真水稔生の『ソフビ大好き!』


第164回 「言葉を超えた愛もあるはず」 2017.9

アルバイト先に、
外国人の若者がたくさんいます。
ベトナム、ミャンマー、インドネシア、ネパールなど、
いろんな国からやってきて、
僕ら日本人と一緒に、アルバイトとして働いているのです。

若干の個人差はありますが、
だいたい、みんな、
片言の日本語なら話せるし、
文字も、平仮名や片仮名なら読めるのですが、
それでもやはり、
日本人と同じようにはいきません。
意思が通じ合うのに余分な時間がかかります。
こっちの言いたい事が少し違って伝わっちゃったり、
相手の言いたい事をちゃんと理解してあげられなかったり、の連続ですから。

でも、
それがまた面白いンですよね。
言葉によるコミュニケーションが
素早く正確にとれない事によって生じる事態には、
場をなごませる、独特の可笑しさがあります。

たとえば、
仕事の内容や業務連絡を外国人に伝えようとすると、
説明している日本人の方まで
日本語が片言になってしまう現象、
あれは “鉄板” ですね。
そのやりとりを、何度見かけても笑ってしまいます。

あと、
外国人が使う変な日本語も、
こちらがまったく予期せぬ新鮮な “笑い” で、
ほのぼのとした空気を提供してくれます。
先日も、
休憩時間に廊下の掲示板を見ていた僕に、
“歩きスマホ” をしていたと思われるベトナム人の男の子が、
ぶつかってきたのですが、
その際に彼が発した

 「スマミセン」

の一言に、思わず吹き出してしまいました。

“歩きスマホ” をして前方を見ていなかった彼が一方的に悪いのだし、
僕のコメカミの辺りに彼のオデコが直撃して
めちゃくちゃ痛かったので、
思わず顔をしかめて舌打ちしながら睨みつけてやったのですが、
咄嗟に彼が見せた申し訳なさそうな表情と、
焦って言い間違えたのか、あるいは、端から間違ってそう覚えているのか、

 “スミマセン” ならぬ “スマミセン”

という、
奇妙な言葉(笑)が、
僕の気持ちを一瞬にして和らげてしまったのです。
なので、
やさしく、丁寧に、

 「スマホ見る、前見ない、歩く、ダメよ」

と、片言で注意してあげました(笑)。


さて、
そんな日常ゆえ、
アルバイト先では、僕はいつも、
『仮面ライダー』に登場した、この怪人の事を思い出してしまいます。

ミイラ怪人エジプタス

元々は、
紀元前1800年頃のエジプトにいたと伝えられる怪人で、
そのミイラを入手したショッカーが、生命移入手術を施して蘇生させました。

あの回、面白かったなぁ・・・。
ショッカーは、
エジプト第18王朝トドメスⅢ世が日本に贈ったといわれている、
時価10億円の宝石類の隠し場所を、
蘇らせたエジプタスから聞き出そうとするのですが、
このエジプタス、
日本語を、解する事は出来るものの喋る事が出来ず、
ゾル大佐に

 宝石の在り処は何処だ?

と聞かれても、

 「アバラボロボロ、イバラボロボロ・・・」

と、意味不明な言葉(古代エジプト語らしい(笑))を発するだけだったのです。 


今、観ると、
“なんじゃ、そりゃ” って感じですが、
子供の頃は、テレビの前で大いに納得してました。
あのシーンで、
いきなりグッと惹きつけられましたね、物語にもエジプタスにも。


・・・で、
仕方がないので、ショッカーは、
古代エジプト語が解る歴史学者をリストアップし、
アジトへ連れ込んで、
エジプタスの通訳として協力させようと考えました。

ところが、エジプタスは、
アジトへ連れて帰らねばならない歴史学者を、次々に、得意の火炎放射で殺害してしまいます。

やはり、
言葉によるコミュニケーションが正確でない分、
ゾル大佐の指示が、しっかり伝わっていなかったのかもしれません(笑)。

戦闘員たちから、

 あの古代エジプト人、使えませんぜ、

と報告を受けたであろうゾル大佐は、

 こりゃ、いかん!

とばかりに、
今度は、
エジプタスや戦闘員たちに丸投げせず、
自らが歴史学者の拉致の実行に乗り出します。

その歴史学者の子供を人質にして、
 「我々に協力しないとこの子を殺すぞ」
と脅す、
お得意の、卑怯で非道な手口です。

これがまんまと成功し、
リストアップ3人目にしてようやく歴史学者をアジトへ連れ込むのですが、
歴史学者が2人も続けて同じ手口で殺された事を
ショッカーの仕業と睨んだ一文字隼人と滝和也が事件に介入していたため
邪魔をされ、
結局、ライダーにエジプタスが倒されて、今回も作戦失敗となるのでありました。

 

ショッカー、って、
めちゃくちゃ凄い科学力を持っているのに、
なんか、
やる事がいつもマヌケで、“詰め” が甘いンですよね(笑)。

でも、実はそこが、
『仮面ライダー』が僕ら当時の子供たちから支持された大きな要因。
そのツッコミどころ満載の展開は、
幼心には、解りやすくてスリリングなものでしたし、
同時に、緊張感や恐怖を絶妙に緩和して、
視聴者の子供たちが
作品世界に安心して酔いしれる事が出来るよう、機能していたのです。
でなきゃ、

 「アバラボロボロ・・・」って言いながら
        火を吹きつけて人間を殺すミイラ、

なんて、
そんな不気味で凶悪なもの、愛せるわけありませんから。

その怪人の姿形や性質が、
解りやすいお話の内容と絶妙に絡み合って、
強烈な魅力となり、子供たちのハートを掴むのです。

みんな好きでしたからね、エジプタス。 





バンダイ製 スタンダードサイズ、全長約24センチ。 
     
 



ポピー製 ミニサイズ、全長約11センチ。 


以前にも
何度かこの『ソフビ大好き!』に登場している、
子供の頃近所に住んでた、僕より1歳上の友達・モリサダ君は、
お金持ちの家の子ゆえ、
めちゃくちゃいっぱいソフビ人形を持っていたのですが、
小学校入学と同時に、
それらを全部、母親に捨てられてしまったため、
『仮面ライダー』放映時(僕が小学1年でモリサダ君が小学2年)は、
よく僕の家に来て、僕のソフビ人形で遊んでました。

モリサダ君が、

 「アバラボロボロ、イバラボロボロ・・・」

って真似しながら、
僕が当時持ってたエジプタスのミニ人形で遊んでいた姿を憶えています。 



また、
僕の母親も、捨てはしないものの、
小学校に上がってからはソフビ人形を基本的に買ってくれなくなったので、
エジプタスの人形も、
ミニサイズしか、僕は持っていなかったのですが、
3歳下の従弟が、スタンダードサイズを持っていたので、
その従弟の家へ行く度、遊ばせてもらっていました。

僕が、

 「アバラボロボロ、イバラボロボロ・・・」

って真似しながら、
エジプタスのスタンダード人形で遊んでいた姿を、従弟も憶えてくれているかな?(笑)



今回は、

 外国人と言葉によるコミュニケーションが素早く正確にとれない際に
 いつもエジプタスを思い出す、

っていうアルバイト先の日常から、執筆に至ったわけですが、
考えてみると、
アルバイト先の外国人の子たちの方が、エジプタスよりも、断然、優秀ですね。
片言なら話せるンですから、日本語が。

・・・ってか、
たとえ片言とはいえ、
外国人が日本語を話せる、って、凄い事なンだ、と
改めて思いました。
明日から、もっと尊敬の念をもって、彼らと接する事にします。


・・・あ、そうそう、
そういえば昨日も、
可笑しいながらも「凄いな」って感心してしまう事があったンでした。

ネパールの女の子で、
片言で日本語が話せる事はもちろん、
平仮名と片仮名以外に、漢字も、簡単なものなら少しは読める、
という賢い子なのですが、
“取扱注意” と書かれた荷物を、そぉーっと慎重に運んでいたので、

 「“取扱注意” も読めるの?」

って聞いたら、

 「アツカチューリ? ナンデスカ?」

と、解らない模様。

 あれ?読めないンだ。
 じゃあ、なんで、
 “取扱注意” が読めないのに
 取り扱いを注意しながらその荷物を運んでいたかのかな?

と思って、
理由を聞いてみたら、
“取扱注意” の下に、小さく “酒” と書いてあり、
それを読んで、
中身が日本酒の瓶だと判断して、割らないように気をつけていた、との事。

 “取扱注意” は読めなくても、“酒” は読める、

ってのが、
なんとも笑えるし、
注意書きが読めなくても品名を読んで、自身の配慮で正しく仕事をこなす、
彼女の心ある労働能力の高さに、感動した次第です。
素晴らしいと思いました。

それにひきかえ、やっぱエジプタスは・・・(笑)。

 


【余談】 
今回紹介した、
エジプタスのスタンダードサイズ人形、
実は、この『ソフビ大好き!』の連載でいつもお世話になっているゲイトウエイさんで、
20数年前に購入したものなのですが、
良心的価格で有名なゲイトウエイさんにしては
珍しく、立派な値段(笑)が付いていたので、
思わず、 
 「なんか高くない?」

と、失礼な質問をしてしまった事を憶えています。

それに対し、
店長の杉林さんは、

 「エジプタスは、いちばん好きな怪人なんで・・・」

と、
答えたのですが、
その時の子供みたいな表情が、とても印象的でした。 

 ああ、やっぱり、
   みんなエジプタスが好きだったンだなぁ・・・、

と思ったのと同時に、

 「そんな理由でぼったくるなよ!」

と、心の中で叫びました(笑)。
そこそこ相場の値段だっただけで、決して、ぼったくられたわけじゃないンですけどね(笑)。



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