真水稔生の『ソフビ大好き!』


第76回 「ミキティーーーッ!」  2010.5

今から5年前、
平成17年のプロ野球セ・リーグ開幕戦(巨人×広島)の始球式での事。
ジャイアンツのユニフォームをアレンジした、
ミニスカートのコスチューム姿でマウンドに立った笑顔の可愛らしい女の子が、
山なりのボールながら
ど真ん中のストライクを投げたので、
僕は驚いた。
女性が投球をノーバウンドで捕手まで届かせるだけでも珍しいのに、
きれいなストライクを投げるなんて・・・、と。

それが、ミキティこと安藤美姫さんを、僕が初めて意識した瞬間だった。

安藤美姫・・・、
そんな名前のフィギュアスケート選手がいる事は知っていたけど、
そもそも野球以外のスポーツにはあまり関心が無いゆえ、
特に気にもしておらず、
どんな顔の女の子かも僕は知らなかったので、
その始球式を見て、初めて、

 あぁ、この娘が安藤美姫かぁ・・・、

と興味を持ったのである。
そして、
女子では世界で唯一4回転ジャンプを成功させた事がある選手だという事を知って、
なるほどそんな凄いアスリートならば
運動神経や筋力などが一般の女性の比ではないので、あれくらいの投球は可能だろう、と納得した。

だが、後日、或るテレビ番組の中で、

 「本番前の練習では、20球くらい投げたうちの1球しか、キャッチャーまで届かなかった」

と、インタビューに答えている安藤さんを見て、やっぱり驚いた。

ファンになった。
あんな大観衆を前に、本番で練習時の出来より数段上の結果が出せる事が凄いし、
しかも、
本番でそんな奇跡が起こせたのに、決して驚いたりはしゃいだりする事なく、
当たり前のように微笑みながら、
左足を引いてスカートのすそを触るスケート式のポーズで歓声に応えていたのだから、
なんてカッコよくて素敵な人なのだろう、と感動してしまったのだ。

そんな、
肝の据わった余裕の所作を見せる当時18歳の女の子に、
40過ぎのオッサンでありながら僕は、熱く胸をときめかせてしまったのである。

ただ、安藤さんが我が地元・名古屋の人とわかり、
なぜ地元のドラゴンズ戦じゃなくて巨人戦の始球式に? と嫉妬してしまったが・・・(笑)。


それを機に、
安藤さんが載ってる記事を雑誌やネットでチェックしたり、
安藤さん目当てにフィギュアスケートの大会のテレビ中継なんかも見るようになったのだが、
フィギュアスケートコスチュームを着た安藤さんを見て、
またまた驚いた。
なんと艶かしい事。なんと美しい事。
スマートでありながらムチッとした官能美溢れるボディ(とくに下半身)がなんとも悩ましく、
僕の “男” が猛烈に刺激された。
恋心は倍増した。
あの始球式の可愛らしい女の子とはまるで別人のような、
息苦しいまでに濃厚な色香を漂わせる安藤さんに、僕は悩殺されたのだ。


ちょっと下品な表現で申し訳ないが、
安藤さんの魅力は、ズバリ、
デカいケツと太い太腿だ、と僕は思う。

安藤さん本人からしてみれば、
いや、女性からしてみれば、失礼で不愉快な言葉に聞こえるかもしれないが、
僕としては、
嘘偽りなく、言い訳でも何でもなく、これは心からの賛美である。

そもそも、
女性がこうなりたいと思う体型と、男性が望む女性の体型は少し違う気がする。
まぁ、世の男性すべてが
僕と同じ好みであるわけではないので一概には言えないけれど、
女性が憧れるファッションモデルみたいな細い脚は、男としてはさほど魅力を感じるものではない。
さすがに、
大根みたいな太い脚をカッコいいとは思わないけれど、
脂がのっている、と言うか、
歯応えがある、と言うか、
ある程度肉づきの良い脚の方が、男としてはソソられるのだ。

たとえば、
ピンクレディーのミーちゃんで言うと(例えが古っ!)、
『サウスポー』以降の、スリムでカッコいいミーちゃんが好きな男性よりも、
デビューしてから『渚のシンドバッド』ぐらいまでの、
太腿の太いミーちゃんが好きな男性の方が、圧倒的に多い気がする。
つまり、
痩せてる女性よりも、
ややポッチャリ、少しふくよか、といった女性の方が、男ウケするというわけだ。

差し詰め、僕などは、
以前にも述べたとおり尻フェチなので(第58回「尻フェチはアンティークソフビを愛す」参照)、
豊満な下半身をした女性には無条件降伏(笑)してしまう。
お尻が大きくて太腿が太かったりしたら、
もうそれだけで僕のセックスシンボルに認定なのだ。

だから、
しなやかで迫力のある下半身が際立つ、安藤さんのあの肉感的なボディには強く惹かれるし、
そんな魅力的なボディをしているからこそ、
あの美しく力強い演技に “説得力” が備わるのだとも思う。

気分や体調の波が激しいのが欠点、と言われているが、
それすら僕は、
安藤さんの魅力の一部だと思う。
そういう、
いかにも普通の女の子な内面が、
安藤さんの氷上でのひとつひとつの動きに、生々しい “女らしさ” を滲み出させるので、
滑っている姿に、嘘っぽさが無い。
呼吸を感じる。
だから、
どんな派手な衣装を身に着けようが、
どんなダイナミックな演技をしてみせようが、決してわざとらしくない。
ステップもスピンもジャンプも、
ただ美しくカッコいいだけではなく、
安藤さんのそれには、リアリティがあり、ライヴ感が溢れているのだ。
よって、
ついつい身を乗り出して、自分の事のように応援したくもなってしまうのである。

安藤さんと並んで名古屋が世界に誇るフィギュアスケーター・浅田真央さんが
よく、銀盤の “妖精” と評されるが、
同じトップスケーターでも、安藤さんには、それは当てはまらない。
安藤さんは、
そんな夢の世界のふわっとした存在ではなく、あくまでも生身の人間であり、“女” なのである。
それゆえ、
着地に失敗して転倒した姿にさえ
なんだか色気があり、うっとりと見惚れてしまうのだ。

そんな、
“女” を実感させて男を惹きつける安藤さんの、
その素敵な魅力の根幹にあるのが、
何あろう、
あのデカいケツと太い太腿なのである。

イラスト:森タケヒト

フィギュアスケートは、
スポーツであると同時に、芸術でもあると言える。
スケーティング技術に加えて、
“美” を表現する演出的要素も不可欠な、そんな競技にあって、
女性の “美” をあれほどまでに悩ましく、
そしてリアルに表現出来る安藤さんの存在は、
非常に大きなものだと思う。
フィギュアスケートをするために生まれてきた、と言っても、決して過言ではないだろう。
やるせないばかりに男をうずかせる、氷上の、まさに、しきなのだ。

トリノ五輪では、
右足小指を骨折していた事や不安定な精神状態にあった事もあって成績が振るわず、
辛辣なバッシングを受けたりもしたが、
それを乗り越えて翌年の世界選手権では頂点に立つのだから、めちゃくちゃカッコいいと思うし、
それ以降、“女” にもますます磨きがかかり、
演技中の表情などは
見る度に妖艶度が増して、今や、その狂おしさにむせ返るほどである。
先のバンクーバー五輪や世界選手権では
あと一歩メダルに届かず残念だったけど(それでも5位と4位なのだから凄い事だが)、
世界中の多くの人が、
安藤さんのあの美しくセクシーな姿に、魅了された事だろう。

イラスト:森タケヒト

また、
これは個人的なイメージなので
共感してくれる人がいるかどうかわからないが、
僕は安藤さんを見てると、
明治製菓チェルシーのバタースカッチ味を思い出す。
小さなキャンディでありながら、
あの、発酵バターをじっくり煮詰めた濃厚でコクのある味が、
可愛らしい女の子でありながら、
氷上では男を悩殺する息苦しいまでの色香を放つ安藤さんの魅力に通じるのだ。

安藤さんを想いながら舐めるバタースカッチ味のチェルシーは、格別である。
僕の舌のリンクの上で、
安藤さんが美しく、そして激しく舞い、
時には転倒し、やがてとろけて僕と一体化する、その性的興奮を伴う甘美な味わいは・・・。


なんか変態オヤジ度が加速してきた(笑)ので、
軌道修正のためにも
この辺でコレクションの紹介といこう。

実は、
僕のソフビコレクションの中に、
そんな安藤さんを思い起こさせる人形がある。

ドドンゴである。
以前、第37回「色違いの妙味」の中でも述べたが、
マルサンのドドンゴ人形の造形は、
躍動感の中にちょっとした艶っぽさがあるので、
アグレッシブな演技をしながらも
匂うような色香が感じられる安藤さんの魅力と、僕の中ではイメージが重なるのだ。

また、
これも同じく第37回「色違いの妙味」の中で写真付きで紹介した事だが、
ドドンゴ人形のカラーリングには、
マルサンのものと
マルサンの型を流用したブルマァクのものを併せて、数多くのバージョンがある。
今回は、その中から、
先ほど述べたチェルシーのバタースカッチ味に因んで、
この茶色のバージョンの人形を紹介する事にする。

ブルマァク製スタンダードサイズ。
全長約16センチ、高さ約20センチ。

チェルシーのバタースカッチ味は、
ここまで濃い茶色はしていないけれど、
濃厚でコクのある味のイメージは変わらない。
深みのある甘さの、美味しそうな色である。

マルサン造形ならではの、
捻れと歪みによる迫力のある生命感はもちろん、
今にも空へ駆け上りそうな躍動感にも満ちた造形で、
昭和の傑作ソフビのひとつ、と言える、見事な出来映えである。

そして、なんといっても、
ちょっと踵を浮かせた左前足の “具合” が、たまらなく魅力的なのだ。
躍動感に加え、しっとりとした色気も感じられる。

この、
躍動感の中にも色気を感じる、という点が、
先述の通り、
氷上での安藤さんを彷彿とさせるのである。
特に、
ブルマァクのこの茶色成形のものは、
その色具合から、
他のどのカラーリングバージョンよりもモールドのひとつひとつが力強く、
そして生々しく感じられて、
マルサンの造形美が放つ躍動感と色気を更に際立たせているし、
先述したチェルシーのバタースカッチ味を思い出すような色でもある事から、
僕の感覚では、
安藤さんのイメージとピタリと一致してしまうのだ。

数ある僕のソフビコレクションの中で、
こんなにも濃厚で深い趣のある甘味を感じさせてくれるものはない。
愛しの安藤さんを思い起こさせ、胸をときめかせてくれる、魅惑の怪獣人形なのである。

イラスト:森タケヒト
         ・・・いいケツだ。たまらん!(笑)


ちなみに、
遅ればせながらドドンゴという怪獣について説明すると、
御存知『ウルトラマン』の第12話「ミイラの叫び」に出てきた怪獣であり、
その登場エピソードはこうである。

 洞窟で発掘された、約7千年前のものと思われる1体のミイラが
 なぜか夜中に息を吹き返し、
 安置されていた科学センターから逃げ出す。
 平田昭彦さん演ずる岩本博士から、研究のために生け捕りするよう依頼された科特隊だが、
 結局うまくいかず、そのミイラを殺害してしまう事になる。
 すると、
 そのミイラの断末魔の叫びに呼び醒まされたかのように、
 洞窟があった場所から怪獣ドドンゴが出現し、怒り狂ったように暴れまわる。
 科特隊とウルトラマンの活躍によってドドンゴは退治されるものの、
 結局、ミイラやドドンゴは何だったのかという事は、謎のままであった。


・・・よく考えると、ヒドい話である。
ミイラやドドンゴが何だったにしろ、
洞窟の中で眠っていたのを、人間の勝手な好奇心と都合で甦らせ、
挙句の果てには、
邪魔者扱いして両者とも無残に殺してしまうのだから。
人間が発掘や研究なんてしようとしなければ、
ずっと眠っていただろうし、
本人たちも、ずっと眠っていたかったに違いない。

ドドンゴ、って可哀想なヤツなのだ。
科特隊やウルトラマンに代わって、僕が人形を大切に愛してあげるから、どうか許してね(笑)。




これは、“ウルトラマンソフビ道” という食玩。
向かって左側が、
ドドンゴ(全長は約9センチ、高さ約10センチ)、
右側が、
ドドンゴを呼び醒ましたミイラ人間(全長約10ンチ)。

以前、第71回「極私的ソフビ怪獣人形史・その2」の中でも述べたとおり、
21世紀に入ってから発売されたこのシリーズが、
僕はとても好きだった。

ミイラ人間をはじめとする、
今まで玩具化に恵まれなかったマイナー怪獣たちが、
続々とソフビ人形として発売されるのが、たまらなく嬉しかったし、
昭和の子供だった世代にとって、
お菓子のオマケでありながら
こんなにもリアルでしっかりとした造形は、
驚きの感動ものだったのだ。

このカッコいいドドンゴやミイラ人間の
食玩人形を見つめながら、
昭和だけでなく平成のソフビも集めてて、つくづく良かったと思った。

また、
そんな実物の着ぐるみを忠実に再現した造形を見て、
或る事に気づいたりもした。

マルサンのドドンゴ人形は、
翼の位置が実物とは大きく違っていたのだ(下の比較写真参照)。
それなのに、
違和感や不格好な印象を全く持たせないのだから、
いかにその造形が素晴らしく完成されたものであったか、という事が言える。

自分が子供の頃に遊んだソフビ人形は、
実に優秀なオモチャだったのだ。

リアルな平成の食玩ソフビが、昭和のソフビの魅力を、改めて認識させてくれたのである。
マルサンのデフォルメ造形の偉大さを痛感した。

アンティークソフビは、やはり奥が深い。
工業製品とはいえ、手作りの良さがまだまだ充分に感じられる時代のものなので、
生き生きとした想像力が、その形や色に練りこまれている。
怪獣が再現されているではなく、
怪獣が表現されているのだ。
だから、
人間が空想を楽しむ生き物である以上、それは永遠に僕らの脳を刺激し続ける。

子供たちに夢を与え、
その子供たちが大人になったら、今度は癒しを与えてくれるのだから、
そんな素敵なものを僕は愛さずにはいられない。
大人になってからも面倒見てくれるオモチャなんて、そうそうあるものじゃない。

戦う獣、人を襲う獣の人形でありながら
見る者の心をやさしく穏やかになだめてしまう、というのは凄い事だ。
食玩ドドンゴはお菓子のおまけだが、
お菓子そのもののように甘いのが、マルサン・ブルマァクのドドンゴなのである。

怪獣という異形なるものに、異能なセンスで臨んだマルサン、
そして
それを更に力強くアレンジしたブルマァク、
アンティークソフビの代名詞でもある2大メーカーの、
強い個性のエナジーがぶつかり合って昇華した、
このドドンゴ人形の躍動美と色香は、
安藤美姫という女性フィギュアスケーターの魅力と、
それに胸を焦す僕の恋心までもを受容して、今、こんなにも甘く美しく輝いている。
実に魅力的だ。




そんな素敵なドドンゴ人形を愛でる事によって、
僕の安藤さんへの想いは
益々熱くなっていく。
ソフビへの愛情が、安藤さんが放つ女性フェロモンと化学反応を起こし、
恋心の温度や濃度を、どんどん高めていくのだろう。

これからも、
この胸の高まりそのままに、
僕は安藤さんの事を、精一杯応援し続けよう。

がんばれ、ミキティ! 
愛してるぜ、ケツと太腿!

イラスト:森タケヒト




ところで、
ここは名古屋市東区にある喫茶店、る・るぽ。
安藤さんの御祖父様が経営なさっているお店である。

今回はここで、
店内に飾られた何枚もの安藤さんの写真にドキドキしながらの、執筆でありました。
自己満足の極致(笑)。



そういえば、1、2年前、
安藤さんや浅田真央さんをはじめとする数名のフィギュアスケート選手が出演する、
或る東海ローカルのテレビ番組を見ていて、
ちょっと気になった事があった。
番組中のトークで、

“真央ちゃんはまだ恋愛経験が無いので、
 最初の恋人には、年下よりも年上の男性の方が頼れるから良い”

って話になった時、
安藤さんが、急にシビアな表情になって、

 「でも、年上の男性が頼れるとは限らない」

と、主張していたのだ。
それも、
何度も執拗に。

・・・安藤さんに何があったのだろう?(笑) 

ミキティーーーッ!

イラスト:森タケヒト





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