真水稔生の『ソフビ大好き!』


第115回 「仮面ライダーの顔・その2」  2013.8

前回の続きで、
ソフビ人形を用いて綴る、仮面ライダーの “顔” の魅力。
今回は、
初代(1号&2号)以外の仮面ライダーについて。
ただ、
今や数え切れないほどいる仮面ライダーを全員取り上げるのは大変なので、
特にその顔から受けたインパクトが個人的に強いものを、選ばせてもらう事にする。

では、
まず、昭和のライダーから・・・。

   仮面ライダーアマゾン 
   




バンプレスト製
ビッグサイズソフビフィギュア、
全長約25センチ。
平成21年発売。
   初代(1号&2号)以外のライダー、といって僕が真っ先に頭に浮かぶのは、
 やっぱ、アマゾン。
 大好きなヒーローである。
 
 仮面ライダーアマゾンは、
 バッタの改造人間ではなく、オオトカゲの化身。
 マスクデザインは、
 トカゲのイメージをモチーフにしながらも、
 やはり仮面ライダーシリーズという事で、初代のバッタの要素も基本として残してあり、
 そこが凄いと思う。
 ただトカゲを基にデザイン・造形するよりも難しい作業だったと思うし、
 従来のライダーの球形顔から変化させた、
 この矢尻のようなフォルムは、奇跡の完成度。
 しかも、
 美しさと激しさが同時に感じられる赤い模様が、
 芸術的な感動を見る者に与える。
 実に魅力的な “顔” である。

   仮面ライダーをよく知らない人たちからは、
 “異彩を放つ奇抜なライダー” と捉えられがちなアマゾンライダーだが、
 第21回「仮面ライダーシリーズの底力」でも述べたように、
 歴代ライダーの中では、
 野性味や孤独感など、初代のライダーに最も近い個性を持っている。

 怪奇アクションドラマとしての原点回帰を図った作品世界の、
 まさに “表象” と言うべきこの顔の造形には、
 仮面ライダーというヒーローの本質が表現されているのだ。
 アマゾンとは、そんなライダー。
 なので、
 アマゾンを好きじゃないという人と仮面ライダーの話をしても、僕はイマイチ楽しくない。

   
これは、
放映当時(昭和49年10月〜50年3月)に
発売されていたソフビ人形。

バンダイ製 スタンダードサイズ、全長約24センチ。

 
顔の色がクラッシャー(顎)の部分だけ変えてあったり、
全身の模様が黄色と赤で二重に塗装してあったり・・・、と
実物に似せる事よりも
オモチャとしての見映えを優先して
ソフビ人形が作られていた時代の
懐かしく温かい空気を、強く感じる一品である。



   仮面ライダーストロンガー 
   



バンプレスト製
ビッグサイズソフビフィギュア、
全長約37センチ。
平成15年発売。
   内臓の代わりに
 高性能発電装置が埋め込まれている電気人間・仮面ライダーストロンガーは、
 痛快明朗なヒーロー像を目指した7番目の仮面ライダー。
 その容姿は、
 まるでアニメキャラクターのごとく派手なカラーリングや
 胸に描かれた大きな “S” マーク などから、
 実写ドラマの主人公としては
 リアリティが欠如している印象を受けなくもないが、
 明るいメジャー感と力強さが感じられるマスクが、
 子供に最も人気のある昆虫・カブトムシをモチーフにした事の成功を、鮮やかに証明している。
 それに、
 これもアマゾン同様、
 “初代のバッタの顔を変形させながら” のカブトムシだから、
 そのデザインには奥深さが感じられる。 


     
放映当時(昭和50年4月〜12月)の人形は、こちら。

バンダイ製 スタンダードサイズ、全長約25センチ。


リアリティが無い、と先ほど述べた、
派手なカラーリングや胸の “S” マークだが、
オモチャになると、その華やかさが見事に活きてくる。
当時、僕はもうソフビ人形で遊ぶ年頃ではなくなっていたが、
この人形が
オモチャ屋さんの店頭で子供たちの目を惹いた事は
容易に想像出来る。



   仮面ライダースーパー1
     





バンダイ製 ソフビ魂、全長約17センチ。
平成18年発売。
   宇宙開発のために創造されたサイボーグである仮面ライダースーパー1は、
 スズメバチをモチーフにマスクがデザインされているため、
 史上初の、吊り目をしたライダーとなった。
 メカニック性重視の設定に、この吊り目は絶妙にマッチ。
 
 シリーズ屈指の名曲である主題歌とともに、
 仮面ライダーというヒーローの美しいまでのカッコよさを
 ファンの心にアピールし続けるスーパーライダー、それがスーパー1である。


      放映当時(昭和55年10月〜56年9月)の人形もカッコいい。

ポピー製 スタンダードサイズ、全長約29センチ。


顔も実物にかなり近く、シャープな印象を受けるし、
スーツやブーツに “しわ” が表現されているし、
全体的なバランスも良い。
ソフビ人形の造形が
リアル志向の時代に近づいている事がよくわかる一品だ。

手が異常にデカいが、
これは、脱着可能な手袋をはめているからである。
        スーパー1は、
      ファイブハンドなる5種類の腕(手袋)を装備しており、
      人形にも、
      それを付け替えて遊べるように、手袋が3種、付属していた。
               
        5種類すべての手袋が付属していないところが、なんとも昭和の玩具だが、
      気が利かない、という見方がある一方、
      足りない残りの2種は想像を働かせて補えるよう、
      あえて “ゆとり” が用意されている、と捉える事も出来る。
 
      第112回「素敵なオモチャ 〜ソフビ怪獣人形は魔女先生の魔法〜」でも述べたが、
      それを手にして遊ぶ子供の、
      夢見る力や空想する力を育ませるのが、
      昔のソフビ人形の役目であり、常識。
      大人が何から何まで与えてはいけない、という厳しくも優しいポリシーが
      そこにあるのだ。
 
      ・・・でも、やっぱ、
      どうせなら
      ちゃんと5種類全部、付けといてほしかったものである(笑)。



さて、
ここからは、平成のライダーを・・・。


 石森先生が亡くなった後に始まり、
 平山プロデュサーの手からも離れてしまった平成ライダーシリーズだが、
 ユニークで心惹かれるデザインの “顔” の魅力は、しっかりと継承されている。

   仮面ライダークウガ 
   




バンダイ製 ソフビ魂、全長約17センチ。
平成19年発売。
   平成12年から始まった平成ライダーシリーズの、記念すべき第1弾ライダーである。
 仮面ライダーの顔としては、
 クワガタムシ、という人気昆虫をモチーフにしたその選択も無難だし、
 フォルムの美しい、洗練された作りになっているので、
 そんなに好みが分かれない、誰もがカッコいいと思えるデザインだったと思う。

 劇中、
 所詮あなたの言っている事は奇麗事だ、と
 指摘された五代雄介(クウガに変身する主人公、演じるはオダギリジョーさん)が発した、

  「そうだよ。奇麗事だよ。
   だからこそ現実にしたいじゃない。 本当は綺麗事が一番良いんだもの 」

 って台詞が好き。
 リアリティ重視な作風の、
 放送局にクレームが入るような過激な番組ではあったが、
 子供番組に携わっているスタッフの “意識の高さ” が感じられるからである。
 
 世界観は別でも、
 “昭和の仮面ライダー” がちゃんとしっかり継承されている事を
 僕はこの台詞で確信し、
 同時に、
 クウガの顔の整ったカッコよさが、
 決して体裁を取り繕ったものではなく、奥深く高潔なデザインである事にも気づいた次第である。



   仮面ライダー龍騎 
   


バンダイ製 京本コレクション、
全長約37センチ。
平成14年発売。
   中世ヨーロッパの騎士がモチーフゆえ、
 その顔は、
 仮面ライダーが仮面の上から更に鉄仮面をかぶっているようなデザイン。

 先述のクウガやその翌年のアギトなどは、
 平成ライダーとは言えども
 まだまだ昭和のライダーの名残が感じられる顔をしていたが、
 この龍騎から、
 突飛で自由な発想によるデザインが採用されるようになっていったと思う。
 
 物議を醸すほど斬新な作品世界、
 そして関連玩具の売上の好成績、と
 平成ライダーシリーズが10年以上も続くきっかけとなった番組だけに、
 それを示唆する主人公の顔であったのだ、と
 今、痛感している。



   仮面ライダーファイズ 
     



バンプレスト製 必殺技ソフビフィギュア、
全長約27センチ。
平成15年発売。
   ファイズの顔は、
 ギリシャ文字のΦ(ファイ)がモチーフ。
 
 最初にこの顔を見た時は、
 懐中電灯みたいで、思わず「マジか?」と失笑してしまったが、
 毎週番組を見ていくうちに、
 無機質でメカニカルなそのデザインが、なんだかカッコよく思えてきた。
 “慣れ” というのは怖い(笑)。
 
 でも、正直、この作品から、
 “来年の仮面ライダーの顔はどんなだろう?” という強い興味が湧くようにもなった。
 考えてみれば、
 視聴者のド肝を抜くのが、仮面ライダーの顔の第一条件。
 ファイズの顔は、
 定石を踏んだデザインだったわけである。



   仮面ライダー響鬼 
   



バンプレスト製 ビッグサイズソフビフィギュア、
全長約31センチ。
平成17年発売。
   アマゾンライダーを
  「ヒーローじゃなくて敵の怪人みたい」
 って言う人がいたけど、
 この響鬼に比べたら、まだまだ甘い(笑)。
 なんたって、
 その顔のモチーフは鬼。
 日本人が恐ろしい悪者の象徴と認識している、あの鬼なのだから。
 しかも、
 目も鼻も口も無く、のっぺらぼうのようでもあり、
 “正義のヒーロー” という設定がなければ、すべての子供が泣いて逃げ出す怖さがある。

 “完全新生” をスローガンに掲げた仮面ライダーだっただけに、
 このインパクトは強烈であった。

 ・・・ってか、
 鬼がヒーロー・仮面ライダーで良いなら、ドクロだって良くない?
 原作者・石森章太郎先生の思い、
 今だったら、すんなり叶うような気がするなぁ。 



   仮面ライダーディケイド 
     






バンダイ製 レジェンドライダーシリーズ、
全長約17センチ。
平成21年発売。
   バッタ、トカゲ、カブトムシ・・・etc.
 そんな、自然界の象徴である生き物たちをモチーフにしてデザインする、
 という概念をぶっ壊し、
 今や、
 中世ヨーロッパの騎士だのギリシャ文字だの鬼だの、と
 何でもあり、の仮面ライダーの顔。
 『仮面ライダークウガ』が一昔前の話になってしまった平成21年、
 またまた凄い顔の仮面ライダーの登場であった。

 昭和のライダーシリーズと違い、
 作品ごとにそれぞれ独立した世界観を有する平成ライダーシリーズにおいて、
 様々な異世界を旅して、
 歴代の平成ライダーどころか、
 アマゾンやBLACKといった昭和のライダーとも共演を果たしたディケイドの、
 マスクデザインのモチーフは、
 なんとバーコード。
 本当に “何でもあり” だ。

 ある意味、ドクロよりも怖いンじゃないか、と思える(笑)この顔は、
 昭和のライダーシリーズを作品数で抜いてしまった平成ライダーシリーズの、
 10周年を祝うに相応しい、実に印象的なデザイン・造形であったと思う。



2回にわたり述べてきた、仮面ライダーの “顔” の魅力、
文字量的に頃合いかと思うので、
とりあえず、
ここで筆を擱くが、
実はまだまだ書き足らない、というのが本音。
やっぱり、仮面ライダー全員を取り上げるべきだったかな(笑)。

僕にとって、
仮面ライダーほど、
その顔に心惹かれるヒーローはいないのである。



人生であといくつ、
新しい仮面ライダーの顔に出会えるかな・・・?




               
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