真水稔生の『ソフビ大好き!』


第216回 「マニアだなぁ、僕」  2022.1

鬼まんじゅうが無性に食べたくなったので、買ってきました。
鬼まんじゅうとは、
サツマイモを角切りにして、小麦粉や砂糖と混ぜて蒸した和菓子で、
全国的にはそんなに知られていないかもしれませんが、
ここ名古屋では、
和菓子屋はもちろん、
スーパーマーケットなどでもフツーに売られている、
いわゆる “ソウルフード” のひとつです。
おそらく、
このゴツゴツした見た目が、
鬼が持っている金棒、あるいは鬼そのものを連想させるから、
こんな怖い名前が付いているのでしょうけど、
もちもちした柔らかい食感と甘くてやさしい味は、
鬼のイメージとは無縁の親しみやすさ。
多くの名古屋人に、ずっと昔から愛され続けています。
僕も、幼い頃はよく食べてました。

ただ、まぁ、そうはいっても、
いたって素朴な、なんでもない “田舎のおやつ” ですので、
たとえば食べたら感動するような、
そんな、めちゃくちゃ美味しいものでもないと思うのですが、
今、久し振りに食べたら、
これがめちゃくちゃ美味しくて、感動してしまいました(苦笑)。

各地域特有の食べ物を “ソウルフード(魂の食べ物)” とは、よく言ったもので、
こんな、なんでもない “田舎のおやつ” である鬼まんじゅうを、
めちゃくちゃ美味しいと感じるのは、
単に舌の働きで味を認識しているだけではなく、
その味覚によって、
“魂” に刻まれた幸せの記憶が、じわ~っと呼び覚まされるから、なンですよね。
それを実感しています。
  あっという間に完食。
写真の2個以外にも、もう2個(合計4個)、買ってきたのですが、
一気に全部食べてしまいました。 ゲプッ。


さて、
そんなまんじゅうに因みまして、
今回は、赤井介さんの話から始めさせていただきましょう。

ってか、実はその逆で、
急に鬼まんじゅうが食べたくなったのは、赤井鬼介さんがきっかけだったのです。

今日は午前中に仕事があったのですが、
終了後、スタジオを出てエレベーターに乗った際、
奥に乗ってた人たちが、

 「“軍艦島” の正式な名前、って何だっけ?」

 「え? “軍艦島” って正式な名前じゃないンですか?」

なんて会話をしてまして、
それを背中越しに聞いた僕は、
軍艦島の “軍艦” から、
『ウルトラセブン』に出てきた軍艦型ロボット・アイアンロックスの事を思い出し、
その回の脚本を担当した赤井鬼介さんの名前が浮かんで、
それで、
赤井鬼介の “鬼” から、
鬼まんじゅうを連想するに至った次第。

・・・なんか、マニアだなぁ、僕(笑)。

もう、そこからは、
鬼まんじゅうの事が頭から離れず
唾液が出まくり(苦笑)、
帰りの道中、たまらず和菓子屋に立ち寄って購入。
帰宅後、
それを食べながら(もう食べ終わっちゃったけど)この原稿を書いてる・・・、というわけなンです。


・・・で、
赤井鬼介さんですけど、

 “『まんが日本昔ばなし』の絵本を企画・構成していた人物”

としても知られていますが、
それ以前に、
元々は東宝の社員で、
出向先となった円谷プロで、
『ウルトラセブン』や『戦え!マイティジャック』の脚本を担当されていた方なンですよね。

とくに『戦え!マイティジャック』では、
脚本以外にも、細かい設定やメカの内部のデザインなどにも関わっておられたようで、
まぁ、言うなれば、
金城哲夫さんや高野宏一さんらと同じ、

 “幼い頃の僕らの胸に円谷プロから夢を届けてくれた人”

なのです。


その『戦え!マイティジャック』で赤井さんが脚本を担当された作品の中に、

 第10話「消えた王女の謎を解け!!」

というエピソードがあるのですが、
これ、名古屋人として、まさに鬼まんじゅうのごとく親しみを感じる回、なンです。

名古屋ロケ、なンですよね。
正直なところ、
子供の時の『戦え!マイティジャック』を観ていた記憶の中に
この回に関するものは一切無かったのですが(苦笑)、
大人になってから、
円谷プロ作品の上映会でこの回を観て、

 わぁ、名古屋ロケじゃん!
 二瓶さん(出演者の1人だった二瓶正也さん)、名古屋に来たンだぁ・・・、

って嬉しく思ったンです。

まぁ、名古屋ロケ、といっても、
名古屋城や東海テレビの社屋がチラッと映る程度で、
ほとんどは、
愛知県の隣の三重県にある “ナガシマスパーランド” で撮影されていましたけど、
それでも、
名古屋から近い、馴染みのある遊園地ゆえ、親しみを感じる事に変わりはありませんからね。
ホント、嬉しかったです。

しかも、この回、
『超人バロム・1』の白鳥健太郎役
(・・・いや、時代的にはペロリンガ星人の人間体役、と紹介するのが適切か)でお馴染みの
高野浩幸さんや、
敬愛する音楽家・大瀧詠一さんの、
代表作のひとつである『夢で逢えたら』を歌っていたシリア・ポールさんが、
ゲスト出演されてて、
それも嬉しかったンですよね。

 あぁ、ここに、
 二瓶さんをはじめとするマイティジャックのメンバーや
 高野浩幸さんやシリア・ポールさんがいたンだなぁ・・・、

なんて思いを馳せたくて、
数日後、ナガシマスパーランドに一人で出かけたほどです。

・・・なんか、マニアだなぁ、僕(再笑)。

というわけで、
今回紹介させていただくソフビは、こちら。

コンクルーダー

マルサン製、全長約15センチ、ゼンマイ走行。

マイティジャックの主力戦闘機です。
その第10話でも、

 シリア・ポールさん演じる “シャンデリア国のユカリーナ王女” の
 命を狙う暗殺団を、華麗な対地攻撃で自動車ごと撃破する、

という活躍を見せてくれます(操縦は二瓶さん演じるゲンダ隊員)。
 

ただ、番組放映時に発売されたこのソフビからは、
そんなカッコよさは、ちょっと感じ取りにくいですね(苦笑)。 

造形もカラーリングも、
“地味” というか、“淋しい” というか・・・、どうにも冴えません。
 
まるで、視聴率が振るわず不人気に終わった番組の惨敗感を
象徴するかのよう。

アンティークソフビのコレクションを始めて30余年、
その間、パッケージ入りの新品状態のものを
何度も見かけましたので(写真のものも、そのひとつ)、
発売当時、相当の数が売れ残ったのではないかと思われます。
   
ただ、
今となっては、
そんな哀愁も、泣きながら抱きしめたくなる魅力のひとつ。

僕のコレクションケースの
メカコーナーの棚(“格納庫” って呼んでます(笑))に、
このように、
ウルトラホークや
それこそMJ号といったカッコいいメカソフビと並べて飾ってありますが、
見劣りを感じたり、違和感を覚えたりする事はありません。
全部、キラキラ輝く宝物。 
     
 

僕にとってアンティークソフビは、言うなれば “ソウルトーイ”。
形や色を、
単に目で見て楽しむだけでなく、
魂で感じて、
その魅力をじわ~っと味わうオモチャ・・・、なンですよね。

体裁が整ってるかどうか、とか、おしゃれかどうか、とか、
そんな事は、たいした問題ではありません。
人間と同じで、肝心なのは中身ですから。

・・・え? ソフビの中身は空洞だろ、って?
ハハハ。
だから、単に目で見て楽しむだけじゃない、って言ってるじゃないですか。
ソフビの中のあの空洞には、
夢とか思い出とか、やさしさとか温もりとか切なさとか、
そんな、涙腺を刺激する人情の機微が、
目には見えないけど、ぎっしり詰まっているのです。
そうでなきゃ、人生かけて愛したりなんか、しませんよ。

・・・なんか、マニアだなぁ、僕(再々笑)。
     
 




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