真水稔生の『ソフビ大好き!』


第218回 「シガんで生きる」  2022.3

前回、コレクションルームの写真を載せ、

 ロッキングチェアに揺られてお酒を飲みながら
 コレクションをボーッと眺めている・・・、

という、僕の日常を紹介しましたが、
それを読んでくれた或る知人に、

 「貴族の嗜みのようです」

と言われました(笑)。

まぁ、確かに、
“オモチャのコレクター” なんていうと
お金持ちのイメージだし、
実際、お金持ちの人が多いし、
コレクションルームで寛ぐひとときだけを僕の日常から切り取れば、
たいそう優雅なものに感じられるかもしれません。

でも、実情は、
アルバイトで生計を立てている売れない役者のカツカツ生活ですから、
その暮らしには、
優雅の “ゆ” の字もありません(苦笑)。
なんたって、
以前、
第119回「SOMEDAY ~今は寒(さむ)DAY、でもいつか・・・~」の中でも述べたとおり、
台所の給湯器が壊れてお湯が出ないため、
毎年、真冬でも冷たい水で洗い物をしてるくらいですから。
とくに厳しい寒さの今冬、
ついに、指先があかぎれになっちゃいました(痛)。

令和の時代のこの日本に、とんだ貴族がいたものです(笑)。 

ところで、
そんな、似非貴族の似非優雅な楽しい生活とともに、
前回、もうひとつ、
紹介させていただいた事がありましたね。

・・・そう、映画『ノイズ』です。

まぁ、紹介、というか宣伝、でしたけども、
当然の事ながら、
周りの友人・知人には直接宣伝しまくりまして(笑)、
その際、
ほとんどの人は、

 「おぉ! 出演、おめでとう!」

 「わぁ、絶対、観る観る!」

なんて言って喜んでくれたのですが、
中には、

 「スミマセン、コロナ感染が怖いので・・・」

と言って、鑑賞を断る人もいました。

まぁ、それは仕方の無い事ですし、

 「そんな事言わずに、何が何でも観てくれよ!」

なんて無理強いする気もありませんので、
べつにいいンですけど、
その、

 コロナ感染が怖い、

という理由で映画館に行く事を拒絶しておきながら、
数日後に、

 「昨日、パチンコでめっちゃ買っちゃってさぁ・・・」

なんて、嬉しそうに話しかけてきたり、

  今日は仕事が休みだったので、朝から○○へ出かけて、
  それから△△のお店でランチしながらビール飲んで、
  その後、●●に行って、
  それでもって次は▲▲まで行って、××を買うために行列に並んで・・・、
  あ~疲れた!

なんて、楽しそうな1日の様子をメールで送ってくる人がいて、絶句してしまいました(笑)。

・・・いや、解ってますよ、
僕にはもちろん、『ノイズ』という映画そのものにも興味が無いゆえ、
わざわざ映画館まで観に行く気がしない、ってのを、
そのまま正直に僕に告げては
僕が傷つくと思って気遣い、
“優しさ” や “友情” から、コロナのせいにしてくれた事くらい・・・。

けど、
だったら、その設定はちゃんと守っていただかないと・・・(笑)。 

 「何が「コロナ感染が怖い」やねん!
       フツーにパチンコ行っとるがな!」

とか、

 「朝から出かけて、いろんな所を飛び回って、外食して、酒飲んで、行列にまで並んで、
  どこが「コロナ感染が怖い」やねん!
  なんにも気にせず、1日中、人混みン中で遊びまくっとるがな!」

とか言ってツッコもうかと思ったのですが、 

 「ゴチャゴチャうるさいなぁ!
     お前自体がノイズなんじゃ、ボケ!」

なんてキレられても本意ではないので、

 「よかったですね」

と一言だけ、返した次第です(苦笑)。


・・・ただ、
同時に、懐かしい感覚も甦りましたね。

というのも、
子供の時に見た、
テレビ絵本だったかレコードのジャケットだったか何かに、
仮面ライダーがムササビードルやゲバコンドルといったショッカー怪人たちと
仲良さそうに肩を組んで横一列に並んでいる写真が載ってて
(マニアの方ならお解りでしょうけど、
   あの、三栄土木で行われた有料撮影会のヤツです)、
それを思い出したからなのです。

その時も、

 いやいやいや、
 大人たちよ、僕ら子供たちだって知ってますよ、
 『仮面ライダー』の世界は絵空事で、
 ライダーもショッカー怪人たちも、
 中に役者さんが入って演じていらっしゃる、って事くらい。
 けれど、こちとら、
 その物語の中に心を預けて、
 怖くて震えたり、熱くなって胸躍らせたりして、夢見てるンだからさぁ、
 作品世界の設定はちゃんと守っていただかないと・・・、

って、
今回と同じようなを事を思いましたから(笑)。 



・・・まぁ、
そんな、どーでもいい事はさておき、
寒い中、映画館まで足を運んで下さった方には、
心より、御礼申し上げます。どうもありがとうございました。

あぁ、幸せ。 (^-^)


・・・と、こんなふうに、
公開からもう1ヶ月以上経つ『ノイズ』をいまだにシガんでいる僕でありますが、

・・・え?

だってェ~、
めっちゃ嬉しかったンだも~ん、
台詞や出演シーンがカットされてなかった事ォ・・・。

観てもらうため、
そのために、そのためだけに、
すべてを犠牲にして生きてるンですから、僕は。


・・・あ、そういえば、
息子たちから鑑賞報告のメールが届いたのですが、
事前に、

 「嵐のシーンが
  僕の見せ場だから(見せ場といってもたいした事ないンですけど(苦笑))、
  要チェックな」

って言っておいたにもかかわらず、
長男の感想が一言、

 >結構アップで焼鳥食べてたね

でした。

いや、あれは焼鳥じゃなくて味噌串カツ・・・いやいや、そこじゃなくて!(笑)


まぁ、なにはともあれ、

 テレビドラマや映画に出演出来て、
 自分の出演シーンや台詞がカットされずに放送・公開され、
 誰かに観てもらえる・・・、

というのは、
ホントにホントに、とても幸せな事なのであります。

そのために、そのためだけに、
すべてを犠牲にして生きてるンですから、僕は。 ・・・しつこい?(苦笑)。


・・・で、そんな僕でありますが、
先日、来年のNHK大河ドラマのオーディションに・・・、

落ちました。ガクッ(涙)。

自信あったンだけどなぁ・・・(苦笑)。

・・・あ、いや、
べつに、調子こいてるわけでも自惚れているわけでもなく、
自分の演技を自分自身がいいと思っていないなら、
テレビドラマや映画に出る資格は無いので、
そもそもオーディションなんか受ける必要も無いわけでね。
もちろん、
人として謙虚な気持ちは忘れてはいけませんが、それとは次元の違う話です。

だって、
自分がいいと思っていないものを他人に見てもらおう、なんて、
失礼だし、無責任だし、不真面目だし、
身勝手にも程がありますから、そんなの・・・。

ただ、それだけに、
自分ではいいと思っているだけに、
他人から、
否定されたり、不要とされたりしたら、悔しくて落ち込むわけでして、
そんな時のためにも、
評価してもらえたり、楽しんでもらえたりした時の喜びは、
よくシガんでおく必要があるのです。
その幸せの記憶で、苦しみを乗り越えられますからね。

これは、べつに、
役者生活に限った話でなく、
人生そのものに言える事ではないか、と思います。

人生なんて、
思い通りに行かない事が大半なのですから、
ちょっとでも嬉しい事があったら、シガまなきゃ。
そうしないと、
不満や苦痛の連続で気持ちが荒んでしまい、
感謝とか反省とかの心も素直に持てず、
それこそ謙虚な人にもなれなくなってしまいますからね。

大事ですよ、シガむ、って事は。

食事だって、
よく噛んだ方が消化に良いでしょ?

 食べる事=生きる事

ですから、
食事同様、人生も大いにシガむべきなのです。


・・・で、
『ノイズ』だけどさぁ、
僕の出てたあのシーン・・・って、もういいですか?(笑) 
失礼しました。
   
ジャーン!

シガむ、・・・つまり噛めば噛むほど、
味が出る “スルメ” に因みまして、
“イカ” の怪獣・怪人を、
僕のソフビコレクションの中から引っ張り出してみました(笑)。




今回は、この中から、
イカゲルゲのソフビをピックアップさせていただきます。
   
  今年は『超人バロム・1』の生誕50周年でもありますし、
個人的にも、
つい先日、偶然、
同世代の友人とイカゲルゲの話になり(どういう経緯でそんな話になる?(笑))、

 イカゲルゲの鳴き声は「カァ~」だった、

というその友人と、

 いや、あれは、「カ~イ(イカを反対から読んで)」と言っているンだ、

という僕とで、口論になったばかりでしたので・・・(苦笑)。


まずは、スタンダードサイズの人形から。

バンダイ製、全長約24センチ。
番組放映時(昭和47年)に発売された人形です。

以前、第54回「僕らのバロム・1」の中でも紹介しましたが、
素晴らしい造形だと思います。
 
着ぐるみを頭からスポッと被っただけの安易な姿を、
変に誇張したり歪曲したりせず、あっさり再現する事で、
実物の見た目の “安っぽさ” が、
ショッカー怪人には無い、ドルゲ魔人ならではの “旨味” として主張されているし、
着ぐるみのシワを、わざとらしくない程度にさりげなく入れたり、
頭部の触手や両腕にある吸盤を、
それこそスルメや、イカゲソの唐揚げが食べてくなるほど生々しく仕上げたり・・・、と
リアルさの追求が、デフォルメソフビが当たり前の時代において進歩的。
また、両腕の長さやうねり具合も絶妙で、
イカゲルゲという怪人の魅力を正しく楽しく伝えている、“優秀なソフビ人形” と言えます。
 



ポピー製、全長約14センチ。

これも、番組放映時に発売された人形で、いわゆるミドルサイズくらいの大きさですね。

先に紹介したスタンダードサイズの人形と同じく、吸盤の生々しさには、惚れ惚れします。
腕は可動しませんが、
実物のイカゲルゲの腕の独特な形や動きが、しっかりと表現されているし、
頭部の触手の造形にも躍動感が感じられるので、スタンダードサイズの人形と比べて、引けは取りません。

それどころか、
上半身パーツと下半身パーツのジョイント部分が、
このように上半身パーツのやや奥にあるため、
全身を
正面から見ると股間の部分が隠れて見えず、
スタンダードサイズの人形よりも
実物に近い姿をしているのではないか、
と思えるくらいです。
さすがポピー。




ふと思ったのですが、
子供の頃に遊んだソフビ怪獣人形たちを、いまだに愛し続けてる僕の行為は、
言ってみれば、
幸せな思い出をずっとシガんでいる、って事ですよね。
半世紀も経つのに、いまだに味が出るンですから、凄いオモチャです、ソフビ怪獣人形は・・・。



・・・というわけで、
ここ1ヶ月の出来事から半世紀前の思い出まで、
いろんな幸せをシガみながら、
これから、また、
“似非貴族の似非優雅” な(笑)ひとときを、楽しみたいと思います。

今日のおつまみは、
もちろん、
スルメとイカゲソの唐揚げ(笑)。
復活したアサヒ黒生で、いただきます。


それでは、また来月。
今回も読みに来て下さり、どうもありがとうございました。




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