真水稔生の『ソフビ大好き!』



第233回 「アイ案」  2023.6

あっちゃん、カッコわるい!

“松本人志批判” でお騒がせ中の、
元・お笑い芸人のユーチューバー・中田敦彦さんの事です。

松本さんがお笑い業界の頂点に君臨しているのが
どうも気に入らないらしく、
かねてから、
その事に対して愚痴ったり皮肉ったりする様子が
ネットニュースやYouTube動画にあがっていて、
それらを見る度、
松本さんのファンであり、松本さんを尊敬している僕としては、
ちょっと不愉快だったし、
また、

 なんで、そんな愚かな事をするンだろう・・・?

と不思議に思ってもいたのですが、
今回の、
御自身のYouTubeチャンネルにあげた、
“松本人志氏への提言” ってタイトルの動画を見て、

 実は、
 松本さんが気に入らないのではなく、
 大好きな松本さんに
 自分が納得のいく評価をされていないモヤモヤを抱えているだけ、

という事が判り、腑に落ちました。

まず、
中田敦彦さんは、その動画の中で、

 審査員、という権力が松本さんに集中して、
 それがお笑い業界のためにならないから、
 いくつか審査員を辞めてほしい・・・、

といった内容の発言をしたのですが、
これは、
的外れにも程がある指摘。ただの “言いがかり” です。
だって、
松本さんがお笑い界の頂点に君臨し続けて、
『M-1グランプリ』や『キングオブコント』で審査員をされているのは、
“権力” ではなくて “需要” なのですから。
松本さんが審査員をしている大会(番組)と
松本さんが審査員をしていない大会(番組)の
注目度や影響力の違いを考えれば、簡単に解る事でしょう。

まぁ、
“お笑い” をはじめとする日本のエンタメ業界について、
素っ頓狂な自説や矛盾した見解を偉そうな物言いで発信しては失笑を買っている、
どこぞの脳科学者さんや、
「人の心はお金で買える」、「女はお金についてくる」、などという世にも恥知らずな発言や
かの “餃子店マスク騒動” など、数々のみっともない言動で知られる、
あの有名実業家さんなどは、
お笑い芸人としての松本さんの面白さや偉大さを理解出来ない自身のセンスを正当化しようと、
ここぞとばかりに便乗してきて、
中田敦彦さんを支持したり擁護したりしてましたけど、
違うンですよねぇ、全然。

そんな “お笑い音痴” の(僕はそう思います)ド素人の2人と違い、
中田敦彦さんは、
プロのお笑い芸人だったのですから、
“松本人志” というカリスマへのリスペクトが無いわけないし、
松本さんが、今、『M-1グランプリ』や『キングオブコント』の審査員を降りたら、
たちまち大会(番組)は成立しなくなり、
才能がありながらも無名な多くのお笑い芸人の方たちの
世に出るチャンスが激減してしまう事くらい、
解ってるなずなンです。
ただ、松本さんに自分は認めてもらっていない・可愛がってもらっていない、と思い込んでいて、
その恨みと言うか妬みと言うか、そんな腐った気持ちから、
冷静さを欠いた言動に至ってしまっただけなのです。
僕はそう思いますね。
おそらく、ですが、プライドが異常に高い人なのでしょう。

 自分は松本さんにディスられてるけど、
 自分の笑いを理解するには知性が必要・・・、

などと、
強がるあまりに
痛々しいくらいに驕慢な発言まで飛び出しちゃってましたから(この発言部分は後日編集でこっそり削除)。

まともな神経してるなら、今は後悔してると思いますけどね。
結局、
逃げ込んだ場所から “負け犬の遠吠え” をしているようにしか世間には受け止められず、
只々、嘲笑されてるだけですから。

 自分を注目させようと計算してやった事だから、今回の中田敦彦さんの仕掛けは成功、

と言う人もいますが、
だとしても、
やってる事は、
女々しくて、失礼で、身の程知らずで、おまけに姑息。
めちゃくちゃダサいと思います、人として・・・。
それが証拠に、
いつも

 「あっちゃん、カッコいい!」

と言ってくれていた相方さんも、もう、そうは言ってくれなかったでしょ?
だって、カッコよくないンですから。

だから、

あっちゃん、カッコわるい!

 プロのお笑い芸人だった人(それも第一線で活躍した)が、
 松本人志さんを批判して(それも的外れに)、
 お笑い音痴のド素人に賛同されてどうする!?

って思いますね、僕は。
恥ずかしすぎます、って、そんなの。

物知りで、頭の回転も速くて、いわゆる “賢い” 人なのに、
感情を抑えきれずに暴走してしまい、その結果、自分のキャリアに傷つけて、
もったいないですよ。

 どこが “パーフェクト・ヒューマン” やねん!
 めちゃくちゃ杜撰で未熟な人間やがな!

って思います。



さてさて、ところで、
“あっちゃん” と聞いて僕が頭に浮かぶのは、
実は、 “あっちゃん” でなく “アッちゃん”、なンですよね。
・・・そう、
昭和40年代初頭に放送されていたテレビドラマ『アッちゃん』で
主人公のアッちゃんを演じていらっしゃった、当時の子役俳優、蔵忠芳さんです。
ポチャとしてなんとも可愛らしい顔がとても印象的で、忘れられません。

『アッちゃん』は、
再放送もなかったですし、映像のソフト化もされておりませんので、
もう、60代以上の人しか、御存知ないでしょうけど、
僕は今年59歳で、ギリギリ憶えてるンですよね。
まぁ、物心付くか付かないかの頃でしたので、
ドラマの内容
(おそらく “ケンちゃん” シリーズみたいなものだったと思いますが・・・)は
まったく記憶にないのですが、アッちゃんの事が好きで、番組を観ていた事は確かなのです。

というのも、
蔵忠芳さんは、
人気子役俳優として、
『アッちゃん』の後も、『コメットさん』や『遠山の金さん捕物帳』など、
いろんなテレビドラマに出演されましたので、
僕は、テレビを観ていて蔵忠芳さんが出てくるたびに、

 「あっ、アッちゃんだ!」

と、嬉しくて声をあげていましたので。

その最たる例が『ミラーマン』。
『ミラーマン』の放送は、昭和46年から翌47年にかけて、ですから、
『アッちゃん』からは6、7年経っていたため、
蔵忠芳さんも、だいぶ “お兄ちゃん” になっていましたけど、
それでも、ポチャとした可愛らしい頃の面影は、まだまだ充分に残っていて、
一目で “アッちゃん” だと判り、
やはり、僕は、

 「あっ、アッちゃんだ!」

とテレビの前で声をあげたものです。

どうして
その『ミラーマン』が最たる例なのか、といいますと、
これまでこの『ソフビ大好き!』でも幾度か述べていますように、
ここ名古屋では『ミラーマン』は『仮面ライダー』の裏番組であったため、
僕は、多分に興味を惹かれながらも
その本放送では『ミラーマン』を一切観た事が無かったンですよね。
なので、
何年か経ってから再放送で初めて『ミラーマン』を観た際に、

 ようやく観る事が出来た!

って喜びと、

 あぁ、アッちゃん、ヒーローものにも出てたンだぁ!

って驚きが重なり、
嬉しい気持ちの強度が倍増して、とても印象的だったからなのです。
しかも、
レギュラー出演者ゆえ、
オープニングで、勇壮な主題歌が流れる中、
SGMの隊員を演ずる俳優さんたちや
主人公・鏡京太郎を演ずる石田信之さんらと
同等の扱いで紹介されるので、
憧れの気持ちも加わって、
それはもう、シビれるような衝撃を、受けたンですよね。

今思えば、
あれが僕にとっての、本当の、

 あっちゃん、カッコいい!・・・もとい、アッちゃん、カッコいい!

でした。


懐かしいなぁ、アッちゃん・・・。


・・・というわけで、
“カッコわるいあっちゃん” から、“カッコいいアッちゃん” を思い出し、
話が『ミラーマン』に繋がりましたので、
今回は『ミラーマン』に登場した怪獣のソフビ(番組放映時の商品)を、
紹介させていただきく事にします。
それも、

 カッコわるい、カッコいい、

に因みまして、絶妙な容姿・姿形の、この怪獣を・・・。

アイアン

『ミラーマン』の記念すべき第1話に登場した怪獣でありますが、
インベーダーの異星人が変身する怪獣、つまり地球外生物ゆえ、
地球上の “自然(nature)”の概念とは
まったく異なる世界に存在している生命である事が、
ド肝を抜くような発想のデサイン・造形によって
巧みに表現されていて、
同じ円谷プロ制作のウルトラシリーズとは一線を画す番組の
そのモダンな世界観を、鮮やかなまでに象徴しています。 

同時期に放送されていた『帰ってきたウルトラマン』の
同じく第1話の怪獣・アーストロンと比べると、
見事に対照的で、それがよく解ります。
アーストロンは、
第51回「アースト論」でも述べさせていただいたように、
ゴジラと同じ二足歩行の恐竜型で、
スマートな美しいフォルムでありながら重量感のあるボディ、
鋭い角と巨大な尻尾を持ち、
凶暴な性格で口から火(光線)を吐き・・・、と
まさに

 “ザ・怪獣”

といったキャラクターであり、
文句のつけようが無いくらいカッコいいンですが、
そのカッコよさは、
あくまでも
地球上の生物としての、オーソドックスなカッコよさであり、
悪く言えば “無個性” 、なンですよね。
 

アイアンは、逆に “個性の塊”。
奇妙な全身のフォルム、
皮膚の表面に浮き出た人面疽のような顔、
極端に短い腕、 
そして、
無機質な印象の背面を違和感全開で打ち破るように生えている尻尾など、
もう、不気味で不自然で意味不明で、妙ちくりん。
地球上の生き物ではない事が一目で判ります。
 


けれど凄いのは、
それでいてカッコわるくない事。
決して、デタラメにデザイン・造形されたものではないンですよね。
その絶妙な感覚は、
言うなれば “異次元のカッコよさ”、だと思うのです。

 アイアン、カッコいい!

なのです。 
     
     
ブルマァク製
スタンダードサイズ、全長約22センチ。 


第23回「温かいヒーロー」の中でも紹介している人形です。

同じ昭和のデフォルメソフビでも、
マルサンの躍動感に満ちたデフォルメ造形と異なり、
ブルマァクのデフォルメ造形は、
言わば、冷静なデフォルメ。
綺麗綺麗、してるのです。
実物のイメージを損なう事の無いよう配慮しながら、
オモチャ・人形としてその姿形を美化する・・・、
という手法ですね。
よって、
現在のリアル造形よりも奥深く、濃い味わい。

スマートでもシャープでもないのにカッコいい・・・、
そんな地球外生物・アイアンの不思議な魅力を、
幼い子供が手にして遊ぶオモチャの人形として、
実に美しく伝えています。素晴らしい!

また、この2体、
塗装色にも微妙な違いがありますが、
そもそも成形色が、まったく異なります。
 


こちらは、
同じくブルマァク製で、
全長約10センチのミニサイズのアイアン人形。

   



サイズが小さくなっても、
アイアンの
  “異次元のカッコよさ”
は失われておらず、
当時のブルマァクの造形力の高さを、
さりげなく物語っています。


こちらは、
同じミニサイズの人形ですが、メーカーが違います。
タカトク製で全長約9センチ。

ブルマァクと比べると、
造形も塗装も粗雑な印象を受けますが、
それでも、カッコわるい、とは思いません。
むしろ、地球外生物としての “得体の知れなさ” が強く感じられ、
これはこれで、趣のあるソフビ人形だと思います。

この2体、
スプレー塗装の色にゴールドとシルバーの違いがあります。
最初に紹介したブルマァクのスタンダードサイズの2体も、そうでしたね。
真似したのかな?(笑) 
 


こちらは、
第42回「大ソフビ人形」でも紹介した、
全長35センチ、という大きなサイズのアイアン人形。
ヨネザワ製、歩行アイアン。

手を引いてやると、ヨチヨチ歩く仕様になっています。
     
 地球を侵略に来た悪者怪獣なのに、
       手を引いてヨチヨチ歩かせてどーする!?

って思う人もいるかもしれませんが(笑)、
これが、昭和40年代の感覚・センス。
大人たちからは、“グロ” だ、“ゲテモノ” だ、と忌み嫌われていた “怪獣”が、
子供たちに愛される人気キャラクターとなって、
日常に溢れかえり、かつ、生活に溶け込んでいた、実に楽しい時代の産物です。
 
      ・・・それにしても、つくづく、
アイアン、って魅力的。
妙ちくりんな姿形なのに、決してカッコわるくない。むしろカッコいい。
このデザイン・造形の “異次元のカッコよさ” は、
怪獣が “夢の生き物” である事の象徴、と言えるのではないでしょうか。
 
               
            では、最後に、
冒頭の話題に戻って、僭越ながら、“中田敦彦氏への提言”(笑)。

真っ直ぐで勝負出来ないなら変化球も有り、ですが、
ボークや危険球はダメですよ、あっちゃん。

妙ちくりんなアイアンがカッコいいのは、
変化球を駆使したデザイン・造形ではあるけども、
決してボークや危険球で勝負を台無しにしてないから。

“異次元のカッコよさ”、目指してほしいです。




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