真水稔生の『ソフビ大好き!』


第238回 「老人の夢は生きている」 2023.11

先日、“『セーラーファイト!』生誕30周年を祝う会” が、ありました。
 『セーラーファイト!』とは、
第132回「あなたに真水と音楽を」の中でも述べましたが、
中京テレビで平成5年から8年まで放送されていた伝説の番組、
『今甦る!昭和ヒーロー列伝』(第13回「玩具協力スタッフ奮闘記」参照)の
コーナー企画で、
地球防衛軍日本支部に配備された
万能サポートロボット・セーラーファイターの活躍を描く、
約5分のミニドラマです。  
ミニドラマ、といっても、
番組のディレクターでもあった喜井監督以外は、
スタッフも出演者も全員、
番組に応募して選ばれた一般視聴者(しかも映像制作など未経験)、
つまりド素人であったがゆえ
(玩具協力スタッフとして
 番組に第1回から関わらせていただいていた僕も、
 喜井監督に頼み込んで出演者の1人にしてもらいましたが
 当時は役者ではなくサラリーマンでした)、
まぁ、はっきり言って、拙い自主製作映画のようなクオリティの、
脱力するしかない作品だった(苦笑)のですが、
そんなものを、
いくら東海三県(愛知・岐阜・三重)のみが放送対象地域とはいえ
毎回公共の電波にのせる暴挙(笑)が酔狂すぎてウケたのか、
愛ある特撮ファンの間で噂がどんどん広まり、
ビデオ化された際には全国から注文が届くほどの人気を得て、
やがては、
デパートの屋上などでアトラクションショーが開催されたり、
写真による絵物語が小学館の雑誌『てれびくん』に連載されたり、
セーラーファイターのソフビ人形が発売されたり・・・と、
嘘みたいな展開で盛り上がっていって、
最終的には、第22話まで続く事になりました。 

しかも、番組が終了した後も、
上映会やトークショーが開催されたり、
オリジナルビデオとして続編が制作・販売されたりして、
忘れ去られず語り継がれ、
生誕10周年を迎えた際には、
30分番組の単発ドラマとして、続編の続編が制作・放送されてDVD化、
さらに生誕20周年には、
WEBドラマとして、続編の続編の続編が全8話も制作・配信され、
ついには、
劇場版までもが(続編の続編の続編の続編)、制作・公開された次第。  

いまだに信じられません(苦笑)。
もちろん、僕・・・ってか関係者一同、一生懸命取り組みましたし、
応援・支持して下さった方々には心から感謝していますが、

 あの『セーラーファイト!』が? なんで?

って感じで、本当に信じられないのです。
 
 
けど、
信じられないうちに、さらにまた10年が過ぎて、気づけば、今年で生誕30周年、だったンですよねぇ・・・。
信じられま・・・いや、もう、信じます(笑)。
それにしても “30年” って、凄い。 30年ですよ、30年・・・。
たとえば、
『サンダーマスク』や『ロボット刑事』や『忍者キャプター』など、
『今甦る!昭和ヒーロー列伝』で取り上げられていた特撮ヒーロー作品は、
その時点からは20年前後昔の番組でしたから、
あの時、それらを観ながら懐かしんで思いを馳せていた年数よりも、もっと長い年数なわけですからね。
ホント、凄いです。 
・・・で、
その “『セーラーファイト!』生誕30周年を祝う会” ですが、
そんなにも長い年数が経ったわけですから、当然、みんな歳をとって、
下の写真を観て頂いてもわかるとおり、もう、どこぞの老人会のような集い(笑)。
昭和39年生まれの僕と同い年の喜井監督をはじめ、
スタッフおよび出演者のほとんどが同世代(幼少期を特撮ブームの中で過ごした人)で、
30年前は20代だったのに、
現在は、みんな、還暦の直前か直後のジジィゆえ、

 「ちょっと転んだだけで骨が折れてまってよぉ、こないだまで入院しとったンだわ~」

とか

 「何の薬、飲んどる?」

とか

 「寒いとすぐ膝が痛くなるもんで、まぁ、ワヤだてェ」

とか

 「最近、目がショボショボするでかんわ~」

とか、
そんな溜息まじりの言葉ばかりが飛び交い、痛々しくて哀しくて、笑ってしまいました。

当時、現場に教科書を持ち込んで、
撮影の合間に中間テストや期末テストの勉強をしていた、
現役女子高生だったセーラーファイターのスーツアクトレスの女性でさえ、
現在は、
大きなお子さんが3人もいる、50代目前のオバサン(綺麗だけど)ですからね。

 いやはや、“30年” というのは恐ろしく長い月日だ・・・、

と改めて、しみじみ実感した次第です。


そんな宴の中、
その、セーラーファイターのスーツアクトレスだった彼女が、
僕の隣の席で、
何かアクセサリーの話でもしようとしたのか、

 「真珠のイヤリングが・・・」

と言いかけたのですが、
そしたら、
“真珠” ってワードが耳に届いたその瞬間、
さすが特撮世代のジジィたち、
離れた席から、

 「ガマクジラ?」

と2、3人が同時に喰いついてきました。

 “真珠” と聞いたら、すぐにまず “ガマクジラ” が頭に浮かぶ、

という、まったくもって珍奇な人たちなのです。・・・まぁ、僕もですけどね(苦笑)。

・・・で、
そこからが嬉しかったのですが、
そのセーラーファイターのスーツアクトレスの彼女、
長い付き合いゆえ、もう、僕らをどう扱ったらいいか心得ているようで、

 「え? なんですか? ガマクジラ、って・・・」

って、
自身がしようとしていた真珠のイヤリングの話は引っ込めて、
ガマクジラの話になるよう、促してくれたンです。
絶対にガマクジラになんか興味無いのに、

 たぶん怪獣の名前だろうから、
 怪獣の話題になれば
 このジジィたちは喜んで盛り上がるだろう・・・、

って機転を利かせたンでしょうね。偉い!

そうなれば、もう、
僕らジジィたちは、遠慮なくそれに乗っかるだけ(笑)。

 「お前、曲がりなりにも特撮ヒロインのくせしてガマクジラも知らんのか?」

ってなって、
ガマクジラという怪獣に関する、熱っぽい説明会を始めてしまいました。
スマホの画面に出したガマクジラの画像を見せられた彼女が
思わず、

 「なんか、気持ち悪い・・・」

って顔をしかめると、

 「そんな事、言ったるなてェ~、可愛いがや!
  こんな顔して、真珠が好きなンだぞ。
  こんな顔して、美しい宝石を食べるンだぞ。
  可笑しいけど、なんか哀しいだろォ?
  そこがいいンだてェ~」

 「こいつは、なんにも悪くないンだよ。
  ただ自分の食料である真珠を食べただけ。
  それなのに攻撃されて殺さるンだよ。
  メシ食っとっただけなのに、
  人間から「食うな、バカヤロ!」って罵られて、暴力振るわれて、
  挙句の果てに命を奪われるンだから、たまったモンじゃない。
  ムチャクチャだろォ? ひどいだろォ? 可哀想だろォ?」

とヒートアップ(笑)。
すると、それに対して彼女が、

 「可哀想・・・っていうか、真珠がもったいない」

なんて答えたものですから、

 「うわっ、フジ隊員と同じ事を言っとる!
  これだから女はダメなんだわ。ロマンが通じぃせんでよォ・・・」

って嘆きながら大いに笑い合う、なんとも愉快なひとときとなりました(笑)。

また、
パワハラかセクハラになるかも・・・、と心配したのか、

 「あなたがガマクジラを、好きだったり、良さを解ってたりしたら、
  それはそれで、この人たちは、そんな女性には引いてしまうから、
  気にしなくていいンだよ。
  あなたは当然のリアクションをしたまで。何の問題も無い」

なんて、真面目な顔で彼女に言い訳しているジジィもいて、
それも笑ってしまいました。

いやぁ~、楽しかった。




 ガマクジラ
 バンダイ製 ウルトラ怪獣シリーズ、全長約20センチ。
  なんと、このソフビ、
ちょうど30年前の、『セーラーファイト!』が始まった年に、発売されたンですよね。
あれは、
中京テレビの会議室でスタッフや出演者の初顔合わせがあった日、
帰りにオモチャ屋に寄って、
バンダイのウルトラ怪獣シリーズの新発売されたソフビを何点か購入したのですが、
オモチャ屋から出てきて車に乗り込み、
先ほど喜井さんから渡された『セーラーファイト!』第1話の台本が置いてあった助手席に
その購入したばかりのソフビが入った紙袋をポンと置いたら、
紙袋からガマクジラ人形の頭が半分くらい飛び出して、
台本の表紙の “セーラーファイト!” のロゴと重なったンですよね。
その光景というか画(え)というかを、なぜか、印象的に憶えているのです。
    再現すると、こんな感じ・・・。

 今日出会った人たちと、
 30年後、ガマクジラの話題で盛り上がりますよ・・・、

っていう暗示だったのかもしれません。

ハハハ。またか・・・、って思ってます?
好きなンですよねぇ、偶然に意味を持たせて物事を大袈裟に考えるのが・・・。

けど、いいでしょ?
人生はそうやって生きていった方が楽しいンですから。 
僕はそう思います。





こちらは、
同じくバンダイのウルトラ怪獣シリーズで、中国版のツインテール
全長約17センチ。

中国で、ではありますが、
これも『セーラーファイト!』が始まった頃に流通していたソフビで、
元は、喜井監督所有のコレクションだったンです。
それを、10周年に特番の単発ドラマとして『セーラーファイト!』が復活した際に、

 「真水さんのおかげで復活出来たから・・・」

って言って、僕にプレゼントしてくれたンですよねぇ・・・。

“真水さんのおかげ” なんて、
そんなわけないし、
僕に気分よく演じさせるためのリップサービスである事は見え見えでしたが(笑)、
コレクションが増える事はとても幸せな事ですので、素直にありがたく頂戴した次第です。
嬉しかったなぁ・・・。
  ただ、撮影初日に現場で渡されたものですから、それを見ていた或るスタッフの人に、

 「真水さんのギャラはソフビなの?」

って、からかわれた事を憶えています(笑)。
 

日本で販売されていたツインテール(向かって左)との違いは、
2本の尻尾が胴体とは別パーツになっているので
このように動かして遊べるところ(日本版もこうしてくれたら良かったのに・・・)。


 

さてさて、
話は戻って、その楽しい老人会・・・じゃなくて “『セーラーファイト!』生誕30周年を祝う会”、
閉会の際には、みんなが、

 「来年は喜井さんと真水さんの還暦祝いで、また集まろう!」

なんて言ってくれました。

まぁ、単に酔った勢いの “ノリ” でしょうけど、
そんな事を言ってもらえるなんて、とても幸せだし、
万が一、実現するのなら、その時も元気で生きていないと申し訳ないですから、
それを励みに、
これからも頑張って生きていこう、病気や怪我をしないよう充分気をつけよう、
って、強く思いました。


そして、その会の席で、また、
みんなでセーラーファイターのスーツアクトレスの彼女に、
怪獣について熱っぽく語ってやろうと思います(笑)。
ガマクジラ以外にも、
愛する怪獣はいっぱいいますし、
毎年・・・いや、毎月そんな会が開かれても
余裕で対応可能なストックが、
僕ら特撮世代のジジィたちの心の中には、しっかり備わっていますからね。






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