真水稔生の『ソフビ大好き!』


第195回 「桃色の宴2020」  2020.4

今朝、露天風呂に浸かっていたら、
桜の花びらが1枚、目の前で、ひらひらと湯船に舞い落ちました。

思わず、

 「風流だなぁ・・・」

と、つぶやき、心が和み安らいだ次第です。

露天風呂の敷地の隅に大きな桜の木があり、
その散った花びらが、風に乗って飛んできたわけですが、
新型コロナウイルス感染拡大のせいで暗いニュースばかりが目立つ毎日ゆえ、
その “癒し” の尊さが、余計、身に沁みましたね。

・・・え?
朝から露天風呂なんかに浸かって花見とは、ずいぶん贅沢な暮らしだな、って?

いえいえ、
第192回「あの人、カッコいい?」で述べたように、
昨年末に自宅のお風呂の給湯器がぶっ壊れまして、
新しく買い替えるお金が無いうえ、分割払いの審査にも落ちてしまいましたので、
仕方がなく、
スーパー銭湯に通っているだけの話です。

しかも、
優雅に朝風呂に入っているのではなく、
単に、夜勤のアルバイト明けで労働の汗を流してるだけの事ですから、
贅沢の “ぜ” の字もありません。

・・・当たり前じゃないですか、そんな事。
贅沢なんか出来るわけがありません。僕を誰だと思ってるンですか!?(笑)


それにしても、
ストレスの溜まる、重苦しい生活を強いられてますよね。
精神的にも経済的にも限界があるのに
まったく先が見えず、ホント、不安で憂鬱。

感染しないため・させないため、
不要不急の外出は控えなければならない今、
気晴らしに友達と飲みにも行く事も出来ません。
せっかくの花見シーズンも、只々、虚しく淋しく過ぎていくだけです。


そこで、ふと、
以前、この『ソフビ大好き!』で、

 ピンク色のソフビ怪獣人形たちを咲き誇る桜に見立てて
 コレクター仲間と時々行っている “コレクションルームにおける花見”、

について述べた事を思い出しました。

第17回「桃色の宴」です。

15年も前に書いたものでしたが、
考えてみれば、
飲みにも行けない、花見も出来ない、というのなら、
今こそ、あの宴が真価を発揮する時。

もちろん、“3密” は避けなければなりませんので、
コレクター仲間が集まって・・・、というわけにはいきませんが、
読んで下さる人と、今話題の “リモート飲み会” でもしてる気分で
この『ソフビ大好き!』の原稿を書き進めていけば、
それは、もう、
新時代の “桃色の宴”(笑)。


というわけで、
スーパー銭湯から帰宅した今、僕はビールの栓を抜きました。
今回は、飲み会であります(笑)。

ネット上ですから、
僕がどんなに熱くしつこく語っても、
また、読んで下さる人がどんなに激しいツッコミを入れても、
唾は一切飛びませんので、お互い、飛沫感染の心配はありません。
どうぞ安心して、
この宴に御参加(笑)下さいませ。

では、早速始めましょう! カンパーイ!


 
   


まずは、やっぱり、
このピンクのドドンゴから鑑賞。
15年前の第17回「桃色の宴」でも紹介しましたが、
花見と言えば、これなのです。 

マルサン製、全長約20センチ。

昭和40年代初頭に売られていたソフビです。
マルサンおよびマルサンの金型を流用したブルマァクを通して、
いろんなカラーバリエーションが存在するスタンダードサイズのドドンゴ人形ですが、
その中でも、
実物のドドンゴのイメージを一切無視したこの彩色の人形は、特筆に値します。  
   
『ウルトラマン』第12話「ミイラの叫び」に出てきたドドンゴという怪獣を
玩具・人形にするにあたって、
いったい、何をどうしようと考えたら、“ピンク” なんて発想になるのか・・・(笑)。

まぁ、単に、

 オモチャ屋さんの店頭で見栄えがするように・・・、

と選んだ色なンでしょうけど、インパクトがあまりに強烈なのです。

芸術的な造形も相まって、
もう、実物のドドンゴが何色か、なんて、どーでもいいと思えるほど(笑)、
その鮮烈な美しさが、感受性を揺さぶってくれます。
 
   

また、
第76回「ミキティーーーッ!」の中でも述べましたが、
マルサンドドンゴのいちばんの魅力は、
この、少しだけ膝を曲げて踵を浮かせた左足の色気。
躍動感の中に、なんとも生々しい仇っぽさが漂っていて、
絶妙な味わいなのです。

特にピンクのドドンゴは、
色が色だけに、もう、フェロモン出しまくり(笑)。
 
昔、付き合ってた彼女が、
バスタオルを体に巻いて風呂から出てきた際、

 「ちょっと、左足のかかと上げてみて」

って、このドドンゴ人形の足のポーズをお願いした事がありました(笑)。

意味も解らず応じてくれた彼女でしたが、
ニタニタしながらそれを眺めるだけの僕を見て、

 「何がしたいのぉ~」

って笑ってました。 

可愛かったなぁ・・・(遠い目)。
 

 ・・・あ、失礼しました(汗)。
   

話を戻します。

このお花見のドドンゴ人形、
こんな、

 ピンクと緑の反転ヴァージョンも存在する、

ってのが、
また、なんとも楽しいじゃないですか。
  ピンクが多い方は、満開の桜、
  緑が多い方は、散り始めの頃、あるいは少し早めの新緑、
  といった趣で、
  両者とも、誠にもって風雅。

思うに、これも、
単に、
塗装担当者のその時の気分か、または、塗料の残量の都合か何かで、
安易に反転させただけの事なンでしょうけど、
まるで、

 将来、子供たちが大人になったら、この2体を肴にしてお酒が飲めるように・・・、

と “花見” を意識して、狙って塗装してくれたかのよう。 ホント、綺麗です。 
     
鮮やかで華やかで、色香さえ漂って・・・。

どうです、たまらないでしょ?

お酒に酔う前に、
この人形に酔いしれますね、僕は。
     
その昔、マイホームを建てる事になった際、
コレクションルームに、
設計士さんは、
“おしゃれでリラックス出来る部屋” というイメージで
温白色の照明を提案して下さったのですが、
僕は、それを断り、
もっと明るい昼光色の照明を・・・、とお願いしました。
何を隠そう、
この2体のドドンゴの眩いまでの美しさを
存分に味わいたかったからです。

まぁ、離婚によって
そのマイホームはたった4年で手放してしまいましたので、
そんなこだわりの明るい照明も
すぐに消えてしまいましたけどね・・・(苦笑)。

さて、次は、
ピンク色した女性のキャラクターのソフビを、紹介させていただきましょう。
やっぱ、酒の席には女っ気も無いとね(笑)。


花忍キャプター3

ポピー製、全長約13センチ。

昭和50年代初頭に放送されていた『忍者キャプター』に登場する、
7人組主人公の中の紅一点。 

ミニサイズなので、
額についている花のマークの大きさが、
ちょうど、
今朝、露天風呂で僕の目の前に舞い落ちた桜の花びらを思い起こさせます。
僕をこの宴に導いたのは、花忍、君だったのか・・・(笑)。




番組を観てた人には説明不要ですが、
花忍は、
初代と2代目、二人います。
海外に留学するため初代の桜小路マリアが去った後、
天堂無人(忍者キャプターを組織した師匠)の孫娘・美樹が、
2代目を襲名したのです。
演じられていた女優さんの個性も
影響してたとは思いますが、
初代花忍は、明るく活発な女性、
2代目花忍は、お淑やかで可愛らしい女性、
って感じでしたね。

どちらも素敵な女性でしたが、
そんな実物の魅力に
人形の方も負けていません。

見て下さい、この、
申し訳なさそうなお尻の割れ目の線、
甘いキャンディのような太腿・・・、
そそるでしょ?
舐めまわしたいでしょ?(笑)

顔が、こんな “のっぺらぼう” みたいになっている理由は、
被ってる仮面の、
スモークフィルムの開閉シールドを、下げた状態(戦闘態勢)で人形化されているから。 

顔が見えない状態なわけですから、
初代花忍としても、2代目花忍としても、遊べますね。

・・・まぁ、
昭和のオモチャですから、
シールドを上げた状態で顔が描かれたところで、
初代か2代目かは、判別不可能だったと思いますが・・・(笑)。 
・・・そういえば、
この顔の部分のシールドですけど、
コロナ対策としてドクター中松さんが開発された “スーパーメン” を彷彿とさせますよね。
花見の “花” で思い出した花忍でしたが、
忍者キャプター、って、
なんだかタイムリーな仮面、被ってたンだなぁ・・・(笑)。 


では、
続きましてもう1体、女性のキャラクターの人形を・・・。


モンロ
 
ブルマァク製、全長約7センチ。

昭和40年代後半に放送されていた『クレクレタコラ』に登場する雌怪獣です。

 ・・・え?
女性ですよ、女性(笑)。

だって、
不思議の森(タコラたちが暮らしている世界)の
アイドル的存在でしたし、
「ウッフ~ン」って言いながらお色気振りまいて、
タコラなんかメロメロにされてましたから。
        両手を胸のところで合わせているポーズや
パッチリ目をした顔の表情の可愛らしさが、
甘く薫るようなピンクによって、際立っています。

この娘に恋い焦がれたタコラの気持ち、
解るような気がするなぁ・・・(笑)。


      ・・・ペットとして飼いたい(笑)。 

そして最後は、
これ、ピンクのアボラス
マルサン製、全長約22センチ。

最初に紹介したドドンゴ人形と同じで、
昭和40年代初頭に売られていたソフビですが、
いくら、
オモチャの人形はデフォルメ造形が当たり前の時代で、
実物の怪獣の姿形や色を忠実に再現する概念が無かった、
とはいえ、
劇中、
赤い
色の怪獣バニラと闘う青い色の怪獣アボラスを、
ピンクの人形(つまり赤い人形)にしちゃう、っていう暴挙(笑)には、
絶句してしまいますね。

15年前の第17回「桃色の宴」の最後でも述べてますが、
幼い頃に、近所のオモチャ屋の店頭で、

 「なんでアボラスがピンクなんだ」

と怒っている子と遭遇した事を憶えています。 
そんな、
『ウルトラマン』を夢中で観ていた僕ら子供たちからしたら、
ありえない彩色だったこのアボラス人形も、
ピンクのドドンゴ人形と並んで、今では、雅やかな癒しソフビの最高峰。

見て下さい、この顔・・・。 福笑いか!(笑) 

どんなに不愉快な時も、
この人形と目が合った瞬間に気持ちがほぐれます。
そして、その和らぎを、ピンクが更に甘く柔らかく演出。もう、無敵のほっこり感です(笑)。

バニラも、
これには思わず戦意消失し、
劇中とは異なる理由で、人形バトルの世界においてもアボラスに敗れ去るに違いありません(笑)。

これまた
どーでもいいですよね、実物のアボラスが何色か、なんて事・・・(笑)。
超越しちゃってますもの、そんな次元は。

やっぱり、
ただ子供が無邪気に遊ぶためだけでなく、
大人になったら、これを眺めて愉快な酒が飲めるように・・・、と
わざと数奇な人形を作ったとしか思えません、マルサンは。

ただ、
こんな顔をしていますので、
美しくカッコいいドドンゴ人形とは対照的な造形、と言えます。

それだけに、
違うタイプの造形、それぞれに応じた魅力を発揮した “ピンク” という色の奥深さを、感じずにはいられませんよね。
   
 
アンティークソフビにおけるピンクの彩色は、

 もはや魔法だな、

って、改めて思います。 


 ・・・さて、
いかがでしたでしょうか、“リモート飲み会” 気分の “桃色の宴”・・・。

・・・え?
酒を飲みながら
コレクションのソフビを眺めて、勝手な事言ってるだけだから、
いつもの『ソフビ大好き!』となんにも変わらないじゃないか、って?

ハハハ。
まぁ、そうなンですけど、
僕としては、
読んで下さる人と繋がってる “ライブ感” みたいなものをイメージしながら、

 苦難の毎日だけど、
 嘆かず、怒らず、腐る事無く笑顔で生き抜こう、

って意識を改めて確認し合うつもりで書きましたので、
その思いが少しでも伝わっていると、嬉しいです。


今回も、最後までお付き合いいただき、どうもありがとうございました。
では、また来月に・・・。


それにしても、
世界中の人がこんな笑顔で過ごせる日常が1日でも早く還ってくる事を、願って祈って、そして信じてやみません。
     




【おまけ】

https://www.youtube.com/watch?v=JXAK7APCMFc

事務所の所属タレント陣によるメッセージ動画です。
もちろん、僕も参加してますので、
どうか御覧下さい。





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