真水稔生の『ソフビ大好き!』



第175回 「僕の猛暑対策」  2018.8

それにしても暑いですねぇ・・・。

扇風機をかけっ放しにして寝ると死ぬ、
ってよく言われますが、
エアコンがぶっ壊れて使用不可な我が家では、
逆に、
扇風機をかけっ放しにして寝ないと死んでしまう(苦笑)、今日この頃です。

いやぁ、本当に暑い。暑すぎる。

夏が好きな僕でも、さすがに応えます、この暑さは。
なんたって、
我が名古屋市の気温が
観測史上初の40℃を突破したというのですから、
尋常ではありません。

例年どおり、
ビールとガリガリ君で明るく元気に過ごそうとしましたが、
どうやらそんな次元の夏ではないようで、
体力がめっきり衰えてきた50代半ばの身の上、

 ぶっ倒れてしまうかも・・・、

と少し焦りました。

     


でも、大丈夫。
時代劇専門チャンネルで始まった『白獅子仮面』の再放送が、
そんな不安を吹き飛ばしてくれました。

毎週2話ずつの放送が楽しみで楽しみで仕方なく、
その浮き立つような思いが、
衰えてきた体力をカバーしてあまりある気力・活力となり、
猛暑にも負けないエネルギッシュな “僕” を、形成してくれているのです。

・・・『白獅子仮面』、
好きだったンですよねぇ、子供の頃、あの番組が。

昭和48年(僕が小学3年生の時)に
日本テレビ系で放送されていた特撮ヒーロー時代劇なンですけど、
惹かれた理由は、
“カラカサ小僧” や “のっぺらぼう” といった、
大好きな妖怪たちが出てくる事と、
白獅子仮面に変身する主人公・剣兵馬(演ずるは三ッ木清隆さん)が
大岡越前の武装同心隊の隊長である、という設定。

以前、第7回「妖怪のように美しく」の中で述べたように、
僕は、“妖怪” というものに対し、

 大人も認める、
 “怪獣” よりも次元が上のモンスター、

という認識を持っていたし、
物語の中に大岡越前も出てくる事から、
ドラマの世界観に、

 なんだか大人っぽくてカッコいいなぁ・・・、

って印象を抱いたンですよね。

なんたって、
『ウルトラマンタロウ』がイヤでウルトラシリーズを観なくなった年ですから、
いくら変身ヒーローものが好きだといっても、

 幼稚な番組なら観ないぜ、

って子供なりに思っていた時期なンです(笑)。

なので、
大人が観ている(ような)時代劇に渋い妖怪が出てくる『白獅子仮面』を、
断然支持した、という次第。

ただ、
一般的にはあまり人気が無く、
クラスで『白獅子仮面』を観ていたのは、僕ともう1人だけでした(哀)。

休み時間に、
そのクラスメイトと2人して、

 なんでみんな観ないンだ!?

って思いを込めながら、

 ♪ カッチンカチャリコ ズンパラリン
 ♪ カッチンカチャリコ ズンパラリン
 ♪ 光が消えたら真っ暗闇だぁ~

って、必死に歌っていた事を憶えています。



いやぁ、でも、
大人になってから観ても、充分面白いですね、『白獅子仮面』は。

展開にテンポがあるので、観ていて小気味良いですし、
何より、
子供に媚びていないところが好きです。

主人公・白獅子仮面の顔の造形が、
出てくる敵の、どんな化け物よりも不気味で怖い事とか、
クライマックスのバトルシーンが、
特に何か派手な必殺技の炸裂でケリがつくわけでなく、
フツーに繰り広げられた殺陣がフツーに終わっていく事とか、
こういう言い方はおかしいかもしれませんが、
“視聴者である子供たちを子供扱いしていない” ンですよね。

カット割りも丁寧で細かくて、
“ちゃんとした時代劇” として好感が持てますし・・・。

第9話の、
大炎上する藁の山をバックに
白獅子仮面と藁のお化けの本体(全身黒タイツの男)たちが闘うシーンなんて、

 観ているちびっ子たちを喜ばそう、

というよりは、
純粋に、

 カッコいい殺陣の “画(え)” を撮ろう、

としているスタッフの姿勢が感じられて、
小学3年生の時に抱いていた番組に対する “大人っぽい” という印象が
間違いではなかった事を、はっきりと確認出来ました。

猛暑を憂惧するエリアなど、僕の心にはもうありません。
もう、毎週、
只々ワクワクしています。本当に楽しみ。


でも、ただ、ひとつ、
回を重ねる毎に、
胸の中にモヤモヤしたものが沸いてきているンですよね。

それは、
劇中で大岡越前の妹・縫(ぬい)を演じていらっしゃった、
瞳順子さんに関する事です。

瞳順子さんは、
特撮ファンなら御存知のとおり、
『ウルトラマンA』のアプラサールの回に
天女役で出演して女優デビューを果たした方ですが、
僕ら名古屋っ子には、
『白獅子仮面』とほぼ同時期に放送が始まった、
名古屋テレビ(現在のメ~テレ)製作の
『ブンブンバンバン』の “お姉さん” としても、馴染み深い存在であります。

 ※『ブンブンバンバン』とは、
  ブンブン(蜂のキャラクター)とバンバン(熊のキャラクター)を
  マスコットにした子供向けバラエティ番組
  (要は、『おはよう!こどもショー』や『ひらけ!ポンキッキ』みたいなヤツ)です。

・・・で、
何がモヤモヤか、といいますと、
『白獅子仮面』の放送が終了してしばらくしてから、
名古屋市内の平和公園というところで開催されたイベントで、
実は僕、
瞳順子さんに直接会っているはずなンですが、
子供の頃のアルバムを開いてその時の写真を観ると、
“瞳順子さん” を確認出来るものが1枚も無いのです。

記憶の中では、

 あれは絶対に瞳順子さんだった、

のですが、
40年以上昔の事なので、
証拠になる写真が残っていないと、

 あれ? 記憶違いかな・・・?

なんて思って、言い切る自信がなくなっちゃうンですよね。
それがモヤモヤなんです。


そのイベントは2部構成で、
第1部が『がんばれ!!ロボコン』ショー
(ロボコンとロボペチャとガンツ先生が来てました)、
第2部が『ブンブンバンバン』ショー、
といった内容でした。

イベントが始まる前に、
公園内で家族と一緒にいるところを、

 「キミ、よかったら、『ブンブンバンバン』ショーに出ない?」

って、
イベントスタッフの方に声をかけられまして、
第2部の『ブンブンバンバン』ショーに出る事になったンです。

で、第1部の『がんばれ!!ロボコン』ショーが終わった後、
舞台の裏に設置されたテントの中で待機していると、
いつもテレビで観ているお兄さん(名前はわかりません)が、

 「やぁ!こんにちは!」

って現れて、
その後ろから、
今度はお姉さん(・・・そう、瞳順子さんです)が現れて、
僕らに微笑みかけました。

簡単な打ち合わせの際に、
直接、話もしたし、
ショーの時には、
ステージの上で一緒に歌ったり踊ったりもしたので、
間違いないはずなのですが、
無いンですよね、それを証明する写真が・・・。


法被を着ているのが、
スタッフに声をかけられ集められた、僕ら一般来園客の子供たち。

ブンブンとバンバンの向かって右隣、3人の子供の真ん中が僕。

お兄さんのとなりの女性は、
見て判るとおり、瞳順子さんではない、別のお姉さん。

白いワンピースにハイソックスのお姉さんは、
ヤングフレッシュ(主にアニソンなどを歌うコーラスグループ)です。
番組のレギュラーだったンですけど、
このイベントには4人編成で来ていて、
ショーの最後で
『霧雨のシンデレラ』という持ち歌(?)を披露していました。
その時、偶然にも本当に霧雨が降っていたので、よく憶えています。
 
   
唯一、瞳順子さんではないかと思われるのが、
舞台のいちばん前にいるお姉さんなのですが、
この写真の鮮明度では判別不可能ゆえ、断言を躊躇。
しかも、
YouTubeにアップされてる『霧雨のシンデレラ』の映像に
レコードジャケットの画像が使われているのですが、
そこに、
瞳順子さんじゃないお姉さんが、
この写真と全く同じ服を着て写っているので、さらに逡巡。

イベントに来てたのは
そのレコードジャケットのお姉さんであったにも関わらず、
『白獅子仮面』が大好きだった僕は、
それを、
 瞳順子さんだった、
と思い込んでしまっているだけかもしれないのです。
 

今となっては、
事実を確認する術がありません。
毎週2話ずつの『白獅子仮面』再放送を観ながら、

 あの時のお姉さんは、本当に瞳順子さんだったのだろうか・・・、
 どうせなら、
 
  「子供の時に『白獅子仮面』の縫さんに会った事がある!」
 
 って、はっきり言い切りたいのになぁ・・・、

などと思いながらモヤモヤしている、というわけなのであります。



さて、
ソフビですが、
『白獅子仮面』関連のソフビも
『ウルトラマンA』のアプラサールのソフビも、 
残念ながら当時は発売されておらず、コレクションのしようがありません。
なので、
無理矢理ではありますが、今回はこれにしました。

ジャーン!
蜂女ベアーコンガーです。

ブンブン(蜂)とバンバン(熊)を
ショッカー怪人に当てはめてみたわけです(笑)。

ただ、
蜂女人形は、以前にも取り上げていますので、
特にこちら、
ベアーコンガー人形の方を、詳しく紹介させていただきますね。

ポピー製で全長約11センチ、番組放映当時の商品です。


ベアーコンガーは、
『仮面ライダー』第46話
「対決!!雪山怪人ベーコンガー」に登場した熊の怪人ですが、
両肩のトゲや、
スキーゴーグルのような目(スキー場に現れる怪人だからか?(笑))など、
熊の怪人とは思えぬ容姿が、
いかにもショッカー怪人、って感じで、僕は好きですね。
これが
『超人バロム・1』のドルゲ魔人や
『人造人間キカイダー』のダークロボットだったら、
そのまんま熊の姿形をした、
それこそバンバンみたいな造形だったと思いますから。
もちろん、
ドルゲ魔人もダークロボットも魅力的なのでリスペクトしてますが、
『仮面ライダー』を崇拝する僕にとって、
ショッカー怪人は、
やはり特別な存在。他作品の敵キャラとは、格が違うのです。

このソフビは、
そんな僕の愛情や肩入れが
裏切られる事無く造形されているので、愛しくてたまりません。
ベアーコンガーの不気味さや迫力が、きちんと表現されているのです。 
 
 
・・・え?
スキーゴーグルのようなモノアイの目を
複眼みたくしちゃってるところが、粗雑でチープじゃないか、って?

いえいえ、そんな事はありません。
これは、
にらみ合っているライダーの目が映っているのですよ(笑)。

いえ、
冗談でなく、
いかに実物に似ているか、って事にしか価値が無い平成のソフビと違って、
昭和のソフビは、
それを手にして遊ぶ子供たちの想像力によって、価値が無限に広がり高まるオモチャ。
夢見て空想して、自由に解釈する事が “正解” なのです。

それに、
ベアーコンガー自体が、
肩にトゲとか
それこそスキーゴーグルのような目とか、
熊というモチーフから
イメージを自由に膨らまして出来上がったデザイン・造形をしているのですから、
その人形で遊ぶなら、
同じようにイメージを膨らませて楽しまなきゃ。
どこが実物と違っているか、なんて粗探しみたいな真似してても、無意味で退屈なだけです。


それにしても、
ベアーコンガーがバンバンと同じ動物をモチーフにしているとは、到底、思えませんね。
面白いものです。

・・・あ、思い出した!
そういえば、
『ブンブンバンバン』が終了した後、
同じく名古屋テレビ制作で、
大野しげひささん司会の『マゴベエ探偵団』という視聴者参加型の推理クイズ番組があったのですが、
バンバンの方のみ、
そちらにも、マスコットキャラクターとしてレギュラー出演してました。
そうだ、そうだ、そうだった!

で、その『マゴベエ探偵団』の主題歌、
なんと、
子門真人さんが歌っていらっしゃったンですよねぇ。

 ♪マゴマゴマゴマゴGO!
 ♪それ行けそれ行けGO!
 ♪急げマゴベエ~たんていだぁ~ん

・・・って、
当時名古屋に住んでた人(しかも僕と同世代)しか知らない歌ですよね。失礼しました(汗)。

でも、なんか、
ブンブンとバンバンをショッカー怪人に当てはめた事、
ここへきて、にわかに必然性が出てきました(笑)。


・・・『マゴベエ探偵団』かぁ、懐かしいなぁ。
確かクラスメイトの女の子が応募して、回答者として出た事があったンだよなぁ・・・。

って、
「知るかぁ!」ですよね。スミマセン、これまた失礼しました(苦笑)。


とはいえ、
こうやって子供の頃を振り返りますと、

 ずいぶんと長い月日を生きてきたンだなぁ・・・、

なんて、
自分の年齢を改めて実感してしまいます。
歳をとりました、ホント(しみじみ)。

以前、第166回「鮮明なのに曖昧な記憶」の中でも述べましたが、
人間の記憶なんて、
時が経てば経つほど事実から遠ざかっていくし、
何かの弾みで事実をすり替えてしまっている事だってあるので、
50歳を過ぎたような大人が子供の頃を思い出せば、
当然の事ながら、
今回の瞳順子さんの件のようにモヤモヤが付き纏います。

でも、
それでも、
幼い頃の記憶を辿るという行為は、
懐かしさがジ~ンと胸に沁みて涙腺を緩ませたり、
今まで無事に生きてこられた感謝の気持ちを呼び覚ましたりしてくれるので、
自ずと “生きる喜び” が湧いてきます。
それが、気力・活力に繋がるのです。
少なくとも、僕はそうです。

モヤモヤや曖昧で構いません。
夢見る少年時代に思いを馳せれば、心はいつも元気。

夏バテや熱中症の予防には、
しっかりとした食生活で
水分や塩分を充分に摂る事が不可欠ですが、
それだけでは少し不安な、一筋縄ではいかない今年の夏、
『白獅子仮面』の再放送のおかげで、
僕は
瞳順子さんから『ブンブンバンバン』、そしてベアーコンガー、
最後には『マゴベエ探偵団』まで思い出し、万全の猛暑対策が取れた気がしています。

子供の頃の思い出に、感謝。




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