真水稔生の『ソフビ大好き!』


第182回 「ウルトラまんタロウ」  2019.3

差し入れで饅頭をいただいたのですが、
僕が個人的にいただいたものであるにも関わらず、
ちょっと目を放した隙に
共演者(同じ事務所の先輩たち)に全部食べられてしまい(治安の悪い楽屋だ(笑))、
仕方が無いので、
仕事終わりに和菓子屋さんに寄って、自分で買って帰ってきた今日この頃です。

・・・なんか、
意地でも饅頭が食べたくなってしまったのです(笑)。


以前、第138回「抹茶と和菓子、ウルトラマンと怪獣」でも述べたとおり、
そもそも僕は和菓子が好きなのですが、
その中でも特にお気に入りなのが、この、大島饅頭。 



黒砂糖とあんこが絶妙に絡み合ったコクのある甘味が、
なんとも優美で濃厚で、たまらないのです。
食べる度に、

 あぁ、日本人で良かったぁ・・・、

って、しみじみ思いますね。

大島饅頭の “大島” は、
黒砂糖の生産地である “奄美大島” から来ているそうで、
味に直結したそんな名前からして、すでにもう、美味しいのです(笑)。
ホント、大好き。

けれども実は、
“大島饅頭” というのは別名で、
茶人の千利休が好んでお茶会の際に出していた事から名付けられた、
“利休饅頭” と呼ぶのが、主流のようです。

利休饅頭・・・。 う~ん、どうなんですかね、これ。

古典落語に出てくる、
灯し油を内側に塗った茶碗で固めて抜いた饅頭もどき(ってか毒饅頭)を
思い出してしまって食欲が失せるのは、
僕だけでしょうか・・・。

ペスターやタッコングやオイルドリンカーといった連中なら、
そんな油臭い饅頭でも、逆に食欲が湧いて、喜んで食べそうですが・・・(笑)。


・・・あ、そういえば、
ウルトラマンタロウ、って、
『ウルトラスーパーファイト』の中で、

 「俺は、弱い者いじめが饅頭の次に大嫌いなんだっ!」

って言ってましたけど、
正義のヒーローが弱い者いじめよりも嫌うのですから、余程の事ですよね(笑)。

もしかしたら、
M78星雲ウルトラの星にも、
あの落語に出てくるような
茶会で毒饅頭を振舞う御隠居さんがいて、
フツーの利休饅頭だと思ってひとくち食べて吐き出した経験がタロウにもあり、
それがトラウマになっているのかもしれません(笑)。
      本当の利休饅頭(=大島饅頭)は、こんなに美味しいものなのに、
可哀想な事です、まったく。


それでは、
そんな憐れみの気持ちも込めまして(笑)、
今回は、
ウルトラマンタロウのソフビを、いくつか紹介します。

すべて、
ブルマァクから発売された、『ウルトラマンタロウ』放映当時の商品です。

       
 

まずは、
スタンダードサイズ。
全長約23センチ。




なんだか妙に “頭でっかち” ですが、
その理由は、
マスク着脱式の仕様になっているから。

当時、ヒーローのソフビは、ほとんどがこの仕様だったのですが、

 流行った、

と言うよりは、

 マスク着脱式の仕様にすれば子供が喜ぶ、と
 勝手に大人たちが思い込んでいた、

って言った方が正確だと思います。
              第23回「温かいヒーロー」の中でも述べた事ですが、
マスク着脱式の、
タイガーマスク人形(中嶋製作所製)や
仮面ライダー人形(バンダイ製)が大ヒットしたので、
それを安易に真似したンですよね、ブルマァクは。

けど、
人間がマスクを被っているキャラクターであるタイガーマスクや仮面ライダーだからこそ、
その人形の、
マスクが取れて下から人間の顔が現れる、って事に意味があり支持されたわけで、

 ヒーローなら何でもかんでもマスク着脱がカッコいい、

ってものではありませんから、
こういった、
ウルトラ兄弟をはじめとする、仮面ヒーローではないキャラクターの
マスク着脱式タイプの人形に対しては、

 違うのになぁ・・・、解かってないなぁ・・・、

って、 
子供の頃、ずっと思ってました。
  円谷英二さんは、
新聞や雑誌の取材の際、

 子供の夢が壊れるから・・・、

という理由で、
スーツアクターがマスクを外してる写真は
絶対に撮らせなかったそうですから、
子供の夢を育むはずのオモチャがそれに反していては、
台無しだと思うンですけどねぇ・・・。
  こちらは、
ちょっと大きい550円サイズ。
全長約33センチ。
       頭部になんか違和感があるなぁ・・・、

と思ったら、
やはり、マスク着脱式・・・。

だからさぁ~、

 ウルトラマンタロウは仮面ヒーローじゃない、

って言っとるのになぁ、もぉ~(怒)。 

しかも、
現れたのが
こんな、整ったきれいな顔なので、なんか、かえって余計に腹が立ちます(笑)。
 
でも、実は、
マスク着脱式は、まだマシな方なンです。
マスクを外す事さえしなければ、夢が壊れる事なく、フツーに遊べますから。
     
  どうにもし難いのが、
第44回「お母さん」の中でも紹介した、この仕様。
全長約19センチ。

顔の部分が大きくくり抜いてあり、見た目が明らかに変。
でもって、
頭部をつまんでクルリと回すと、このとおり、人間の顔が現れるのです。
   
  ・・・もう、脱力してしまいます(笑)。

こんなヒーロー人形が
子供たちに喜ばれてたくさん売れる、と
当時、ブルマァクの人たちは、真剣に思っていたのでしょうか・・・。
それも、
他社がジャンボマシンダーとか超合金とかを爆発的に売りまくってる時代に・・・。
信じられません。


とはいえ、
50代も半ばにさしかかった今、
この人形がふと目に入ると、なんだかホッとして気持ちが休まる事があります。

美意識が、子供の頃とは違ってるのでしょうね。

・・・ん?
まさか、ブルマァクは、
ソフビ人形で遊んでいた子供たちが
将来、疲れた大人になるであろう事を見越して、
その時に心を癒したり元気づけたりしてあげられるように・・・、と
採算度外視でこれを後世に残してくれたのでしょうか・・・。

だとしたら、実に素敵なメーカーではありませんか。


・・・と、まぁ、
そんな冗談(っていうか厭味(笑))はさておき、
人間の顔なんか現れない、ちゃんとしたウルトラマンタロウ人形も、
ブルマァクは何種類も発売してくれていたので、
名誉のために(笑)、
そちらも紹介させていただきましょう。
     
 
これは、
“新スタンダードサイズ” とでも言うべき大きさ(全長約19センチ)の人形で、
ガッと足を開いて踏ん張り、
ファイティングポーズをとっているような見た目が楽しめるタイプ。
タロウのソフビでは、
僕はこれがいちばん好きです。

顔の表情が
爽やかで親しみやすく、
“健全なオモチャ感” に溢れながらも、
全体的にスマートなフォイルムゆえ、
実物のカッコいいイメージを
決して崩壊させていませんからね。





 
      いかにも、

 “強くて優しいヒーロー”

って感じ。


やっぱ、ヒーローのソフビは、こうでなくちゃ。 






     
     
 
こちらは、ミドルサイズ。
全長約16センチ。
     
  本棚の片隅とかパソコンの横とかに飾っておくと、
可愛らしくてちょうど良い大きさなので、僕は食卓に置いてみました。  
 
    僕 「絶対、美味しいで、
     騙されたと思って、いっぺん食べてみやぁ!」

 タロウ「要らん! 嫌いだ、って言っとるがや!」



・・・いやぁ、
なんて素敵なティータイムなのでしょう(笑)。 
     
     
 
ほかのウルトラ兄弟たちの人形とセット売りだった、ジュニアサイズ。
全長約12センチ。
肘や膝が
絶妙な角度で曲げて造形されているので、
こんな小さなサイズの人形でありながら
カッコいいファイティングポーズもとれますし、 
このように、

 「やぁ、兄さん!」

って、
ゾフィーたちに挨拶している状態も楽しめます(笑)。
       
       
  ストリウム光線のポーズ・・・ではないですね、これは。

 はて? こんなポーズで繰り出す光線技、あったかな?

・・・という、よく解らない謎の人形です(笑)。
全長約12センチ。

 いったい何をしている時のタロウなのか、

御存知の方がいらっしゃいましたら、どうぞ御一報をお願いします。 
       
  そして、
同じ型で、こんな塗装違いヴァージョンも・・・。

赤の成形色にゴールドを吹いただけの、
雑な仕上がりですが、
全身にみなぎる真っ赤な闘志が神々しく輝いているようで、
ちゃんと塗装がしてある前者よりもカッコよく見える、奇跡の人形です(笑)。
 


それにしても、

 “饅頭が嫌い”

って、
『ウルトラマンタロウ』という本来の作品の中ではなく、
20年以上も後に作られたオリジナルビデオの中で、いわば勝手に語られただけなのに、
なんだか、
元々あった設定みたいで、妙にハマりますね、タロウのキャラクターに。
ゾフィーやセブンなら、
絶対に言わないですから、そんな事(笑)。


あぁ、そういえば、
タロウ、タロウ、って当たり前のように言ってますけど、
よくよく考えてみると、
桃太郎とか浦島太郎とかの “太郎” を
“ウルトラマン” にくっつけるネーミングセンス、って凄いですね。
凡人には出せないアイデアだし、
また、それに「OK」を出した判断も、素晴らしいと思います。


・・・あれ?
そうなると、
せっかく名前にそんな “和” の要素がある国民的ヒーローが
和菓子の代表格である饅頭を嫌いじゃあ、
カッコつきませんねぇ・・・。

 キャラクターに妙にハマる、

なんていって笑って許しておかないで、やっぱ饅頭を食べてもらいましょう、タロウには。

子供たちが憧れる存在なンだし、
12000歳、なんていう、いい歳した大人なンですから(笑)。
 








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