真水稔生の『ソフビ大好き!』 


第55回 「カメバズーカと山本昌に学ぶ」 2008.8
 
そういえば、小学校3年生の時、
カルビーの仮面ライダーX3スナックを何回買っても、カメバズーカのカードが出なかった。
忘れもしない。10番のカードで、カメバズーカの側面の写真だった。
友達は簡単に出たのに、僕はまったく駄目。
カードの袋を破って中身を確認しては溜め息をつく、という繰り返しだった。

ラッキーカードが出てもらえたアルバムも、
その10番カメバズーカの場所だけが空いていた。
10番カメバズーカのカードは、ラッキーカードよりも出る確率が低かったのだ。
 
何回買っても出ないので、或る時、僕は思わず悔し泣きしてしまった。
それを見ていた母親に、
 
  「そんな事で男が泣いとってどーするのぉ〜」
 
と叱られた。
そこへ、友達が遊びに来た。
僕はすぐに涙を拭こうとしたが、
母親が大きな声で、
 
  「見たってぇ、仮面ライダーの欲しいカードが出んって言って泣いとるンだよぉ、この子」
 
と言って僕の頭を掴み、泣き顔をその友達の前に曝したので、
思いっきり笑われてしまった。
恥ずかしかった。
 
でも、その友達は、
 
  「泣くほど欲しいンなら、あげるわ〜」
 
と言って、持ってた10番カメバズーカのカードを僕にくれた。
ダブって持ってたわけでもないのに、
泣いてる僕を見て、自分のたった1枚しかない10番カメバズーカのカードを手放したのだ。
優しい性格だったのか、僕ほどモノへの執着が無かったのか判らないが、
とっても嬉しかった。
 
だが、
すると、どうだろう。
翌日からは、嫌がらせのようにその10番カメバズーカのカードが出るではないか。
結局、そのカードを、
僕は最終的に7、8枚もダブって持つ事になった。
 
泣いてるところを友達に見られたのも恥ずかしかったが、
それだけ大騒ぎして友達からそのカードを譲ってもらっておきながら、
結果的にそれを何枚もダブって持ってしまっている事が、
もっと恥ずかしかった。
 
僕はこの事で、
幼い心ながらも“人生の皮肉”を感じたのと同時に、
取り乱すという行為は、
結局無駄であり、非常にカッコ悪いものである事を知ったのだった。
 
そもそも、
劇中に登場したカメバズーカ自体も、
ダブルライダーでも歯が立たないほど威力のあるバズーカ砲を背負った、
最強武装の怪人でありながら、
東京を全滅させるために体内に組み込んであった原子爆弾で、
結局、
空の彼方で自分だけが爆死させられる、という皮肉な最期を遂げる。
欲しいカードが出ないと騒いで
結局最後はそのカードをダブって何枚も所有する事になった僕に似て、
虚しいかぎりの結末なのだ。
 
つまり、
世の中、納まるべき所に物事は納まるものであり、
取り乱したり、浮かれていたりした分、人は後から恥をかくだけなのである。
カメバズーカは、
それを僕に教えてくれた怪人なのだ。
 
嬉しい事や楽しい事、
悲しい事や苦しい事、
人生にはいろんな事がやってくるが、結局なるようにしかならないのが人生。
それをしっかりとわきまえた上で、
自分の出来る事をひとつひとつ確実にこなしていく事が大切なのだ。
 

先日、中日ドラゴンズの山本昌投手が、通算200勝を達成したが、
彼などは、
まさしくそんな生き方の訓戒を、身をもって教示してくれた存在である。
 
彼は、抑えても打たれても、勝っても負けても、
いつも淡々としている。
心の中では歓喜や葛藤などの様々な感情が渦巻いているのかもしれないが、
決してそれを表に出さない。
どんな時も、
当たり前のように、ひたすらに野球に打ち込んでいるのだ。
そこが凄い。
 
今でこそ球界を代表する大投手だが、
入団当初は、
首脳陣や先輩選手から、

 “図体がデカいだけで、球は遅いし、動きも鈍い”

と低い評価をされていた。
アメリカに留学させてもらい、表面上は有望株選手のようだったが、
実情は、戦力外通告目前の整理対象選手だったのだ。

そんな、
球団から半ば見放されたようなところから這い上がってきたのだし、
故障した事もあるし、
不調のままシーズンを終えた事もある。
間違いなく、紆余曲折した波瀾万丈の野球人生だったはずだが、
彼は、何事もなかったかのように、涼しい顔をしている。
涼しい顔をしながら、
黙々と日々努力を重ねて、厳しいプロの勝負の世界に生きてきたのである。

泣き言も言わず、言い訳もせず、
パフォーマンスで誤魔化したりもせず、
自分が出来る事、自分がやるべき事を、ただ確実にこなしてきた結果が、
最多勝や沢村賞の獲得、
ノーヒットノーランの達成、
そして、通算200勝、という快挙に繋がったのだ。
しかも、
その成功に浮かれてはしゃぐ事なく、彼はすでに次の目標を見据えている。
だから素敵なのだ。
 
どこのチームのエースよりも、
彼より速い球を投げるどのピッチャーよりも、
カッコいいと思う。
 
四半世紀も投げ続けている強靭な体力はもちろん素晴らしいが、
常に平常心で冷静に歩み続けるたくましい精神力は、それ以上に素晴らしい。
栄光の大記録は
あくまでもその副産物であり、
注目すべきは、彼の野球への取り組み方、
見習うべきは、彼の人生の歩み方である。
それはまるで、
イソップ物語の『ウサギと亀』のお話に出てくる亀のような生き様。
山本昌投手は、
人々に人生を説く“亀”の化身ではないか、とさえ思う。
 
同じ亀でも、
派手な武装をしたがために己の力を過信し、
浮かれて油断した結果、
最後は自爆させられてしまったマヌケな怪人・カメバズーカとは大違いだ。
 
僕は子供の頃から
亀というのは特別な生き物だと思っていた(第28回『強いぞガメラ』参照)が、
怪人や野球選手に姿を変えてでも僕に“人生”を教えてくれる亀は、
やはり特別な生き物であり、
そして神の遣いである事を、
改めて実感する今日この頃である。
 
 
 
というわけで、
今回は、僕のコレクションの中から、カメバズーカのソフビ人形を紹介します。
 
    ャンボマシンダーミニサイズ人形。どちらもメーカーはポピー。
   放送当時におけるカメバズーカのソフビ人形化は、
   この、約50センチと約8センチという、両極端なサイズのみだった。
 
 
  ミニサイズのカメバズーカ人形は、実に可愛い。
 最大の特長である背中のバズーカ砲も、
 まるで赤ちゃんのオチンチンみたく造形されていて、
 たまらなく愛おしい。
 同じくらいのサイズの人形である、
 現在のバンダイ製食玩人形(下の写真)のカッコよさと比べれば、
 当時のオモチャのコンセプトが明確にわかる。



この人形は、
平成4年にバンダイから発売された、
仮面ライダー怪人シリーズのカメバズーカ人形
全長約15センチ。
発売時、
バンダイのかわら版(問屋向けの新商品のカタログ)には、

  今年は怪人もどんどん商品化して
       仮面ライダーを盛り上げます、

みたいな事が書いてあったが、
この年に商品化された怪人は、
このカメバズーカとガラガランダのみの、たった2体だった。



カメバズーカは、
このように魅力的な造形のカッコいい怪人だ。
『仮面ライダーX3』の第1話と第2話に登場したのだから、
仮面ライダーブームのピーク時に僕ら子供たちの前に現れたわけで、
強烈な印象を少年時代の記憶に残した、超メジャー級の人気キャラクターだと言えよう。
もちろん、僕も大好き。
だけど、
カメバズーカの人生は、みっともないから嫌いである。
己の能力におぼれて、
バズーカ砲という最強の武器も結局活かせず、
自分の体内の爆弾で自分だけが死ぬ、なんて、
カッコ悪いにも程がある。

冷静さを欠いては駄目なのである。
カメバズーカになってはいけない。なりたくない。
どんな時も、
浮かれず、騒がず、落ち込まず、
山本昌投手みたいな気構えと態度で、涼しい顔をしていたい。
そういう人でありたい。
 
何か嬉しい事や楽しい事、
あるいは、悲しい事や苦しい事がある度に、
コレクションの棚の
これらカメバズーカ人形を眺めては、
 
「冷静に、冷静に」
 
と、僕は自分に言い聞かせている。
 

物事は、
納まるべき所に納まるものであり、
人生は、
結局なるようにしかならない。
その中で、
自分が出来る事、自分がやるべき事を確実にこなしてゆく、
それが大切なのである。
 
 
 

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