第230回 「ゆるせない話」 2023.3
映画『#マンホール』(監督:熊切和嘉)を観てきました。 結婚式前夜のハイスペックな男がマンホールに落ちてしまうところから始まる、 いわゆる “シチュエーション・スリラー” でしたが、 いやぁ~、面白かった。 ストーリーの展開はもちろん、役者の使い方や見せ方が巧みで、 めっちゃ楽しめました。 何かのテレビ番組でこの映画の紹介をしていて、 MCの方が、 自分が主人公の立場だったらどうするか、 つまり、自分がマンホールに落ちてしまったらどうするか、 それを想像しながら観ると、面白さ倍増・・・、 みたい事をおっしゃっていたのですが、 実は、僕、 実際にマンホールに落ちた事があるンですよね。 その体験が、なんとなく僕の足を映画館に向かわせたのかもしれません。 まぁ、正確には、 落ちた、のではなく、落ちかけた、だけなのですが、 あれは、 まだ小学校にも上がってない、5、6歳の頃の事。 雨上がりの午後でした。 近所の神社で独りで遊んでいて (当時、その神社には、敷地内にすべり台やブランコがあったンです)、 その帰り、 神社を出たすぐ前の道路を我が家に向かって歩き出した際、 マンホールの蓋の上が、水たまりになっている事に気づき、 子供なので、 何の気なしに、飛び上がってその水たまりに着地しようとしたのですが、 そしたら、 どういう事情でそうなってたのか、 なんと、蓋が無く、 そのまま僕は、ボチャンと穴に落ちてしまったのです。 反射的に両手を穴の左右の地面についたので、 下半身だけが嵌まっただけで済みましたが、 両手をつくのに失敗していたら、 全身が穴の中に浸かり、もしかしたら溺れて死んでしまっていたかもしれません。 なかなかの恐怖体験でした。 しかも、 その時、たまたま僕の対面から歩いてきていた初老の男女(たぶん夫婦)がいたのですが、 幼い僕がマンホールに嵌まる瞬間を目撃したのに、 「あ・・・」 って言ったまま無表情で立ってるだけで、 まったく僕を助けようとしてくれなかったンですよね。 あの不親切さが、子供心に余計に恐怖で、忘れられない出来事となっています。 だって、 本当に、ただ見てただけでしたから、二人とも。 フツー、すぐに駆け寄って手を差し伸べません? 目の前で子供がマンホールに嵌まってるンですから。 何もしてくれない、なんて、人としてどうかと思います。 信じられないし、許せません。 仕方なく自力で這い上がり、 泣きながら走って家まで帰った事を ズブ濡れになったズボンの重たい感覚と共に憶えていますが、 マンホールに落ちかけた恐怖よりも、 その初老の夫婦の不親切さが怖くて、泣けてきたンですよね、今考えると。 まぁ、おかげで、 他人は当てにならない、自分の落とし前は自分でつける、 という僕の人生に対する心組みの土台が、そこで作られた気はしますけど・・・(笑)。 さて、 そんな今回、 特撮作品やオモチャで何かマンホールにまつわる話はないか・・・、と 思い巡らせたら、 『ウルトラマンレオ』の第38話「決闘!レオ兄弟対ウルトラ兄弟」の或るシーンを思い出しました。 それは、 物語が始まってすぐ、 M78星雲のウルトラの星で、 ゾフィー、マン、帰りマン、エースの4人が登場するのですが、 なんと、 マンホールから、順番に這い上がってくるのです。 ウルトラシリーズ史上屈指の失笑シーン・・・だと、僕は思っています。 まぁ、マンホールではなく(苦笑)、 マンホールのように何某かの目的で地面に開けられた穴なのでしょうけど、 なんで、ウルトラ兄弟が あんな穴の中から登場しなくてはならないのか、理解に苦しみますし、 穴から出てきた後も、 なんか、運動神経の悪いオッサンが 不慣れなジョギングをするみたいな感じで走っていき、 その姿がどうにもマヌケで冴えません。 マンホールに嵌まった状態から這い上がり、 泣きながら家まで走っていった僕と、大差ないカッコ悪さなのです(笑)。 おまけに、 その時にバックで流れてるBGMが、 ウルトラ兄弟の精悍さを称えるために作られたような、 軽快でカッコいい曲ゆえ、 どん臭いその映像とのズレ具合が滑稽極まりなく、 そりゃあ、子供は 特撮・怪獣ものでなくロボットアニメを支持しますよ、これじゃあ・・・、 と観る度にため息が出てしまいます。 まぁ、ウルトラ兄弟は、 身長が40メートルも50メートルもある巨大ヒーローですので、 何人も並ぶと、 等身大のヒーローである仮面ライダーの何人かが揃った時のような、 シャープでリアリティのあるカッコよさは、 どうしても表現しづらく、 ちょっとダサい雰囲気を醸し出してしまうのは仕方の無い事かもしれませんけど、 それを防ぐ策は、 いくらでもあったと思うのです。 颯爽と空を飛んでくるとか、眩しい光の中から幻想的に現れるとか・・・。 “特撮” って武器があるのですから、円谷プロには。 それを、 “特撮” など一切使用せず、 地面の穴からゾロゾロと這い上がらせる・・・、なんて、 ホント、意味が解りません。 脚本家か監督か、誰の発案か知りませんけど、擁護しかねます、ファンとして。 あれは無いです。 あの回と翌週の回の前後編は、 暗黒星人ババルウ(ババルウ星人)が、 レオの弟・アストラに化けて ウルトラの星を制御しているウルトラキーを盗み出し、 そのせいで、軌道を外れて宇宙を暴走しだしたウルトラの星が 地球と衝突しそうになったり、 あるいは、 騙されたままアストラが犯人だと思い込み、 「アストラを殺す」と宣言してウルトラキー奪回を図るウルトラ兄弟たちと、 弟・アストラの命を守るためにレオが対決する事になったり・・・、と 結構ハードな物語が展開されるし、 最終的には、 ウルトラの星出身ではないレオとアストラが、晴れてウルトラ兄弟入りを認められる、という、 感動的なエピソードでもあったので、 冒頭に、そんな、 ウルトラ兄弟がマンホールから出てくる・・・、 なんていう素っ頓狂なシーンがあるのが、余計に残念なのです。 これまた、許せません(笑)。 ・・・いや、冗談でなく本当に、 なんでマンホールから登場? 憧れのヒーローであるウルトラ兄弟をゲストで出すなら、 観ている子供たちの気持ちをもっと真面目考えて、ちゃんとカッコよく描いてくれよ! って、 僕は今でも恨みに思ってます。 ・・・まぁ、あんまり悪口を書いて、 あのシーンを好きな人(そんな人、いるのかなぁ?)の機嫌を損ねても本意ではないので、 そろそろ、 ソフビコレクションの紹介に移らせていただきます。
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