真水稔生の『ソフビ大好き!』


第219回 「星のプリンス」  2022.4

エド山口さんのYouTubeチャンネル『エド山口のOh!エド日記』をよく観ます。
面白いし、勉強になるし、
特に音楽に関するお話をされる回は、
昭和歌謡を愛する僕には、たまらなく魅力的な内容ですので、
一度観たものでも思い出してはまた再生、って感じで、大いに楽しませていただいております。

だいたい、動画を観た後は、

 その回でエドさんが話題にされていた歌手や作詞家・作曲家の曲が聴きたくなって
 CDラックをあさる・・・、

ってのがルーティン(笑)になっていて、
さきほど観たのが

 “ザ・タイガースの裏話”

って回でしたので、
例によってタイガースさんの曲が聴きたくなったのですが、
この回の動画を観てタイガースさんの曲を聴くのは、
今年に入ってからだけでも7度めか8度めの事ゆえ(どんだけ好きやねん(笑))、
CDの方は、
ちょっとひねって、こちらの1枚を選びました。



タイガースさんではなく、
久美かおりさんのCDなのですが、
タイトルになってる “星のプリンス” は、
タイガースさんの『星のプリンス』(作詞:橋本淳 作曲:すぎやまこういち)から来ているし、
このCDには、
その『星のプリンス』を
タイガースさんと久美かおりさんがデュエットしているバージョンが収録されているのです。

ジャケット写真をよく見ると、
久美かおりさんの後方に、ジュリーこと沢田研二さんがチラッと映ってるでしょ?

詳しく御存知ない方のために説明いたしますと、
久美かおりさんは、
もう引退されていますが、
僕が幼稚園に通っていた頃(昭和40年代前半)に活躍されていた歌手で、
タイガースさんの主演映画3本すべてでヒロインを演じられた方、なンですよね。
とくに、
1本めの『ザ・タイガース 世界はボクらを待っている』では、
『星のプリンス』を
沢田研二さんをはじめとするタイガースのメンバーの方々と一緒に歌いながら踊る、
とても印象的なシーンがあって、
そのシーンの音源が、このCDには収録されている、というわけです。

でもって、実は、
僕がタイガースさんの曲の中でいちばん好きなのが、何を隠そう『星のプリンス』でして、
ただでさえ酔いしれてしまう曲の、
その、
爽やかだけどどこかちょっぴり切ない雰囲気が、
久美かおりさんによって
さらにセンチメンタルに彩られているので、もう、これ、たまらないのです。

まさに “究極版『星のプリンス』”。

しかも、
本来はしっとりとした大人っぽい歌声の久美かおりさんが、
このデュエットでは、
健気さや生真面目さが感じられるような歌唱で “可憐な女の子” を表現し、
滑らかに溶け込むようにハモっていくので、
ニクいというか、気が利いてるというか、素晴らしいンですよね、実に。

今も、この原稿を書きながら聴いていますが、
美しいメロディーと澄んだ歌声のハーモニーが見事にマッチしていて、
ホント、それこそ星の世界へでも行ってしまいそうな気分になる、最高の聴き心地なのです。

また、
映画のそのシーンの方も、とても素敵で、
そんな “究極版『星のプリンス』” の甘酸っぱい世界観が、
それはそれは優しくデリケートに描かれているンです。
とくに、間奏の後、
2人っきりで踊っていた沢田研二さんと久美かおりさんのもとへ
ほかのタイガースのメンバーの方々が続々と歌いながら現れ、最後は全員で一緒に歌って踊り出す・・・、
って展開が、
もう、愛おしいまでにピュア。涙腺さえも刺激します。大好き。

 
 

まぁ、半世紀以上も昔のアイドル映画ですし、

 久美かおりさん演じるアンドロメダ星の王女・シルビイが、
 地球にやって来てザ・タイガースのジュリーに恋をする・・・、

っていう、
荒唐無稽な物語のメルヘンチックなシーンですので、
今の感覚で観ると、
甘酸っぱいどころか甘ったるすぎて、笑ってしまう人もいるかもしれませんが、
夢の世界、って、
そういうものだと思うし、やっぱ魅力的に映るンですよねぇ、僕の目には。

ソフビ怪獣人形と同じです、言ってみれば。
昔のものだから、と
単に懐かしさだけを感じて終わるのではなく、
もちろん、
「幼稚だ」、「馬鹿らしい」などと見下して笑い飛ばすのでもなく、
僕は、ソフビ怪獣人形を、
只々素直に、純粋な感受性だけで理想的に捉えてるので、
それと同じ感情や衝動が湧き上がる汚れなきシーンに、心が振動しないわけないのです。


数年前に、或る劇団の公演に客演させていただいた際の写真です。

最初、衣装担当のスタッフの方から、

 「このシーン、
  演出家のイメージが、
  赤か白のタキシードもしくはスーツらしいンだけど、
  色は選ばせてあげる。
  赤か白、どっちがいい?」

って聞かれて、
僕は、
テレビ映画『マジカル・ミステリー・ツアー』の中の『ユア・マザー・シュッド・ノウ』って曲のシーンで、
白いテールコートを着て踊っていたビートルズの4人の姿が瞬間的に頭に浮かび、

 「白が着たいです」

って即答したのですが、
本番が近づいて、いざ、それを着用しての稽古になった際、

 ・・・ん? これ、ジュリーじゃん!

って、
『星のプリンス」のそのシーンを思い出し、
そこから本番の千秋楽まで、ずっと、
久美かおりさんと歌いながら踊る沢田研二さんになりきって、
夢見る気分でやってました。

もちろん、密かに楽しんでただけですので、
共演者の方もスタッフの方も、そして観客席の方も、
このオッサンが厚かましくも自分の事をジュリーだと思って踊っているとは
まったく気づかなかったでしょうけど(笑)。 
   
ちなみに、
僕の希望どおり白の衣装に決定したものの、
予算の都合で、僕のサイズにきっちり合わせたものは作れず、
この劇団の
団長さんの私物のスーツ
(趣味でやられているカラオケの、大会出場の際に着るらしい)を
お借りして着ているため、
ズボンの丈が寸釣天ですが、
まぁ、そこは御愛嬌、という事で・・・(苦笑)。


御愛嬌、といえば、
その映画『ザ・タイガース 世界はボクらを待っている』の中で、
久美かおりさん演じるシルビイ王女が乗って地球にやってくる宇宙船、
地球の科学力を超越した乗り物でありながら、
タイガースの演奏が聴こえてくると、その音波のせいで操縦不能になったり、
操縦席を手でバンッって叩いたら故障が直ったり、と
思わず笑ってしまう要素もあって、妙に愛着や親近感を覚えるンですよね。

しかも、
操縦しているアンドロメダ星人のヘラクレス(シルビイ王女の専属運転手)を演じているのが
死神博士こと天本英世さんですから、
僕は、もう、愛さずにはいられません(笑)。

しかもしかも、
そんな愛しき宇宙船は、
なんと、

 『怪獣大戦争』に登場するX星人の円盤をリペイントして流用したもの、

だというのですから、詠嘆。
まったく、どこまで僕を惹きつけるンでしょう。




それにしても、
タイガースさんの映画に出てくる宇宙船が、ゴジラ映画に出てきた円盤の流用とは、
僕の好きなものが、意外なところで繋がっていたものです。



・・・というわけで、
昭和歌謡の話題から巧いこと怪獣映画の話題に繋がりましたので、
ここらでソフビコレクションの紹介、と参りましょう
(いやぁ~、無理矢理なこじつけでない自然な流れ、って、いいなぁ(笑))。

今回は、
その『怪獣大戦争』で、
X星人に操られていた “怪物ゼロ” ことキングギドラを、取り上げたいと思います。

  これらが、
僕が子供の頃のキングギドラ人形。

すべてブルマァク製ですが、
さすが
ゴジラの最強ライバルの銀幕スター、
ジャイアント、スタンダード、ミドル、ミニ、と
すべてのサイズで、ソフビ人形化されています。
ゴジラ怪獣では、
ゴジラとキングギドラだけですからね、そんな扱い。
キングギドラという怪獣の
当時の人気の高さが、窺い知れようというものです。 


 


スタンダードサイズ、全長約24センチ。

以前、第90回「リアルなデフォルメ」の中でも紹介した人形です。 
 キングギドラの最大の特長は、
 全身が金色である事と、首が3つある事だと思うのですが、
 当時の人形は、
 このように、
 色は、金色でなくオレンジ、
 造形は、3つの首が一体成形で束ねられてしまい、おまけに2本ある尻尾も勝手に1本に変えられて、
 キングギドラの魅力が、
 まったくと言っていいほど表現されていないンですよね。

 なので、
 ブルマァク世代じゃない人は・・・いや、ブルマァク世代である僕らでも、
 この人形をカッコいいとは思わないわけですが、
 ソフビ怪獣人形で遊ぶ子供として当時を生きた身、という立場で証言させてもらえば、
 それで文句を言ったり、この人形を否定している子は、いませんでしたね。
 少なくとも、僕の周りには一人も・・・。

  ソフビ怪獣人形はデフォルメされてる事が当たり前、
  実物とオモチャは色や形が違ってて当たり前、

 という時代でしたので、
 そんなに苦にならなかった、というか、
 造形の出来よりも、
 人気怪獣キングギドラが人形になってる事実の嬉しさが勝っていた、というか、
 そんな感じだったンです。

 なんなら、

  首を3本に分けるのは技術的に難しいのだろう、

 とか、

  子供のオモチャで精巧なものはコスト的に作れないだろう、

 とか、
 そんな事をなんとなくですが理解・納得していて、

  作り手の大人たちに無理は言わないでおこう、

 みたいな意識を持っていたような気さえします。
 いや、ホントに。
 違うところや足りないところは、無限の空想力で補って遊べばいいわけですから。

 なので、
 今どきのリアルな造形こそ優秀なソフビ人形、と
 信じて疑わない人は
 頭ごなしに否定して馬鹿にする人形でしょうけど、
 このキングギドラ人形にこそ、
 昭和のあの時代に
 ソフビ怪獣人形が巻き起こした大ブームの原拠がある、と
 僕は思いますね。 





 


ジャイアントサイズ、全長約34センチ。
      彩色も造形も、
スタンダードサイズの人形をそのまま大きくしただけ、って感じですが、
やはり、このサイズになると迫力が違います。

子供の頃は
到底買ってもらえない(おねだりすら、しなかった)高級品ですので、
大人(コレクター)になってこれを買う際にも、
なんとなく罰が当たりそうな気がしたくらいです(笑)。

ほかのジャイアントサイズの人形を買う際には、
そこまで圧倒されませんでしたので、

 キングギドラ、って、やっぱ、特別な怪獣なンだな・・・、

って改めて実感しましたね、その時。 


 


ミニサイズ、全長約10センチ。
3つの首どころか、上半身が丸ごと一体成形で束ねられちゃってますが、
これだから可愛らしくて愛しいのだし、
これこそが “ブルマァクのミニサイズ人形” というものです。

それが証拠に、
ほかのサイズの人形には入れられていないブルマァクのロゴマークが、
背中に、

 我こそがブルマァク!

とでも言わんばかりに、大きく刻まれています(笑)。
             


 


ミドルサイズ、全長約13センチ。 

ほかのサイズの人形と比べると、全体的にしなやかで垢抜けてる印象を受けます。
尻尾も、ちゃんと実物どおりの2本になってますしね。
まぁ、現在のリアル造形にはまだまだ程遠いですが、
当時としては、ソフビ怪獣人形と言う玩具の未来を感じさせる造形だった、と思います。


 

ソフビ怪獣人形の未来、といえば、
『怪獣大戦争』の中で
ゴジラが “シェー(漫画『おそ松くん』の登場人物イヤミがやるポーズ)” をするので、
僕は、子供の頃、それを再現しようと、
こんなふうに、
ゴジラ人形を左右交互に傾けながら上げ下げして楽しんでいましたが、
その時、
映画の中の “シェー” をした状態のゴジラが
そのポーズのまま人形化されて、
“シェーゴジ” などと呼ばれ
商品として流通する未来がやって来るとは、思いもしませんでしたね(笑)。 







キングギドラは
3つの首が1つに束ねられたうえに尻尾も1本しかないし、
ゴニラの “シェー” は
自分で空想して動かしながら再現しなくいちゃいけないし、
至らぬ所だらけの昭和ソフビですが、
だからこそ夢があったし、だからこそ楽しかったンだ、と僕は思います。

       


音楽もオモチャも、
僕はやっぱり昭和のものが好きです。
生気に満ちて味が濃く、刺激的で、
それでいて癒しや和みの情緒も秘めてて、なんとも趣深いですから。

そして、それらは、
過ぎ去った遠い時間のものではありながら
今でも美しくキラキラと輝いて、僕の心を明るく照らしてくれています。
ちょうど、まるで夜空の星のように・・・。





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