真水稔生の『ソフビ大好き!』


第228回 「安堵 ~幸せの白い仔兎~」  2023.1 

どうも。
大河俳優の真水稔生です(笑)。

いやぁ、良かったぁ~、カットされてなくて・・・。


 何のこっちゃ?

という方は、
前回の第227回「大事なお知らせ」から読んでいただけると幸いなのですが、
去る1月15日、
心配していたNHK大河ドラマ『どうする家康』の僕の出演シーンが、
カットされる事無く、無事、放送されたのであります。

もう、めちゃくちゃホッとしました。

1分ちょっとの、ほんの1シーンではありますが、
大河ドラマに出演、なんて、
僕にとっては、一世一代の一大事にして、役者人生のピーク。
カットされずに放送されるか、カットされてしまうかでは、
その後の人生に天国と地獄の差がありましたのでね。

 そんな大袈裟な・・・、

と思われる方もいるかもしれませんが、本当にそうなンです。
誰かに観てもらうため、
そのためだけに、すべてを犠牲にして、魂込めてやってる事なので、
それが叶わなければ、
悔しくて、悲しくて、苦痛だし、
何のために生きてるのかも解らなくなるので、虚しくて心が荒むし、
とくに今回は、

 久々の全国区のドラマ、しかもNHKの大河、

という事で、
出演が決まった際に浮かれてはしゃぎ(苦笑)、
親戚や友人はもちろんの事、
バイト先の同僚から、隣の家の奥さんや行きつけの床屋のおばちゃんに至るまで、
いろんな人に報告・宣伝しまくっちゃったものですから、
もし、出番がオールカットされてたら、
ブラジルまで穴を掘って隠れても誤魔化しきれない、宇宙レベルの赤っ恥だったのであります。

僕のそんな胸の内を知っててくれた親しい友人たちは、
放送終了後に、

 「あんな重要なシーンがカットされるわけないがや!」 

とか

 「めっちゃ、キーパーソンじゃん!
  物語の展開上絶対必要でしょう、あれは・・・」

とか、
嬉しい事を言ってくれてるのですが、
自分の大切な出演シーンが
オンエアにおいて無残にも丸々カットされるのを
幾度となく経験してきた僕としては、全然、安心出来なかったのであります。
放送直前は、不安と心配でゲボ吐きそうでした(苦笑)。

なので、ホント、

 めちゃくちゃホッとした・・・、

というのが、嘘偽りない本音であります。
 
あぁ、良かったぁ~。


・・・本当に良かった(しみじみ)。


18年前、40歳でサラリーマンを辞めて、
夢と憧れだけで役者になり、
馬鹿にされ、否定され、文句を言われ、
泥水すすって生きてきましたが、
これで、ほんの少しだけ、報われた気がします。

人生の時間が、あとどれくらい残っているかわかりませんが、
最期の時が来るまで、
この幸せをシガんでシガんで、シガみ倒して(笑)、毎日を過ごしていこうと思います。



 愛知県田原市の長興寺にある、
 戸田康光(僕が演じた2代目戸田宗光の事)のお墓。 
 


 昨年の春、
 役を頂いた旨の御挨拶に伺い、
 先日、
 今度は、無事に放送された事の御報告を
 させていただきました。

・・・あ、そうそう、
お墓、といえば、
ずっと以前、
時代劇のミュージカルで
松平清康(徳川家康の祖父)の家臣の役を
やらせていただいた事があり(第65回「最後のチャンバラ世代」参照)、
それ以来、
愛知県岡崎市にある大樹寺(劇中にも登場してましたね)にある松平清康のお墓に
何度か出向いて
手を合わせていたので(第116回「ゲゲゲのウルトラマン」参照)、
そのお情けによる御加護や御導きがあって、
今回、この役をいただけたのかもしれません。
・・・感謝。

ちなみに、
戸田宗光を役者が演じるのは大河ドラマ史上初、との事。
・・・歴史に名を残しました(笑)。



ところで、
あの僕の出演シーン、実はとても気に入っています。

 「そりゃあ、大好きな自分が出てるシーンだからな」

って、からかわれそうですが(苦笑)、
そうではなく、
繊細な編集によって実にマニアックなシーンになっていたので、
客観的に、気に入っているのです。

というのも、

 戸田康光が離反して竹千代を織田に売り渡した、

という史実は、
ずっと言われてきた有名なものでありながら、最近の研究では否定されつつもあるのですが、
そこを、
絶妙にぼやかしてあったンですよねぇ。

最後、信長の家来(赤い着物の人ね)が僕に近づいてきて、
懐からお金(と思われるもの)を取り出して渡そうとする、そのギリギリのところで、
パッと次のシーンに切り替わったンです。
つまり、
売り渡したのか、売り渡してないのか、それが判る決定的瞬間が映ってなかったンですよね。

『どうする家康』は、
当然の事ながら
“テレビドラマ” であって、
日本の歴史の教材ビデオではありませんから、
エンターテイメントとして楽しめる面白いシーンになっていれば、
その史実が、旧説で描かれようが、新説で描かれようが、
どちらでも良いと思うのですが
 (そもそも、
  そんな何百年も昔に起きた出来事が本当はどうだったか、なんて、
  詳しい事は誰にもわからないのですから、
  史実=絶対に間違いのない事実、ではないし・・・)、
そこをあえて、
フィクションである事を乱暴に振り回さず、
売り渡した、という旧説を
におわせながらも断定はせず、
売り渡していない、という新説の可能性も示唆してあったンです。

多様な視聴者への配慮と思われるその優しい “着地” に、

 う~ん、さすが国民的ドラマ!

と詠嘆しましたし、
そういう、

 気づく人は気づく、解る人は解る、

っていう性質のものが僕は好きなので、生理的にも惹かれた次第。

しかも、
僕の背後の崖の上に弓兵が大勢現れるカットが、
映画『仮面ライダー対ショッカー』で
地獄谷の崖の上にショッカー怪人たちがいっせいに現れる、あの衝撃的な場面を
彷彿とさせるので(そんな事を思うのは僕だけか?(笑))、
ゾクッとする快感を覚えます。
おまけに、
その後のシーンでは藤岡弘さんが出てくるのですから、
もう、観ていて、

 これは夢なのか・・・?

って錯覚してしまいそうになるくらい、胸がときめきました。



・・・って、
自分だけで喜んでいてもしょうがないですね(苦笑)。
観て下さった方は、
いかがでしたでしょうか・・・?

ってか、

 今、これを読んで下さっている方は
 『どうする家康』第2回「兎と狼」を観て下さった人だ、

って前提で書いてた事、今、気づきました。スミマセン。

でも、
観て下さったでしょう。そして、楽しんでいただけたでしょう。
そう、信じてます。

さらには、
前回の第227回「大事なお知らせ」を読んで下さっていた方は、
僕の出演シーンがカットされてるか、されてないか、
少しは気にして観て下さったでしょうから、
その分、余計に楽しんでいただけたのではないか・・・と、
これまた、そう、信じております(・・・信じたい。信じさせて(笑))。

そして、
どうもありがとうございました。
観ていただける事が、ホント、何よりの幸せです。



余談ですが、
僕と共演して下さった竹千代役の川口和空さん、めっちゃ良い子でした。
素晴らしい子役・・・っていうか、素晴らしい子供。
演技が巧い(表情や所作による感情の表現が実に細やかで、惚れ惚れします)だけでなく、
素顔の方も最高なンです。
礼儀正しいし、爽やかだし、もちろん可愛いし・・・、もう、完璧。

現在、中学2年生、との事でしたが、
なんか、
心に一点の曇りもない、というか、
気持ちが澄んでる、というか、
明るく健全な家庭できちんと育てられている事が、話してて判るンですよねぇ。

現場にお母様も来ておられましたが、
めっちゃ美人で(本当に余談(苦笑))、優雅で、上品で、愛に満ち溢れていて、

 なるほど、この人が育てたから息子がこうなったのか・・・、

って感じ入りましたし、
また、

 なんて素敵な親子なンだろう・・・、

って、感銘も受けました。
だって、
撮影の休憩時間に、
浜辺できれいな貝殻とか変わった形の石とかを、親子で仲良く楽しそうに探してたンですから。

もう、美しすぎます、世界が・・・。

自分の中学2年生の時を思い出したら、
母親とそんな事、絶対にしませんでしたからね。
なので、
その光景を眺めているだけでも、心が洗われる思いでしたし、
ハートの形になってる石を見つけて、

 「これ、凄くないですかぁ!?」

って、親子で僕に見せに来てくれた時には、
そのキラキラした2人の笑顔が、もう、眩しくて眩しくて、目を開けてられない気がした程です。
   

「お前のお母さん、美人だな。
    パンティー、こっそり持ってこいよ」

「は?」

・・・なんて会話はしていません。念のため。
いや、しようとしたンですけど(苦笑)、
いくら冗談とはいえ、
そんな下劣な言葉でこの清らかな子を汚すのは憚られ、
思いとどまった次第。
だから、全然、普段の自分が出せませんでした(笑)。

  そんな愛しき思い出が胸にキュンと甦るこの画像、
  テレビ画面を撮ったものですが、
  なんか、めっちゃいい “写真” だと思いません?
  ・・・携帯の待ち受けにしようかな(笑)。 


・・・まぁ、とにかく、ホント、

 この竹千代なら、
 そりゃあ、織田信長も、

  「俺の白兎・・・」

 って言いたくなるわな・・・、

そう思いました。



・・・けど、
“俺の白兎” は竹千代でも、
僕の白兎” は竹千代ではなく、こちら。
   


ロボピョン

『がんばれ!!ロボコン』に登場した、クリーニング屋の見習いロボットです。
              胴体に内蔵されている洗濯機で
ワイシャツを1枚10円で洗濯してくれますが、
旅先でお金が必要になった際は、それを20円に、しれっと値上げしてましたし、
ロボコンの紹介で客が増えて儲かった際には、
後日、ロボコンに御礼としてガソリン(ロボコンのエネルギー)を持ってきたし、
“ウサギ型ロボット” というキュートな見た目でありながら、
内面は、なかなかの “しっかり者” だったと記憶しています。


このソフビは、
ポピー製で全長約13センチ。
番組が放送されていた当時(昭和49年~52年)の商品です。 

     

・・・可愛いでしょ? 

まさに、僕のオモチャ、僕の白兎(笑)。

 






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