真水稔生の『ソフビ大好き!』


第239回 「ときめく腹ごしらえ」 2023.12

懐古趣味である事に加えて
パソコンとかスマホとかにも疎い、つまり “アナクロ人間” である僕は、
以前、第62回「アナクロ ~時代遅れのソフビ入手法~」でも述べたように、
コレクションの対象となるソフビ人形を入手するのに、
いまだに、ネットオークションなどは一切使用していません。
楽しく人と関わって、安心して買い物したいしね。

さすがに、

 昔からやってるオモチャ屋や廃業したオモチャ屋を調べて訪問し、
 倉庫に眠ってる売れ残り品を購入する・・・、

なんて事は、
僕がソフビ蒐集を始めた昭和の終わり頃と違って
現在では空振りに終わる確率が100%に限りなく近くありますので、
もう、ほとんどしなくなりましたが、

 専門店、いわゆる、アンティークトイショップへ出向き、
 お店の人やそこに居合わせたほかのお客さんたちと談笑しながら、
 目的のソフビ人形を、
 実際に、
 見て、触って、ついでに匂いを嗅いで(笑)、商品の状態や値段に納得した上で購入・・・、

っていう入手法は、ずっと変わっていません。

・・・まぁ、
いまや、欲しいと思うアンティークソフビは年収よりも高かったりするので、
その購入の仕方も、思うように出来ていませんけど(苦笑)、
若い頃は、
数ヶ月かけてお金を貯めては、東京のアンティークトイショップへも出かけて、
よく、財布(ってか、貯金)を空にして帰ってきたものです。

そして、その際は、
そういったアンティークトイショップのほとんどが午後からの営業だったゆえ、

 開店時間を待つ間、近くの飲食店で昼御飯を食べる・・・、

というのが通例となっていたのですが、

 何が入荷してるかな・・・?
 いい買い物が出来るといいなぁ・・・、

なんて考えてワクワクしながら摂る食事の味は格別で、
いつからか、
アンティークトイショップへ出向く事と、
その前に周辺の飲食店で昼御飯を食べる事が、僕の中で “お楽しみセット” となり、
それが、“僕のソフビ入手法” として確立していきました。

腹が減っては戦は出来ぬ、じゃないですけど、

 一生の友となるソフビ人形と出逢う・・・、
 そんな人生の重大なイベントに挑むには、まずは腹ごしらえをしてから・・・、

そんな気持ちだったンですよね。
数ヶ月かけて貯めたとはいっても、そんな大した額ではありませんでしたが、
当人の僕からすれば、汗と涙の結晶ですし、
ましてや、それを有効に使い切るのは、天下分け目の大勝負(笑)。
落ち着いて心の準備をするためにも、直前のランチタイムは大切なひとときとなっていったのです。

すると、もう、

 どんなソフビに出逢えるかな・・・、

っていう夢見る気分は、そのまま、昼御飯にも影響を及ぼして、

 どんなお店に入って何を食べようかな・・・、

っていう “冒険心” と化し、
大手飲食チェーン店のいつも食べてる味ではなく、

 今日、ソフビを買いにこの地に来なかったら、もしかしたら一生入る事がなかったであろうお店、
 ここでしか食べられない料理、
 今日、ここに来たからこそ出逢えた味、

そんなのを求める “開拓精神” みたいな感覚から、初めてのお店を選ぶようになりました。

名付けて、“ときめく腹ごしらえ”(笑)。

そもそも、
嫌いな食べ物・苦手な食べ物が一切無く、なんでも美味しくありがたく食べられるゆえ、

 失敗した~、

なんて事にもなりませんし、
気に入ったら、次回もまたこの店に・・・、って楽しみに変わるだけですから、
後悔する羽目になる事は皆無。あるのは食欲と高揚感だけ。
なので、
ビビッときた店に、迷う事無く飛び込んでいた次第です。

現に、めちゃくちゃ気に入って、毎回、そこで食べるようになったお店もありましたしね。
今では、もう無くなっちゃったみたいですけど、
高円寺駅からゴジラやさんに向かう途中の高架下の地下にあった、
高齢の御主人と奥さんが
まるで夫婦漫才みたいなやりとりをしながら
昔ながらの懐かしい味がするカレーライスを提供してくれたクロンボさんや、
浅草の空想雑貨さんの近くで、都道462号線の国際通り沿いにあった、
名物メニューが、メニュー表には載っていない “冷や肉” という裏メニューだった角萬さんなんかは、
そこで昼御飯を食べたいがために、
その日最初に訪れるアンティークトイショップを
ゴジラやさんや空想雑貨さんにするほどでした(本末転倒?(笑))。
コレクター仲間やその方面に出かける友人にも、よく勧めたものです。


これが、角萬さんの “冷や肉”
(本当に大好きでしたので、
 いつでも見られるようにと或る時写真を撮ったのですが(苦笑)、
 それが携帯電話に残ってました)。

要は、肉入り南蛮蕎麦、ですね。“冷や” といってもつゆは温かいです。
きしめんのように見えますが、平打ちした太い蕎麦。
もちっ、とした食感でしたので、
この角萬さんの “冷や肉” に限り、蕎麦は “喉ごし” でなく “歯応え” でしたね(笑)。

そんな特殊な蕎麦を、青々とした葱や厚みのある肉と一緒にひとくち頬張れば、
つゆと肉の煮汁の絶妙な味のハーモニーも相まって、もう、恍惚。
最高の食べ心地でした。
 

ちなみに、
この角萬さん、ネットで検索したら、
一度は閉店したものの、現在は同じ浅草の、別の場所で復活してるとか。
味が変わっていないなら、是非行ってまた “冷や肉” を食べたいのですが、
肝心の空想雑貨さんが閉店してしまったので、
浅草方面に出かける機会が無いンですよねぇ、今は・・・。


・・・え? ソフビを買うためにしか東京に行かないのか、って?

 
        ・・・はい(笑)。 












  我が名古屋にも、立派なアンティークトイショップがありますしね。
・・・そう、この『ソフビ大好き!』の連載でもお世話になっている、
こちら、ゲイトウエイさんです。

空想雑貨さんをはじめ、東京ではもう閉店してしまったお店が多い中、
ゲイトウエイさんは、
僕がソフビコレクションを始める前から、もう35年以上、ずっと健在。いまだに営業中。
頼もしいお店です。ありがたや、ありがたや。

そんなゲイトウエイさんで買い物をする際にも、
やはり僕は、周辺の飲食店で昼御飯を食べてから、挑みます。

以前、第140回「ソフビ怪獣散歩」の中で、
ゲイトウエイさんの隣に、昔、マタンゴさんていうカレー屋があった事をチラッと述べましたが、
あのお店なんか、まさに、その “ときめく腹ごしらえ” の筆頭でしたね。超お気に入りでした。

“マタンゴ” とは、
無人島に漂着してしまった人たちが、
そこに群生するキノコを食べて次々とキノコ人間になっていく、
御存知、あの、映画『マタンゴ』から来ていて、
店主さんとしては、

 一度食べたら、やみつきになる・・・、

って意味を込めて命名したそうなのですが、
あの映画のキノコは、
どこかの国が行った水爆実験の放射能によって変異したキノコ、ですから、
その印象が強烈で、

 やみつきになる、というよりは、逆に食欲が失せるのでは・・・?

って名前なンですよねぇ。
現に、僕以外の当時のゲイトウエイさんの常連客たちは、皆、それを気味悪がって、
あまり行きたがりませんでしたし・・・。

ただ、僕だけは、
“食” に対する好奇心が旺盛(食い意地が張ってるだけ?)だし、
先述した “冒険心” ・ “開拓精神” もあったし、
さらには、ゲイトウエイさんの隣にそんな名前の店が建つ事に運命も感じて(笑)、
強烈に惹かれたンですよねぇ・・・。

しかも、
いざ行ってみたら、
メニューは
ポークカレーとチキンカレーと牛テールカレーのみ、で
きのこカレーは無い、
という大いなる肩透かし(笑)で楽しかったし、
店内の片隅にあった本棚には、
つげ義春先生の漫画と『稲垣足穂の世界』っていう論考集しか無い、という激しい偏り具合で、
そんなマニアックなところも面白くて、一発でファンになりました。

 マタンゴさんの
 窓際のテーブルに座って牛テールカレーを食べ、
 窓から注ぐ温かい日差しの中、
 黒ビールを飲みながら、つげ義春先生の『無能の人』なんかを読んでいると、
 やがて、
 ガラガラガラ・・・と、隣のゲイトウエイさんのシャッターが開く音が聞こえてきて、
 さぁ、戦闘開始!(笑)

っていうのが、
一時、僕の休日のルーティンになってたくらい。
だから、お店が無くなっちゃった時は、とても淋しかったです。

・・・あぁ、そういえば、
同じく第140回「ソフビ怪獣散歩」の中で紹介した、
ゲイトウエイの杉林店長や僕ら常連客たちが足繁く通っていた焼肉&定食屋のかつらさんも、
昨年閉店してしまったンですよねぇ・・・(寂)。

諸行無常・・・ですな。

ただ、
それでも、まだまだゲイトウエイさんの周辺には、飲食店が多く点在しています。
だから、大丈夫。
ソフビを買う前の “ときめく腹ごしらえ” は、一切、途絶えていないのであります。

そこで今回は、
現在、僕がゲイトウエイさんで買い物をする前に
よく昼御飯を食べているお店を、いくつか紹介させていただきたいと思います。

まずは、ゲイトウエイさんにすごく近いところから・・・。

食堂 かりん
名古屋市天白区大坪2丁目1725 (052)720-8678
営業時間:月曜~土曜 11時30分~14時、17時30分~24時
     日曜 17時30分~24時
年中無休

気取らない店内の雰囲気と笑顔の接客に、毎回、気持ちが安らぐ中華料理店です。
ゲイトウエイさんと同じ通り沿い・・・っていうか、
駐車場を挟んでゲイトウエイさんの向かって2軒右隣にあるお店ですので、
食事の後にゲイトウエイさんまで行くのに、徒歩で1分もかかりません。 
    今日は、大好きなメニュー “砂肝と野菜炒め定食” に、
“焼き餃子” を追加で注文してみました。

“砂肝と野菜炒め定食” は、
野菜炒めのジューシーさを
砂肝のコリコリした食感が気持ちよくアシストしてくれる感じで、
軽快に御飯が進む美味しさ。
それゆえ、“おかわり一杯までは無料” というサービスが嬉しいです。
それと、さりげなく絶品なのが、出汁の効いた味噌汁。
日本人で良かった~、って思えます(中華料理店なのに・・・(笑))。 
    “焼き餃子” は、
テレビドラマ『孤独のグルメ』で松重豊さん演じる井之頭五郎がやっていたのを真似て、
餃子用のタレでなく、胡椒をたっぷりかけたお酢で食べてみました。

いつも言いますが、食べる事 = 生きる事。
食べる事を楽しめば、自ずと、生きる事すなわち人生も、楽しめようというものです。
井之頭五郎になったつもりで、美味しく楽しくいただきました。 


続きましては、こちら。

茶房 もちつき庵
名古屋市天白区大坪2丁目804ラフォーレ八事1F (052)834-2138
営業時間:9時10分~11時(モーニングタイム)、
     11時~14時(ランチタイム)、
     14時~15時40分(ティータイム)
定休日:火曜、水曜

餅に特化したカフェで、
その日の朝についた餅を使って、
ぜんざいとか雑煮とか力うどんとか、いろんな餅料理を提供してくれます。

珍しいし、洒落てるし、
何より美味しいので、このとおり、いつも行列が出来るほどの賑わい。
営業時間が上記のように3段階に分かれていて、それぞれメニューも若干異なります。

    昼御飯が食べたい僕は、
ランチメニューの “おこわ定食” を注文。

おこわの隣にあるのは、
豚の角煮と牛蒡と大根と高野豆腐の炊き合わせ。
行儀悪いかな・・・、と思いつつ、汁まで一滴残らず飲んでしまいます。
だって美味しいンだもん!

あと、きなこ餅と雑煮が付いてますね。
 
雑煮を食べながら、

 やっぱ、つきたての餅は美味しい!

と改めて実感。
ゲイトウエイさんで買い物した帰りにまた寄って、今度はぜんざいでも食べよかな(笑)。


・・・あ、ゲイトウエイさんまでは、徒歩2分です。 


そして、
最後に紹介しますは、ここ。

レストラン 金鯱
名古屋市天白区塩釜口2丁目801 (052)833-6261 
営業時間:11時~17時
定休日:日曜、祝日

名城大学の目の前にある、言わば名城大生御用達の定食屋ゆえ、
学生さん向けに、ボリュームのある定食がすべて千円以内という安さで食べられます。
 
    からあげ定食やカツカレー定食やあんかけスパゲティ定食など、
数ある美味しい定食メニューの中から、今日はこちらをチョイス。
“チキンバター定食”。

からあげと野菜を、
バターとお店特製のタレで味付けしてあるのですが、
この、バターと特製ダレが、もう、最高の組み合わせで、
たたでさえ美味しいからあげの味を、
これでもか、ってくらい向上させてます。
野菜の甘味とも絶妙に絡み合い、
まろやかでコクが深くて、たまりません、ホント。
めちゃくちゃ美味しい!
隣のテーブルの学生さんにも劣らぬ勢いで、バクバク行けちゃいます。

ここからゲイトウエイさんまでは、坂道もある道のりを5分ほど歩きますが、
学生さん並みの量を飲み込んだジジィの胃袋を落ち着かせるには、
ちょうどいい運動になるか、と(笑)。



さてさて、
いかがでした? 僕の食レポ(笑)・・・。

先程も述べましたが、この世は諸行無常、
今回紹介した3軒のお店も、
クロンボさんや角萬さんやマタンゴさんやかつらさんのように
いつかは無くなってしまう可能性がゼロではないでしょうし、
ゲイトウエイさん自体も、
空想雑貨さんをはじめとする東京のアンティークトイショップのように
いつ閉店してしまうかわかりません(最近、営業時間も縮小されてますし・・・)。

なので、今後は、

 今まで以上に “ときめく腹ごしらえ” を深く味わおう・・・、
 
 夢見る気分で昼御飯を食べて、その後、ゲイトウエイで
 杉林店長やほかの常連客の人たちと談笑しながら楽しく買い物が出来るこの幸福を、
 料理の味と一緒に何度も何度も噛み締めながら、しっかりと胸に刻んでいこう・・・、

そんな思いもあって、今回の原稿を書かせていただきました。


・・・となると、
先ほど井之頭五郎の名前を出したものの、
これは『孤独のグルメ』というより『絶メシロード』かな?(笑)

まぁ、とにかく、
来年以降も1日1日を大切に生きていきたい所存の、令和5年の師走でございます。







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