪いけど、まぁ、関係ないだろう・・・、

と思い、そのまま通り過ぎて突き当りを回り、棚を挟んだ隣の通路に僕は入りました。
すると、

 「ウルトラマン、ってさぁ・・・」

 「何? 急に・・・」

って、棚の向こうのその二人組の会話が聞こえてきたので、
 あぁ、僕がつけてたこのマスクを見て『ウルトラマン』を思い出したンだな。
 だから、僕と目が合った際、表情が変わったンだ・・・、

と合点がいきました。
ただ、問題は、その会話の続きです。
その男性は、明らかに小馬鹿にしたような感じで、

 「ウルトラマン、って、
  最初からスペシウム光線を使えばいいのに、なんでそうしないンだろうね?」

などと言って、『ウルトラマン』を茶化し始めたのです。

 うわっ、『ウルトラマン』を愚弄してる!
 そうか、あの気色悪い笑みは、蔑みの表情だったンだな・・・、

って、ムッとしたのですが、
女性の方も女性の方で、

 「そりゃあ、すぐに怪獣を倒しちゃったら、面白くないからでしょ。
  ちゃんと3分かけないと、番組が盛り上がらないじゃん!」

などと、
何の面白味も新味もない事を、

 私は見抜いている、私は悟っている、

って感じの、自信満々な上から目線の口調で答えるし、
またそれを受けた男性の方が、

 「やっぱりぃ!?」

なんて、
めっちゃ嬉しそうに反応して、
二人して弾けたように笑い合い出したものですから、
もう、ムッとしたのは一気に通り越して、只々、脱力してしまいました。

 なにが「やっぱりぃ!?」だ。 バカか・・・。
 何がオモロいねん、そんな身も蓋もない事をわざわざ口にして・・・。
 ってか、
 今どき、そんなカビが生えたような陳腐なネタを得意気に話せて、
 しかも愉快に笑い合える、なんて、
 どんなセンスしとンねん、二人とも・・・。クソつまらん!
 脳にウジでも湧いとるンちゃうか?

って思いましたし、
それに、だいたい、
さっきのマスクつけた人(こんなマスクつけて歩いてた、って事は、『ウルトラマン』を大好きな人)が
まだ近くにいるかもしれないのに、不用意にそんな事を口にして、
無神経すぎるでしょ。
現に僕はそこにいたンですから。全部聞こえてたンですから。
呆れちゃいますよ、まったく・・・。

せめて知ってる人たちだったら、
すぐさま二人のところへ戻っていって、

 「ウルトラマンは怪獣を殺したくないンですよ。
  なんとか殺さずに済む方法はないか模索しながら闘っているンです。
  だから、スペシウム光線を放つ時のウルトラマンの顔、見て下さい、泣いてますから・・・」

なんて、
愛に満ちウイットに富んだ(笑)解説で丁寧に対応してあげる事が可能ですから、
それが出来ればこっちの気も収まるンですけど、
まったく知らない人たちですからねぇ、なんたって・・・。
どうする術もなく、
ため息まじりにその場から立ち去った・・・ってか逃げ出した次第です。

だってェ~、
あまりに楽しそうで、会話はまだまだ続きそうでしたから、

 「ウルトラマンは、
  3分間しか地球にいられないから、カップラーメン、食べられないよね?」

とか、

 「ウルトラマンは、
  ボクシングの世界タイトルマッチには出られないよね?
  1ラウンドしか闘えないから・・・」

とか、
二人して次から次へと
どんどん言い出し合いかねない雰囲気でしたもん。
そんなのをずーっと聞いてたら、ゲボ吐いて倒れちゃいますよ、僕・・・。


・・・で、帰宅後、
どうにもモヤモヤして楽しくないので、
萎えた心をなんとか浄化させようと、とりとめもなくこの原稿を書き出してみたわけですが、
今、ふと、

 ・・・ん?
 ボクシングの世界タイトルマッチ?
 そういえば、
 僕が子供の頃は、12ラウンドじゃなくて15ラウンドだったなぁ・・・、

って思い出し、そこから、
大好きだった或るテレビ番組の事が脳裏に浮かんで、
思惑どおり、気分がスーッと晴れてきました
(やっぱ、このエッセイを書く事は、僕にとって自慰行為みたいなものなンだなぁ(苦笑)・・・)。


・・・って事で、
ここからは、
例によって子供の頃のテレビ番組にまつわる思い出話になります。
ちょっと長くなりますが、
例によって(笑)よろしくお付き合いのほどを・・・。


ボクシングの世界タイトルマッチのラウンド数で思い出したそのテレビ番組とは、
その名も、『3分勝負15ラウンド』。

僕が小学6年生の時(昭和51年)に、土曜の夜10時から放送されていたお笑いバラエティで、
当時の土曜日のその時間帯、
我が家のテレビからは、
あの人気番組、『テレビ三面記事 ウイークエンダー』が毎週流れていたのですが、
前年から1年以上視聴し続けてきて
ちょうど飽き始めていた頃だった事もあり、
たまたま新聞のテレビ欄で見つけて気になったその裏番組の初回放送に
なんとなくチャンネルを合わせたのが始まりで、
それが、もう、子供心に面白くて面白くて、めちゃくちゃハマっちゃった番組なのです。

『テレビ三面記事 ウイークエンダー』には、
親と一緒に観ているとどうにも気まずい雰囲気になる、
ちょっとエッチな再現フィルムのコーナーがありましたので、
あの居心地の悪さを味わわなくて済む、という気楽な解放感もあったのかもしれません。

とはいえ、
今から約半世紀も前の、
しかも、夜の10時から・・・、というプライムタイムに放送されるバラエティ番組ゆえ、
ちょっとエッチな・・・っていうか、今では考えられないほどの下品で俗っぽいコーナーは
当たり前のようにありましたけどね。
たとえば、
水着姿やミニスカート姿の若い女性が、
アクリル製の透明な巨大すり鉢の中に入れられ、
すり鉢の上に置かれた豪華景品をめざして這い上がっては滑り転がり落ちる様を
ローアングルで舐めまわすように撮るコーナーとか、
あるいは、
女風呂を只々覗くだけのコーナーとか・・・。

でも、お笑いバラエティのバカバカしいもの、という先入観なのか、
『テレビ三面記事 ウイークエンダー』の再現フィルムのコーナーを観ている時のような
背徳感(笑)を覚える事は無く、
両親のいる居間で、何の気兼ねなく、笑い転げながら観ていた記憶があります。

メインの出演者は、
愛川欽也さんと藤村俊二さんとせんだみつおさん、のお三方で、
オープニングは、

 カメラを覗き込んだそのお三方が、順番に、

  「ワー」
  「ワー」
  「ワー」

 とドミソの音階で発声すると、
 画面が変わり、

  ♪チャーン チャッチャチャーン チャチャッチャ チャチャチャチャン・・・

 っていうバックミュージック(文字で書いても伝わらないけど(苦笑))が仰々しく流れ出す中、
 黒縁メガネをした上半身裸の男が、
 大きな地球儀の上に立って、砲丸投げのポーズをしたまま地球儀共々ゆっくり回転する・・・、

というものでした。

あぁ、懐かしい・・・。

・・・で、
そのメイン出演者のお三方は、
今述べた低俗なコーナーの司会進行をされたり、あるいは、コントをされたりしていましたが、
お三方が一切関わらない(出演されない)、
松本ちえこさん主演のミニドラマのコーナーや、
プロ雀士の小島武夫さんが、いかさま麻雀の手口・手法を解説するコーナーや
ネグリジェ姿の松平純子さんが
お色気たっぷりにテレビカメラの向こうの視聴者に語りかける(一人芝居をする)コーナー、
なんてのもあり、
そういったいろんなコーナーが、それぞれ3分間にまとめられていて、
それが15本、毎回用意されていました(だから “3分勝負15ラウンド”)。

そのシステム(笑)も、解かり易くて良かったし、
毎回、コーナーの始まりには、それぞれ15回、異なるアイキャッチが入り、
それは、
若い女性が、寝そべっていたり椅子に座って読書をしていたりする映像なのですが、

 「ラ~ウンド○○(ワンとかツーとか)!」

というアナウンスに伴ってゴングが鳴ると、そのタイミングで、
女性の姿が、服を着ていた状態からその体勢のまま下着姿に一瞬で変わり、
それが適度な刺激で小気味よく、
ひとつひとつのコーナーに自然と引き込まれてもいました。

もちろん、その引き込まれたコーナー自体の内容も面白く、
先述のもの以外でも、今でも忘れずに詳細に憶えているものがたくさんあります。
たとえば、

 プロ棋士に扮した藤村俊二さんとせんだみつおさんが名人戦で対局するンですけど、
 最初のうちは、

  先手 二六 歩、
  後手 五四 歩・・・、

 なんて、普通に指していたものの、
 途中から、
 藤村俊二さんが
 将棋の駒ではなくをラッキョウを盤上に置いて、

  後手 三四 ラッキョウ、

 と攻めれば、
 それに対してせんだみつおさんが
 盤にお尻を向けて着物の裾をまくって放屁し、

  先手 七四 屁、

 と応戦。
 それを機にムチャクチャな展開になっていく・・・、

っていうコントとか、

 素人参加式の勝ち抜き戦で、
 只々、笑い声の大きさを競う “勝ち抜き大笑いマッチ”、

っていうコーナー
(山口カツユキさん、という人が何週も勝ち抜き続けていたのを憶えています)とか、

 大学対抗のゲーム合戦で、
 5、6人の大学生グループ同士が、雄叫びをあげながら、
 木刀やバットを使って、廃棄自動車を只々壊し合い、派手に壊した方が勝ち、
 
っていうコーナーとか、
もう、底抜けにくだらなくて、実に愉快でした。

・・・あ、そうそう、

 “あのヒーローは今”

っていうコーナーもあり、
カッコよくバイクで疾走してきた月光仮面が
新しく整備された道路ゆえ勝手がわからず一方通行を逆走してしまい、
白バイの警察官に止められ怒られる創作VTRが、

 かつては国民的ヒーローとして崇められた月光仮面も、今では時代に取り残され・・・、

なんてナレーションで紹介されたりして、あれも面白かったなぁ・・・。

そうかと思えば、

 愛川欽也さんが、

  「今、たまたま、となりのスタジオにいたから・・・」

 なんて言って連れてきたザ・リガニーズ(当時はもう解散していたGSバンド)のメンバーの方々が、
 いきなり即興でザ・カーナビーツさんの『好きさ好きさ好きさ』を演奏してくれて、
 収録スタジオがライヴ会場さながらに盛り上がる・・・、

なんていう、粋なコーナーもあったりして、
とにかく、
テンポが良くてお気軽で、かつ、まさに “バラエティ” に富んだ内容で、
ホント、楽しい番組だったのです。

約半世紀も昔の事ですし、
短命な番組でしたので(確か、3か月くらいで終わっちゃったと記憶しています)、
今では憶えている人も少ないでしょうけど、
当時は、結構、話題になってた人気番組だったンです。
それが証拠に、
クラスの中にも、僕と同じようにそうやって喜んで毎週観ている子が数人いて、
その子たちと組んで、
教室で行われたクリスマス会の時に
自分たちで『3分勝負15ラウンド』を “出し物” として披露した事もありましたから。

確か、時間の関係で『3分勝負7ラウンド』に縮小したンですけど、
その中身は、
基本的には番組の再現
(将棋名人戦コントを完コピ(笑)したり、
 ネグリジェ姿で視聴者に語りかける松平純子さんの一人芝居を(男子が)真似したり、
 古今東西ゲームみたいなのをやって、
 お題に沿った答えを制限時間内に言えなかった子には、罰として頭からメリケン粉を被せたり・・・)
でしたが、
自分たちで考えたオリジナルのコント(何かのパクリだったかもしれないけど)にも挑戦しましたね
(食堂の客と店主のやりとりで、
 客役の子が “野菜炒め” を注文したら、
 店主役の子が、キャベツを丸ごと1個持ってきて、
 それに包丁をぶっ刺して「はい、野菜炒め、お待ち!」って提供する・・・、
 って内容で、
 めちゃくちゃウケたンですけど、
 学校に包丁なんか持ってきたわけですから、後で担任の先生にめちゃくちゃ怒られた記憶があります)。

まぁ、みんな、
授業中には絶対に発揮しないレベルの意欲を燃やして(笑)、嬉々として取り組んでました。

中でもやっぱ、
番組に対する愛情の強さゆえ、僕がいちばん目立ったのか、
最後に “ラウンドボーイ(いちばん面白かったヤツ)” をクラスメイトの投票で決めるコンテストで
栄えある1位に選ばれ拍手喝采を浴びる・・・、なんて体験もさせてもらいました。

・・・嬉しかったなぁ、あれは。

ただ、
僕に投票してくれたのは、おそらく男子のみだったと思いますけどね(哀)。
というのも、
僕がやった事といえば、
番組のオープニングに登場する黒縁メガネをした上半身裸の男を、ちょっと盛って、
パンツ1枚の姿で再現してみたり
(舞台に上がるのと同時に
 女子から、窓ガラスにヒビが入るのではないかと思うような悲鳴が一斉にあがったのを憶えています)、
将棋名人戦のコントのせんだみつおさんの真似をして、
和服(友達のお父さんから借りて着用しました)の裾をまくってケツを出し、
将棋盤に放屁する振りをしてみたり・・・、と
両方とも、
面白い、というよりは、
パンツを見せてウケを狙う、っていう只々お下劣な行為をしただけでしたので(苦笑)・・・。

でも、今思えば、

 もう、そんな子供の頃から、
 自分で何かを表現してそれを観てもらう事に快感を覚える “癖(へき)” があり、
 そのためなら、
 女子から嫌われても構わない “意識” や “覚悟” を持っていたンだなぁ・・・、

なんて、
我ながら感じ入ってしまいます。

・・・え?
ただアホな子供だっただけだろ、って?

もぉ~、誰ですか、
そんな身も蓋もない事を言うのは・・・。

ドラッグストアにいた、

 なんでウルトラマンは最初からスペシウム光線を使わないのか、
 それは、すぐに怪獣を倒しちゃったら番組が盛り上がらないから・・・、

なんて言って『ウルトラマン』を茶化す、
あの無神経なクソ寒い男女二人組じゃないンですからぁ~(笑)。

   
ラゴン 
『ウルトラQ』第20話「海底原人ラゴン」および
『ウルトラマン』第4話「大爆発5秒前」に登場した、
爬虫類がゴリラ並みの知能を持つまでに進化した高等生物。

 

 『ウルトラQ』のあのラゴンが『ウルトラマン』にも出る!

って事で、
番組を観ていた僕ら当時の子供たちは、
歓喜し、大いに興味をそそられた記憶がありますが、
『ウルトラマン』に出てきたラゴンは、
『ウルトラQ』に出ていたラゴンとは性質が変わってしまっていました。
なぜなら、
『ウルトラQ』の時には、
深海で静かに暮らすおとなしい生き物だったのに、
『ウルトラマン』では、
海中で起こった原子爆弾の爆発
(人類が宇宙開発のために飛ばしたロケットの墜落が原因)により、
その放射能を浴びてしまったせいで、
性格が凶暴化、
さらには、人間と同じくらいだった体長も30メートルにまで巨大化し、
口から放射熱線まで吐く、いわゆる “怪獣” になってしまっていたのです。
しかも、
まだ爆発していない未回収の原子爆弾1個が肩先に引っ掛かってる状態で
海中より姿を現し、上陸して狂ったように暴れる始末。
 

ラゴンの体から
その原子爆弾を取り去ろうと登場したウルトラマンでしたが、
ラゴンが、ウルトラマンを見るや否や、いきなり放射熱線を吐きつけ襲い掛かってきたため、
原子爆弾は地上へと落下し、起爆スイッチが起動してしまいます。 

ウルトラマンは、
3分間という自身の地球上での活動時間のリミットが迫るのはもちろん、
原子爆弾爆発までのカウントダウンも始まってしまったため、
やむを得ずスペシウム光線を放ってラゴンを崖から海へと落として追い遣ります。

もう、まさに、
先に述べた “泣きながらスペシウム光線を放つウルトラマン” の、最たる場面です。

          その後、原子爆弾はウルトラマンが持ち去り宇宙の彼方で爆発させてくれたため、
間一髪で人類は救われましたが、
その人類のせいで、
精神に異常をきたされ、巨大な怪物にされてしまった挙句、
ウルトラマンからスペシウム光線まで浴びせられてしまったラゴンは、
あのまま死んでしまったか、
あるいは、
その心身ともにボロボロの瀕死状態で、今でも海の底で苦しみもがいているか・・・。

物語に感情移入し、そんな可哀想なラゴンや辛く複雑なウルトラマンの気持ちに思いを馳せると、
ドラッグストアにいた、

 なんでウルトラマンは最初からスペシウム光線を使わないのか、
 それは、すぐに怪獣を倒しちゃったら番組が盛り上がらないから・・・、

なんて身も蓋もない事を言って『ウルトラマン』を茶化す、
あの無神経なクソ寒い男女二人組の、その薄っぺらい認識が、
いかに愚鈍なものであったか、がよく判ります。
   

ブルマァク製 ジャイアントサイズ、全長約34センチ。

第140回「ソフビ怪獣散歩」の中でも紹介した人形です。
機嫌よく音楽を聴いているようにも、
勝手な事ばかりする人間に怒って今にも暴れだしそうにも、
どちらにも見える顔の表情が魅力的で、気に入ってます。



      ブルマァク製 ミニサイズ、全長約10センチ。
   

 
     

両サイズとも、
『ウルトラQ』や『ウルトラマン』の放送から数年経った昭和40年代後半の商品で、
当時、なぜかスタンダードサイズの人形は発売されませんでしたが、
この両サイズの人形が揃うと、

 人間に奪われた自分の卵を取り戻しに来た親ラゴンと、
 その卵から孵化した赤ちゃんラゴン、

って感じで、『ウルトラQ』の一場面が甦ります。 





ペスター

『ウルトラマン』第13話「オイルSOS」に登場した、
オイルを常食とする怪獣。




中近東諸国で油田やタンカーを襲った後、日本の東京湾に出現。
科特隊の攻撃を逃れて上陸し、
口から火を噴いて暴れ、製油所で大火災を引き起こします。

現れたウルトラマンは、
すぐにまずスペシウム光線でペスターの息の根を止めた後、
ウルトラ水流で消火活動にあたります。

つまり、最初からスペシウム光線を放つわけ。

繰り返しますが、
ドラッグストアにいた、

 なんでウルトラマンは最初からスペシウム光線を使わないのか、
 それは、すぐに怪獣を倒しちゃったら番組が盛り上がらないから・・・、

なんて身も蓋もない事を言って『ウルトラマン』を茶化す、
あの無神経なクソ寒い男女二人組の、その薄っぺらい認識が、
いかに愚鈍なものであったか・・・いや、というより、
いかに間違ったものであったか、が判りますね。
だって、
最初からスペシウム光線使ってるンですから。
すぐに怪獣倒してるンですから。
それでも番組(物語)は、ちゃんと盛り上がってるンですから。
               
           




まともに番組を観た事ないくせに、
物事の上っ面だけ掬って、偉そうに語ってンじゃねェぞ、こら!
小馬鹿にされて茶化されるのは、
『ウルトラマン』じゃなくて、
脳にウジが湧いてるお前たちの方なンじゃ、ボケ! カス! タワケ! どアホ!


・・・なんか、
脱力感から解放されたら、今更ながらあの二人にめっちゃ腹が立ってきた(苦笑)。
   
 ポピー製 キングザウルスシリーズ、全長約14センチ。
     
   
  昭和50年代中頃、
つまり、番組本放送時から10年以上の月日が過ぎてから、ようやくソフビ人形として商品化されました。
もう、その頃、
玩具におけるソフビ造形の主流は、デフォルメからリアルへと変わりつつありましたので、
その流れに従い、
過度なアレンジは控えた、実物の姿形にかなり近い人形となっていますが、
それでも、時代はまだまだ昭和、
体の色まではディテールの追求がされておらず、
このように、実物のペスターとはまったく異なる彩色が施されています。 
    ただ、
茶色の成形色に黒やゴールドやメタリックブルーの塗装で、
その色合いから、
“オイル” がイメージ出来るし、
炎に囲まれて咆哮している劇中のペスターの雰囲気も、巧い具合に出てるンですよねぇ・・・。
下記に紹介する、
造形も彩色もほぼ実物どおりの平成ソフビと比べても、
一切見劣りがしないどころか、
なんなら、こっちの方が生々しくペスターを感じてしまいます。

ただ実物をコピーすればいい、ってモンじゃない、
“ソフビ怪獣人形” というオモチャの魅力の奥深さを象徴する、傑作な一品だと思います。 
   
バンダイ製 ウルトラ怪獣シリーズ、全長約12センチ。
平成15年発売。 
こちらは、
同じく平成15年に、
雑誌『ハイパーホビー』において誌上限定発売された、
同じ型・同じサイズの蓄光版。

ペスターは、
海中を移動する際は燐光を放つので、こんな彩色ヴァージョンも有り、ですね。

 




特撮ヒーロー番組とお笑いバラエティ番組の違いこそあれ、
『ウルトラマン』の3分間も、『3分勝負15ラウンド』の3分間も、
どちらも、言うなれば、

 人を幸せな気持ちにするための時間、

だと思います。
子供の頃、まさしくそれで幸せな気持ちにさせてもらった僕は、
それを作り出してくれた人たちの汗と涙が滲む苦労を、
尊く、ありがたく思うし、
また、そうして作り出された、
その3分間の夢の世界に住まう者たちの輝きや悲壮美を、
とても愛しく思うので、
両番組にまつわる記憶や思い出は、“人生の宝物” なンですよね。
胸の奥で、
それはそれは大切にしています。

だから、
無神経に茶化してくる無知蒙昧な輩は、許せません。
心のスペシウム光線を放って、とことん退治してやります。

・・・え?

 ドラッグストアにいた、
 無神経なクソ寒い男女二人組からは、脱力して逃げ出したじゃないか、

って?

いやぁ~、3分、経ってたンで(笑)・・・。


 


               前回へ               目次へ               次回へ