真水稔生の『ソフビ大好き!』


第254回 「心にソフビがある限り・・・」 2025.3

・・・髪も仏も無い今日この頃です(笑)。


  いやぁ~、見るも無残。
我ながら、よくぞここまで見事にハゲ散らかしたものです。
以前、第237回「価値を決めるもの・勝ちを決めるもの」の中で、

 薄くなっていく頭頂部は生きてる証、

なんて述べましたが、
いざ、こうしてテレビ画面に映し出されると、
滑稽だし、哀れだし、みっともないし、やはり恥ずかしいものですね(苦笑)。

ただ、“生きてる証” というのは、強がりでなく事実なので、
これからも、この世に生を享けた感謝を胸に、どんどんハゲ散らかしていきたいと思います。

・・・まぁ、そんな事をいちいちわざわざ宣言しなくても、どんどんハゲ散らかしていくでしょうけど・・・(笑)。

それにしても、
この頭では、モヒカン刈りは出来ませんね。
・・・いや、べつに、
モヒカン刈りにしたいわけでも、モヒカン刈りに何か特別な思い入れがあるわけでもなく、
取るに足らない話ですが、以前あった、こんな出来事を思い出したのです。
それは、
今から25年ほど前、俳優養成所に通っていた頃の事。
或る映画のオーデションの話があり、
坊主頭にならなければならない役だったのですが、
それがイヤでオーディションを受けるのをやめた後輩がいて、
僕は、驚いて、そして呆れて、
また、
そもそも普段から、その後輩の、
そういう、演ずる事に対する愛の無さや、どうにも信用出来かねる軽薄な人間性が、
ずっと癇に障っていた、というのもあって、

 「バカか、お前は!
  そんなンで「役者になりたい」なんてヌカすな、どアホ!
  坊主だろうとモヒカンだろうと、その役のためならどんな頭にでもなれよ、タワケがぁ!
  本気でやる覚悟がないなら、とっと辞めてけ、ボケ!」

なんて(正確には憶えてないけど、こんな感じで、
     バカとかアホとかタワケとか、思いつく罵り言葉を全部浴びせて)、説教しちゃったンですよね。

それで、

 頭頂部の髪が無くなっちゃた今の僕では、
 坊主頭にはなれても、モヒカン頭には物理的になれないから、
 あんな、役のためならどんな頭にでもなれよ・・・なんて説教は、もう出来ないンだなぁ・・・、

な~んて自虐ネタを、思いついちゃったわけです(・・・ね? 取るに足らない話でしょ?(苦笑))。

まぁ、でも、
いくら言ってる事が間違ってなくても、
後輩に説教(それも罵声を浴びせて)など、不適切な言動とされて許されない令和の世ですから、
それが出来なくなって、ちょうどよいのかもしれませんけどね(笑)。

ただ、その後輩、
僕が社会人になった頃にはまだランドセル背負ってたくらい年下なのですが、
同じ養成所の生徒同士、って事で、お互い “対等な立場” だと思っていたのでしょう、
そんな僕に説教なんかされてムカついたようで、


 「坊主頭になれないから役者失格、なんて事はない!」

とか、

 「誰にだって譲れないものはあるでしょう」

とか、
  
 「あなたとは考え方が違うだけで、俺は本気で役者を目指してる!」

とか、

めっちゃ口答えしてきたンですよね。
なので、
再び驚いて、そして再び呆れてしまいました。
あ、そうそう、

 「そんな偉そうな事は、オーディションに受かってから言って下さい」

なんて事も言われたなぁ・・・。
思わず手が出そうになったのですが(恥)、
その後も続けて、なんかハナクソみたいな演技論や小便臭いにも程がある人生論をホザいてきたので、
しょうもなさ過ぎて、それ以上はもう相手にするのをやめました。


ちなみに、その後輩ですが、
今では、役者でなく、市バスの運転手をしています。

・・・あれぇ~? 不っ思議だなぁ~。
本気で役者を目指してたのなら、
食えてる・食えてないは別として、今でも役者をしてなきゃおかしいンですけど・・・。
だって、本気だったンだから。
それに、年上の先輩の説教に反論してあれだけの事が言えるのですから、
さぞかし才能もおありでしょう。
そんな凄いヤツが、本気で目指したのですから、

 なれなかった・・・、

なんて事も無いはずだし・・・。
なんでそれが、役者じゃなくて、市バスの運転手なンだぁ?

市バスの運転手、って事は公務員ですから、めっちゃ、ちゃんとした仕事。
安定した日々の暮らしよりも
何かを表現して誰かに観てもらう事を優先する、言わば生活度外視のヤクザな職業である “役者” とは、
まったくもって正反対の職業です。
人間、本気で目指してた職業とは正反対の職業になんか、はたして就けるものなンですかねぇ?

もしかして、市バスの運転手は本気でやってないのかな?
だとしたら、人の命を預かるそんな大変な仕事を遊び半分でやっている、って事になるけど・・・。

いやぁ~、怖い、怖い。
名古屋市民の僕だけど、その後輩が運転する市バスにだけは乗らないようにしなくちゃ。
まだ死にたくないですからね。
欲しいソフビだって、まだまだいっぱいあるし、
美味しいものだって、もっともっと食べたいし、
体が動くうちは仕事だってずっとしていたいし・・・。
運転手が遊び半分で運転しているバスになんか乗って、命を危険にさらしてる場合じゃないですもの。
くわばら、くわばら。

・・・あれ? なんか、ネチネチと嫌味ったらしいですね。
スミマセン。
取るに足らない話といいながら、
書いてたら、いろいろ思い出して腹が立ってきちゃって・・・(苦笑)。

こういう時は、
コレクションのソフビ怪獣人形を鑑賞して、気持ちを和ませるに限ります。
というわけで、今回は、
モヒカンが出来なくなった僕の頭に因みまして(笑)、こちらの人形を紹介させていただきましょう。 
 




サータン

ブルマァク製 スタンダードサイズ、全長約22センチ。
  サータンは、
『帰ってきたウルトラマン』第19話「宇宙から来た透明大怪獣」に登場した、
透明になれる能力を備えた宇宙怪獣です。
この、背中まで繋がってる立派なモヒカン刈りがその象徴で・・・って、違う、違う(笑)。
実物のサータンは、モヒカン刈りになどしていません。
ってか、出来ないンです、
頭にも背中にも、毛は、まばらにしか生えてないので・・・。
焼け野原みたいになってるンですよね、頭部も背中も。
とくに頭部は、まさに “ハゲオヤジ” って感じで、
帰りマンを苦しめた強敵でありながら、決してカッコいい怪獣だとは思えませんでした。
なんなら馬鹿にしてたくらいです。
将来、自分自身が同じような頭部になるとは夢にも思わず・・・(苦笑)。
ただ、
番組放映時(昭和46年4月~47年3月)に発売されたこの人形は、
その、頭部から背中にかけてまばらに生えてる毛を、
造形上の都合で、
モヒカンが背びれと繋がってるような形態に
整えてしてしまってるンですよね。

焼け野原のようにハゲ散らかしてるくせに、
モヒカン刈りにしているみたいなオシャレな頭の人形にしてもらえて、
モヒカン刈りが出来なくなった現在の僕からすると、
羨ましいかぎりです(笑)。
 
  「いいだろ? このモヒカン・・・」 
 
と、人形本人も鼻高々のよう(笑)。


     
   
   


こちらは、
同じくブルマァク製でミドルサイズのサータン。
全長約14センチ。

先述のスタンダードサイズのサータンと異なり、
頭部から背中にかけてまばらに生えてる毛が省略されていますので、
“ツルッパゲ” になっちゃってますが、
実物のサータンには、こちらの方が近い見た目をしている、と言えるでしょう。
     
 
やっぱ、夢がありますね、昭和のソフビ怪獣人形は・・・。
実物の姿に忠実であればあるほど “出来がいい” と評される今どきのソフビ怪獣人形なら、
まばらの毛も、植毛か何かでリアルに再現するのでしょうけど、
それを勝手に、
真ン中に集めてモヒカンにしちゃったり、丸っと省略しちゃったり、ですからね。

・・・え?

 どこに夢があるんだ!? いい加減なだけじゃないか!?

って?

何をおっしゃいます。
毛がまばらにしか生えてない頭の怪獣がモヒカン刈りにしてるなんて、もはや魔法だし(笑)、
そのまばらの毛だけが消えちゃってるのも魔法・・・いや、
サータンは透明になれる怪獣だから、その能力を使って、毛だけを透明にしているのかもしれないし(笑)、
めっちゃ夢のある話じゃないですか。
そうやって、
実物の怪獣のプロフィールを無視して勝手な姿に変身させたり、
あるいは、
実物の怪獣の特徴を部分的に用いて、自分なりの解釈でアレンジしてみたり・・・、と
心の宇宙で自由に伸び伸び遊べるわけですから・・・。
     
 
昭和のソフビ怪獣人形は、子供の夢を育むオモチャです。
歩くのも走るのも、空を飛ぶのも、海の中を泳ぐのも、目や口などから発射する光線や火炎も、破壊する街も、
全部、空想で表現。だからこそ無限に楽しめるのです。そこが面白いのです。
実物の怪獣と異なる造形上の部分だって、そうです。同じように空想で、補い、膨らまし、夢見て遊ぶのです。
なので、“いい加減” といっても、
それは不誠実の意味ではなく、むしろ誠実。
夢を見るのにちょうど “いい加減” に、作られているものなのです。

そんな素敵なオモチャで遊んで育ったンですから、
大人・・・ってか頭のハゲたお爺ちゃんになった今でも、僕は夢見ていますし、これからも夢を見続けます。
そして、愛し続けます、この夢見る人生を・・・。
頭頂部は荒れ果てても、心は荒れ果てません。ソフビ怪獣人形で遊んだ思い出や、それを大切に思う気持ちがある限り・・・。








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