真水稔生の『ソフビ大好き!』


第235回 「なぜかネパール」 2023.8

先日、アルバイト先で仲良くなったネパール人の男の子と一緒に、
その子の行きつけのネパール料理店に行き、生まれて初めて、ネパール料理を食べました。
思ってたほど辛くもなく、
また、
タイ料理やベトナム料理のような、
いかにも異国のアジア料理、って感じの強いクセもなく、
とても食べやすくて、

 スープモモ(スープ餃子)、
 ミックスブトン(羊の内臓の炒め物)、
 チキンチョイラー(焼いた鶏肉をスパイスとハーブでマリネしたもの)、
 ワイワイサデコ
 (ネパールのインスタント麺・ワイワイヌードルを砕いて、
            玉ねぎや人参やキュウリなどと和えたもの)、
 ポークセクワ(豚肉の串焼き)など、

その子が勧めてくれるいろんな料理を
次から次へと、
チーズナンと一緒にマンゴーラッシーで勢いよく胃袋に送り込みました。
            堪能。 ゲプッ。







 

アルバイト先でその子をはじめとするネパール人の若者たちと知り合うまで、
僕は、ネパールという国に対して、
お釈迦様が生まれた所、ヒマラヤ登山の玄関口・・・程度の認識しか、
恥ずかしながら持っていませんでしたが、
その子たちから
ネパールの言葉や文化、生活習慣などを色々教わるうちに、
段々と興味が湧いてきて、
こうして、ネパール料理も美味しくいただいた今では、大いに魅力を感じています。
一度、行ってみたいですね。
雪男もいるそうですし・・・(笑)。
 
 ※冒険家の鈴木紀夫さん(あの小野田さんをフィリピンのルバング島で発見した人)が、
  なんと、雪男を、ネパールで目撃しているのです。


ところで、
僕に初めて “ネパール” という異国の地がある事を教えてくれたのは、
実は、“仮面ライダー” なンですよね。
というのも、
僕らの世代が子供の頃に夢中で集めたライダーカード、
そう、カルビーから発売されていた仮面ライダースナックにオマケで付いてくる、
あのカードの、
ハエ男のカードの裏に、

 出身地:ネパールの秘境

という記述があったから、なのです。

なんでそんな細かい事を憶えているのか、
といいますと、
その、“出身地がネパール” っていうハエ男のプロフィールが、
子供心にとっても謎だったから。
だって、
ハエ男が登場する『仮面ライダー』第42話「悪魔の使者 怪奇ハエ男」を観る限り、

 ハエ男がネパールの秘境からやってきた、

なんてシーンはありませんし(お話の中にはネパールの “ネ” の字も出てきません)、
それどころか、
“加納オサム” なる、
日本に住んでる日本人の男が、
日本で改造手術を受けてハエ男は誕生してますので、
出身地は、どう考えてもネパールではなく日本、なのです。

まぁ、今なら、

  最初はそういう設定の脚本だったのに、何某かの事情で変更されたのかな・・・、

って思うくらいで、さほど気にも留めないか、
あるいは、
「なんでネパールやねん!」って笑い飛ばして終わり、でしょうけど、
なんたって
当時は小学校低学年の子供ですから、

 ネパールの秘境にいるハエは
 怪人にするのに相応しい特別なハエ(たとえば、ものすごく凶暴だとか猛毒を持っているとか・・・)で、
 ネパールでそのハエを捕まえてきて、改造手術に使ったンだな・・・、


ってな事を、真剣に考えてました。
3歳下の従弟に、

 「ハエ男は外国のハエの怪人なンだぞ」

って、力説していた記憶もあります。
あと、

 加納オサムは、ネパールで生まれ育ったンだろう・・・、

なんて事も考えたかな。
とにかく、
日本で誕生したハエ男がネパール出身、という謎のプロフィールを
なんとか納得しようと、必死だったのです。

・・・ライダーカードの裏だけで、随分と楽しめたものですが(笑)、
ただ、それらの自説は、
“ハエの出身地” や “加納オサムの出身地” がネパールなだけで、
“ハエ男の出身地” がネパール、って事にはならないので、確実に間違ってたンですけどね(恥)。
それに、
怪人の特徴や能力から考えて、
わざわざネパールまで出かけてハエを捕まえなくても、日本のハエで充分ですし、
なんといっても、
ネパールの “秘境” ですから、
そんなところで日本人が生れ育つわけもないですし・・・。

我ながら、いたいけな子供でした(笑)。



・・・というわけで、
今回は、そんな、

 日本人が日本で改造されて誕生した怪人なのに
 出身地はなぜかネパール・・・、

というミステリアスな(笑)怪人であるハエ男の、
番組放映当時(昭和46~48年)に販売されていたソフビ人形を紹介したいと思います。



まずは、
スタンダードサイズの人形から・・・。
バンダイ製、全長約25センチ。

マスク着脱タイプの人形でもないのに
かなり頭でっかちになっちゃってるバランスの悪さが、ちょっと残念ではありますが、
丁寧な手作り感のある複眼や
触覚を含む口元の緻密な仕上がり、
あるいは、
腕の体毛に吹かれたスプレーの絶妙な色加減など、
造形と彩色が共に美しい、製造メーカーのセンスの良さを感じる人形だと思います。
 
   

 不気味な動植物も、時に不潔な害虫でさえも、
 ショッカー科学陣の手にかかれば芸術作品になる・・・、

 悪者である敵キャラクターがそんなふうに魅力的だからこそ、
 主役の仮面ライダーが引き立ち、
 作品世界に奥行きと広がりが生じる・・・、

という『仮面ライダー』という番組の人気のひみつ(理由)を、
子供が手にして遊ぶオモチャの人形が明快に語っているわけです。
素晴らしい!


ちなみに、
ハエ男に改造された加納オサムなる人物は、
毎日遊びまわっているお金持ちのボンボンにして、
煽り運転はするわ、
子供を平気でひき逃げするわ、
とんでもなく最低で冷酷非道な社会のクズ。
その人間性を死神博士に見込まれて
害虫の怪人にされてしまうわけですが、
本当にクズ野郎なので、
“ハエ男” では、まだ足りない気がしますね。
成虫でなく幼虫の方を使って、“ウジ虫男” にしてやったら、よかったと思います。
その方がピッタリ。
    それも、
ライダー回転キックなどというカッコいい技でスマートに倒されるのでなく、
ライダーと闘おうとするも、けつまずいてドン臭く転倒、
そこを、
罰が当たって、
ショッカー戦闘員の運転する車に誤ってひかれて体が潰れ、
その痛みと苦しみに、
泣きわめきながら死んでいく・・・、とか、
あるいは、
ライダーには全く歯が立たず、おめおめとアジトへ逃げ帰り、
その失態を咎められて処刑、
それも、強力な殺虫剤をかけられて、これまた泣きわめきながら死んでいく・・・、とか、
そんな、
どうにもみっともない最期を、遂げてほしかったものです。
     
    でも、
仮に “ウジ虫男” だったとしても、
ソフビ人形になる際には、
これまた美しい造形と彩色で、美化されるンだろうなぁ・・・(笑)。


凄いな、ソフビ人形、って・・・。




 

   
こちらは、
ミニサイズの人形。
ポピー製、全長約11センチ。
黒の成形色に目を赤で塗っただけの、
パッと見、チープな印象を受ける人形ですが、
触覚を含む口元は
スタンダードサイズの人形に倣って
きちんと造形されているし、
よく見ると、
複眼の凹凸の上から
サッと黒が塗られているので、
赤地にその黒がうっすらと浮かび上がって
いい雰囲気が出てるし、
昭和のミニソフビにしては、高品質だと思います。



さて、
最後に話を冒頭の食事会に戻しますと、
ネパール人とネパール料理を食べながら、
“ネパール” という事でハエ男を思い出してしまい、
ハエという害虫の強烈な不衛生のイメージで食事が不味くなってしまうところでしたが、
瞬間的に、

 そうだ、今月の『ソフビ大好き!』は、ハエ男について書こう、

と思いついたため、
僕の脳裏に浮かんだのは、
ハエでもハエ男でもなく、今紹介したハエ男の美しいソフビたち、
なので、
食事が不味くなるどころか、より美味しく感じられ、
舌も胃袋もそして心も満足する、
とても幸せなひと時を過ごす事が出来た・・・、という次第でした。
そのネパール人の子に、

 「スゴク ウレシソウニ タベルネ」

って感心されたほどです。
ソフビのおかげ(笑)。

あぁ、ソフビ蒐集家・ソフビ愛好家で良かったぁ~。




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