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モツゴとスジエビを飼っているのですが、
昼間、窓から差し込む日の光によって、
水槽のすぐ横の襖に、
泳ぐモツゴとスジエビの様子が、動く影絵となって映ります。
これがまぁ、
味わい深いというか、風情があるというか、
なんとも雅やかで可愛らしく、
時には、水槽の中よりも影絵の方をボーッと見てしまう事もあるくらい。
気持ちが和みます。
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・・・で、さっき、
その和みが、倍増する瞬間がありました。
モツゴの影絵が、
『ウルトラセブン』のオープニング映像のポインターの影絵に見えたのです。 |
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主題歌の、あの、
♪セブン セブン セブン・・・
ってところで、
向かって左上から画面上にサッと現れて一旦止まり、右下から画面外へサッと消えていくポインターの影絵・・・、
あれに、襖に映ったモツゴの動きがそっくりだったンです。 |
ポインターのフォルム自体がそもそも魚に似ていますし、
本当にあの映像そっくりの動きでしたので、
ペットの影絵に癒されている心が、
『ウルトラセブン』を観ていた幼い頃を思い出す懐かしさで更に癒された・・・、というわけです。
・・・。
なんて長閑な日常を送っているのでしょう、僕は・・・(笑)。
まぁ、それはそれとして、
『ウルトラセブン』のオープニングの影絵・・・、アレ、僕、子供の頃から大好きなンですよねぇ。
洒落てるし、カッコいいし、
これから物語が始まるワクワク感を、なんとも優美に高揚させてくれますからね。
『ウルトラマン』のオープニングも影絵でしたが
『ウルトラセブン』には、番組に対して何やら高尚なイメージを抱いていましたので、
“影絵” というものの情緒が、より効果的に働いていたンでしょうね。
圧倒的に『ウルトラセブン』のオープニングの方が好きでした。
海面の波の映像を光学処理した背景が醸し出す神秘的な雰囲気や
冬木透先生作・編曲による主題歌の重厚感とも、絶妙にマッチしていた気がしますし・・・。
ホント、素敵なオープニングでした。
そこで今回、
テーマにしようと思いついたのが、高野宏一さんの事です。
・・・というのも、
そんな『ウルトラセブン』のオープニング、
ポインターのほかには、
ウルトラホークやウルトラセブンの影絵などが映るのですが、
そのウルトラセブンの影絵の直前に、
ウルトラ警備隊のヘルメットを被ったモロボシ・ダンの横顔の影絵が映り、
同時にクレジットされるのが、
特殊技術 高野宏一
という文字で、
それが子供心にとても印象的だったからなンです。
毎回クレジットされる事もあって、
漢字を読めるようになるずっと以前から、
“高野宏一” って字を、絵や形の感覚で憶えちゃったンですよね。
幼い頃の僕が、
円谷英二さん以外で唯一認識していた特撮関係者の名前、それが高野宏一さんだったのです。
しかも、
モロボシ・ダンの影絵とセットゆえ、何やらカッコいいヒーローのような人物のイメージで・・・(笑)。
そして、特撮ファンの大人になってからは、
高野さんがウルトラシリーズの特撮シーンを撮影・演出してきた人であり、どれだけ凄い人かを、
当然の事ながら理解出来ましたので、
ただ名前を認識しているだけではなく、リスペクトの念を強く抱くようになりました。
その思いは募りに募り、
やがて、
実際に、東京は世田谷区砧の円谷プロまで、高野さんに会いに行くに至りました。
今から30年以上も昔の話ですけど。
アポ無しの突然の訪問でしたので(今考えたら、結構、非常識だったかなぁ・・・(苦笑))、
最初は「どなた?」って感じの対応で、怪訝そうな顔をされた高野さんでしたが、
ウルトラシリーズを観て育ったファンである事を告げると、
その怪訝そうな顔が、
急に、まるで孫を見るお爺ちゃんのような優しい笑顔に変わったのを、鮮明に覚えています。
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その時の写真。
ちょうどお昼休みの時間だった事もあり、
製作部の隅のこのソファーの上で、いろいろお話を聞かせて下さいました。
勝手に抱いていた
“カッコいいヒーローのような人物”
というイメージとは、全然違ってましたが(笑)、
凄く優しく接して下さったので、そのイメージ以上の好印象を持ちました。
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その翌年、二度目の円谷プロ訪問時の写真。
・・・そうです、翌年もまた、会いに行っちゃったンです(笑)。
僕を見つけるや否や、
「あら、久し振り。 また来たの? 御苦労さんだねぇ~、遠いのに・・・」
なんておっしゃりながら、
なんと、高野さんの方から、近づいてきて下さいました。
最初の訪問の際に
“名古屋から来た” って事にとても驚かれていたので印象に残ってたのか、
僕の顔をちゃんと憶えていて下さったンですよね。 嬉しかったなぁ・・・。
ちなみにこの日は、
高野さんが『ウルトラマンG』の御仕事でオーストラリアへ立たれる数日前で、
「ゆっくりしてってね」
って僕におっしゃって下さった後、
向こうへ持っていく荷物の確認を部下の方となさっていました。
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ところで、
高野宏一さんと言えば、特撮ファンの間では、
『ウルトラマン』第35話「怪獣墓場』(脚本:佐々木守 監督:実相寺昭雄)において、
怪獣シーボーズに、
駄々をこねる子供のような仕草をさせたり、
石を蹴飛ばそうとして空振りしてズッコケるような真似をさせたため、
怪獣を擬人化させたくない実相寺昭雄監督と、その演出・表現をめぐって揉めた、
っていうエピソードがあまりに有名ですが、
佐々木守さんのシナリオ集
(『ウルトラマン怪獣墓場』 大和書房・刊)に収録されているあの回の脚本を読むと、
シーボーズがよじ登った超高層ビルの屋上から飛び降りるシーンで、
シーボーズ、両手を鳥のようにバタバタさせる。
って書いてあったり、
科特隊の攻撃を受けてる際にも、
シーボーズ、いやいやをするように首を振る。
なんて書いてあったりしますので、
高野さんがシーボーズにつけた演技が間違っているとは、僕には思えません。
実相寺監督のおっしゃっている事も解らなくはないですが、
あの脚本にあの演出つけて、文句言われてもなぁ・・・、
って思っちゃいますけどね。 ・・・高野さん贔屓かな?(笑)
・・・ってか、個人的に、
子供の頃はそもそもシーボーズという怪獣に、憧れも思い入れも、とくにありませんでしたので、
言っちゃいますと、どーでもいい話です(笑)。
だって、
子供の頃に憧れた怪獣は、
当然の事ながら、
強くてカッコいい、ゴモラとかゼットンとかエレキングとかキングジョーとかですので、
それら本格派怪獣のアクションやバトルこそが、高野さんの演出の真価。
シーボーズが、
駄々をこねようがズッコケようが、たいした問題ではないのです。
どうぞ御自由に・・・、って感じ。
ただ、
この件について高野さん御本人から伺ったところでは、
撮影当時はあまりにハードスケジュールで、
実相寺監督と打ち合わせが満足に出来なかったし、
シーボーズが、
それまで御自身が撮ってきた “街を破壊する強暴な怪獣” とは違う性質のものだったので、
どうやって演出したらいいか解らない “迷い” もあった、
という事でしたので、
業界では “気配りの人” として知られる高野さんの事ですから、
打ち合わせをする時間がしっかりあれば、
実相寺監督の意図を汲み取って、
もっと違ったシーボーズ、実相寺監督のお気に召すシーボーズになったであろう、とは思いますけどね。
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それでも、
どっちみち子供の頃は憧れなかったでしょうけど・・・(笑)。
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やっぱ怪獣は、
大暴れしてくれないとね。
闘ってくれないとね。
・・・ん?
そうか、そういう事か・・・。
今、ふと気づいたのですが、
幼い頃、ウルトラ怪獣のソフビ人形で遊ぶ際、
僕は、“高野宏一” になり、
たった5歳か6歳といういう年齢で、“特撮監督” してたンですね。
ソフビ人形片手に・・・いや、両手に、
テレビで観たシーンを再現してみたり、自分でオリジナルのシーンを考えて演出してみたり・・・。
無邪気に夢見て、自由に空想して、
熱く胸を躍らせ過ごした、あの愛しい時間・・・、
その根源は、
高野さんが演出した、大暴れして闘う怪獣たちの、その面白さ、だったンです。
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怪獣たちの闘いを、
“怪獣プロレス” などと言って揶揄したつまらない大人たちと違って、
高野さんは、
僕ら子供たちの心に通じるピュアな感性で、その魅力を優しく解りやすく伝えてくれていました。
だから僕は、いまだに怪獣が大好きなンです。
高野宏一さん・・・、
改めて、偉大な人だったと思います。
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前述の、二度目の円谷プロ訪問の際に、
高野さんからいただいた、バルタン星人の指輪です。
僕の宝物にして、今となっては高野さんの形見。
円谷プロを後にする僕をわざわざ追いかけてきて下さって、
「これ、あげる」
と手渡して下さいました。
その時の顔が、
孫にオモチャをプレゼントするお爺ちゃんのような表情であった事は、言うまでもありません(笑)。 |
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アーストロン
ポピー製 キングザウルスシリーズ、全長約15センチ。
高野さんは、
チーズをつまみながらワインを飲むのがお好き、との事でしたので、
僕は、
ワインカラーのクリア成形に
ゴールド(チーズを連想する色)が吹いてあるこのソフビを見る度、
高野さんの事を思い出します(笑)。
アーストロンという怪獣の、“ザ・怪獣” といえる王道感も、
本格派怪獣のバトルアクションに真価を発揮する高野演出を表象してますしね。
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・・・あ、そうそう、
『ウルトラマン』の撮影当時を描いたテレビドラマ『ウルトラマンをつくった男たち』でも
『ウルトラセブン』の撮影当時を描いたテレビドラマ『私が愛したウルトラセブン』でも、
高野宏一さんは、
やたらと大声で怒鳴り散らす人物として
描かれていましたが(演じたのは、前者が大地康夫さん、後者が田口トモロヲさん)、
実際にお会いした高野さんの、
孫を見るお爺ちゃんのような印象からは想像し難いものでしたので、
或る時、円谷プロの社員の人に、
「高野さん、って怒鳴るンですか?」
って聞いた事があります。
それに対して、その社員の人が、
「はい」
と即答されたので、思わず吹き出してしまいました。
それも、
言うかどうかちょっと迷った様子でもなく、
ここだけの話ですけどね、みたいな感じでもなく、
極々フツーに、
「昼御飯、食べた?」 「はい」
みたいな、淡々としたやりとりでしたので、いまだに思い出すと笑えてきます。
けど、同時に、
孫に優しいお爺ちゃんも、
仕事には、やはり厳しい “職人” だったンだなぁ・・・、
って、
撮影現場の高野さんに思いを馳せ、しみじみとした気持ちにもなります。
・・・まぁ、でも、
高野さんに限らず、当時の撮影スタッフの方々のほとんどが、
現場では、大声で怒鳴り散らす、おっかない人だったそうですけどね(笑)。
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水槽横の襖に映ったモツゴの影が
『ウルトラセブン』のオープニング映像のポインターの影絵に見えた事から
高野宏一さんの事を思い出し、
高野さんが演出した怪獣たちの素敵な魅力を再認識した今、
僕の心には、
ソフビ怪獣人形を闘わせて遊んでいた子供の頃の風景が、
いつもにも増して、深く濃く、沁みるように浮かんでいます。
あぁ、なんか、涙が出そう・・・。
では、また来月・・・。 ごきげんよう。
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