第173回 「雨にぬれても」 2018.6
・・・6月、梅雨です。 昨日も雨、今日も雨、明日の予報も雨。 なんだか気持ちまでもが、暗くてジメジメしてきます。 現在、午前10時過ぎですが、 特に出かける用事もありませんし、 こんな日は、 ソフビコレクションを眺めて愛でて、 せめて心だけでも 穏やかで晴れやかな空模様にしようと、 今、ビール片手にコレクションルームでくつろいでいるところです。 え? 昼間っから酒飲んでいい身分だな、って? いえいえ、 アルバイトの夜勤明けですから、 これは、昼間働いていらっしゃる方の晩酌と同じです。 でも、 朝や昼に飲むビールには、 なぜか、 贅沢しているような感覚と ほんのちょっぴりの罪悪感があって、 それがビール自体の苦味に特別な味わいを与えている事は 確かですけどね(笑)。 ソフビに癒され、 特別な味わいのビールにほろ酔えば、 雨降りの憂鬱など、すぐに忘れてしまえるというものです。 ところで、 今朝、バイトが終わって帰路に就く際、 同時に職場を出た同僚の人が持ってた透明のビニール傘に、 思わず目がいきました。 手元の部分に、ガムテープがぐるぐると巻きつけてあったのです。 てっきり、壊れたのを補修して使っているのだと思い、 「そうまでして使わんでも・・・」 と言ってからかったら、 なんと、 それは補修ではなく、“自分のものである” という目印で、 しかも、 壊れてるように見えるから盗難防止にもなる、 との事で、 なるほどね! と納得・・・いや、感心してしまいました。 巧い事を考えたものです。 でも、 なんだか、 しみったれてて、不潔そうで、 決して見た目が良いものではなかったので、 真似しようとは思いませんでしたが・・・(笑)。 それにしても、 白や透明のビニール傘、 あれほど、当たり前のように盗まれるもの、ってないですよね。 まぁ、パッと見、どれも同じなので、 間違えて持ち去っちゃうケースもあるでしょうけれど、 何百円で買える安物ゆえか、 たいした罪の意識もなく、自分のものじゃないとわかってて勝手に持ち去ってる人が やたらと多いように感じられます。 ・・・あ、僕はそんな事した経験ないですよ、誓って。 でも、 傘立ての中に入れておいた自分のビニール傘が無くなっていて、 同じタイプのビニール傘が何本も残っている時に、 自分のも誰かに持っていかれたのだから、これでチャラだ、 って理屈で適当なのを持っていきたくなる気持ち、それは解かります(苦笑)。 東京03さんのコントに、 そんな、 ビニール傘にまつわる人間のズルさ・哀しさを、笑いのネタにしたものがありますね。 タイトルはズバリ、『ビニール傘』。 食べ物屋さんで食事を終えた客(豊本さん)が、 傘立てからビニール傘を取り出して帰ろうとしたところを、 「ちょっと、スイマセン。 それ、僕のですけど・・・」 と、同じくその店で食事をしていたほかの客(飯塚さん)に声をかけられ、 モメはじめたところへ、 さっきまでその店で食事していて 忘れ物を取りに戻ってきたという男(角田さん)が現われて そのビニール傘を持ち帰ろうとしたため、 そこから、 3人の、愚昧な “ビニール傘争奪戦” へと発展していく・・・、 という内容で、 日常のよくある出来事から 人間の揺れ動く心理を滑稽に表現する、いかにも東京03さんらしい作品です。 もちろん、めちゃくちゃ面白いので僕は大好きなのですが、 観てると自身の或る経験を思い出して、 ほんの少しだけ、イヤな気持ちにもなります。 それは3年前・・・、 いや、もう4年前かな、 ちょうど今頃の時期の事でした。 小雨の降る中、僕が買い物をしようと近所のコンビニに近づいた際、 ひとりの若い女性が、 差していた白いビニール傘をとじて傘立てに入れ、 店の中へと入っていきました。 そして、程なく僕が入り口に到着すると、 店の中から、買い物を済ませた若い男性が出てきて、 僕の目の前で、 さっき女性が傘立てに差していった白いビニール傘を サッと取り出したのです。 あ、それ・・・、 と僕が思った瞬間、 店の中から、さっきの女性が、 「その傘、私のです!」 と、男性に声をかけました。 まるで、 盗まれないよう注意して見ていたかのようなタイミングで、 まさに、 現場を押えて現行犯逮捕、 って感じでした。 ところが、 なんと、 その男性は、 「証拠、あるのか?」 と言い返しました。 驚きましたね、これには。 傘立てには、 その女性のビニール傘1本しか入っていなかったので、 盗もうとしたにせよ、 何か勘違いして持ち帰ろうとしたにせよ、 男性がバツ悪そうに 「あ、スミマセン」 と謝る展開しか、僕は予測していなかったからです。 すげェ開き直りだな、 って、心の中でその男性を嘲笑してしまいました。 やがて二人は、 「あなたのしようとした事は泥棒じゃないですかぁ!」 「だから、お前のだ、って証拠はあるのか、って言っとるだろ!」 と口論を始めました。 関わりたくなかったのですが、 僕の目の前、つまり入り口のところで激しく言い合っていて、 どいてもらわないと店に入れないし、 僕はそれがその女性のビニール傘である事を知ってもいるわけなので、 仕方なく、 「それ、こちらの女性のものですよ。 お店に入られる際にここに入れるところ、僕、見てましたから・・・」 と、男性に声をかけました。 すると、 男性は僕を睨みつけ、 「なんだ、お前、関係ねェだろ!」 とキレてきました。 しかも、 よく見たら、結構ゴツい腕した、喧嘩の強そうなお兄さん。 うわ~、しまった~、だから関わるのイヤだったンだよォ~、 と、僕は心の中で嘆きつつも、 今さら知らん顔も出来ないし、その男性の態度にちょっと腹も立ったので、 ビビってる事を覚られぬよう出来るだけ無表情を装い、 「誰に口利いとるンだ?」 と返しました。 |
心臓バクバクでしたが、 その男性は、変な空気の短い “間” を作った後、 「うるせぇ!」 と吐き捨てるように怒鳴り、走り去っていきました。 僕のプロの演技力が功を奏し(笑)、怖気づいたか、 はたまた、 金髪のオッサンを “頭のおかしいアブナイ奴” と思って 単に、相手をするのが面倒くさくなっただけか・・・(たぶん後者(苦笑))、 とりあえず、まぁ、 逃げていってくれたので、 殴られたりオシッコちびったりして恥をかかずに済み、ホッとした次第でした。 |
ただ、 その男性は走り去る際に、 持っていたビニール傘を僕に向かって投げつけていったため、 先端の石突きの部分がアゴに当たって少し痛かったのと、 そのせいで顔や服が濡れてしまったので、 やっぱり関わらなきゃよかった、 と後悔。 しかも、・・・しかも、です。 関わった事をもっと後悔させたのが、その直後の、その女性の対応です。 なんと、その女性は、 僕の足元からビニール傘を拾い上げると、 黙ってそれを傘立てに入れ直し、 僕を一瞥しただけで、そそくさと店内へと戻っていってしまったのです。 |
えーっ!? |
僕は思わず心の中で叫びました。 なにも、 「大丈夫ですか?」と言って、 取り出した淡いピンクのかわいいハンカチで 僕の濡れた顔や服を拭いてくれ、 とは言いません。 この運命的な出逢いから僕と恋におちてくれ、 とも言いません(笑)。 だけど、せめて・・・、 だけど、せめて、 「スミマセン」とか「ありがとうございました」とか 何か一言くらい言ってもらっても、いいンじゃないでしょうか。 ってか、それが礼儀でしょう。それが道理でしょう。 気のせいか、 その女性の、その冷々たる所作からは、 傘を持っていこうとしたあの男性に対する蔑みと同じ感情を まるで僕にも抱いてるような、そんな敵意さえ感じられました。 まったくもって意味が解かりません。 どうしようもない虚しさと やり場の無い怒りが込み上げてくる、実に不快な出来事でした。 まぁ、でも、 エンマコオロギみたいな顔した女性でしたので、 淡いピンクのかわいいハンカチ出されて 僕と恋におちようとされても、困りますけどね。 ↑ せめてもの仕返し(笑)。 ・・・ってなわけで、 バイト先の同僚のビニール傘と東京03さんのコントから そんな過去の出来事を思い出した今回は、 “泥棒”、“傘(ついでに “恋”)”、 をキーワードに、 この二つのキャラクターをピックアップしました。 |
『がんばれ!!ロボコン』に登場した、 ロボドロとロボメロです。 |
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第1話から毎週楽しみに観ていた『がんばれ!!ロボコン』ですが、 この、“ロボドロが作られた理由” が理解出来た事で、 僕はそれまで以上に番組を好きになりました。 子供心に、 ただヘンテコなロボットが出てきてドタバタやってるわけではなく、 ちゃんと “意味” があるンだ、 って事を強く感じたンですよね。 それ以来、ほかのロボットたちへの感情移入の強度も、グッと増した気がします。 ロボドロは、 『がんばれ!!ロボコン』における、 僕にとってのキーパーソンだったのかもしれません。 |
そういえば、 ロボドロが “にせハートマーク” をロボット学校の仲間たちに売る、 という詐欺行為をはたらくも、 実は、その売上金で身寄りの無い老人にお酒を買ってあげていた、 って回があったけど、 泣けたなぁ、あの話・・・。 仲間たちを騙して不当な手段でお金を得たわけですから、 当然、減点・処罰の対象とされ、 最後、ロボドロは ガンツ先生から大目玉を食らうのですが、 ただひとり、ロボドロがその悪銭で何をしていたかを知るロボコンが、 先生は何にも知らないンだっ! って、ガンツ先生に食ってかかるシーン、 今思い出しても、目頭が熱くなります。 笑いあり、涙あり、そして教えあり、 『がんばれ!!ロボコン』は、実に素晴らしい子供番組でした。 |
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・・・ん? あぁ、ソフビの話するの、忘れてた(苦笑)。 え~っと、 ロボドロ人形もロボメロ人形も、 ポピー製で全長約11センチ、 番組放映時(昭和49年10月~昭和52年3月)の商品です。 僕が特に気に入っている情緒は、両者とも、口の部分の塗装にあります。 |
まず、ロボドロ人形の口。 財布のガマグチのような形状の口ゆえ、 口金(金属)をイメージしてか、金色の塗装が手塗りで施されていますが、 急いでたのか、ヘタクソなのか、 はみ出しちゃったうえに、 目玉にも塗料が付いてしまっている、という雑な仕上がり。 ・・・いや、同じ色で目玉も塗っちゃおうとしたのかな? どっちにしろ、雑(笑)。 |
でも、その雑なところが、 ロボットなのに “愚かだけど愛さずにいられない人間性” を持ったロボドロの個性にピッタリで、 失笑してしまいながらも、“味わい” を感じるンですよね。 |
狙って出してる味じゃないだけに、旨みが、理屈抜きで胸に沁みます。 |
でもって、ロボメロ人形の方の口はというと、 こちらもまた、拙劣。 もう、全然、綺麗に塗れてないンですよね。 唇の周りにまで口紅がついてしまっている下手な化粧、 って感じで、 見る者にドンくさい印象を与えます。 しかも、 ロボドロ人形とは異なり、 手塗りでなくスプレー塗装ゆえ、 小奇麗に見せようとしたのに、結果、小汚いわけで、 余計にドンくさいのです(笑)。 |
けれど、 これまた、そういうところが、 好きな人への想いを、 まったくもってスマートに伝えられないロボメロの、 あの、 拙く不器用な愛情表現を象徴しているようで、 やっぱり、憎めないンですよね。 いや、憎めないどころか、 可愛いなぁ・・・、 とさえ、思えてしまいます。 |
さてさて、 “ソフビコレクションとビール” の至福の時、 調子に乗って 500mlの缶ビールを3缶も飲んでしまいましたので(アルコールに弱い僕は1缶か2缶で充分なのです)、 今、 強烈な睡魔が、襲ってまいりました(ロボメロが可愛く見えてるンですから、かなりヤバい(笑))。 なので、 ここらで総括させていただきます。 いくらビニール傘が安物だといっても、 いくら自分のビニール傘も誰かに持ち去られたからといっても、 自分のものじゃないとわかっているビニール傘を持ち去ったら、 それは窃盗です。犯罪です。 絶対にやめましょう。 今回言いたかった事は、これであります。 ・・・え? 偉そう? お前は本当に他人のビニール傘、持ち去った事ないのか、って? ありませんよ、ホント。 だって、傘が無かったら、走って帰りますもん。 あぁ、また空でロボメロが泣いてるな、 とでも思えば、 雨に濡れても、 しょうがねぇなぁ、もぉ~ ってなもんで、 結構楽しい気持ちになれますからね(笑)。 |
ここで一句。 ビニール傘 盗まず濡れよう 涙雨 ・・・って、 これじゃあ、俳句じゃなくて標語か(苦笑)。 ・・・もうダメだ、限界。寝る。 おやすみなさい。 |