真水稔生の『ソフビ大好き!』


第157回「愛する君は黄金色」  2017.2

コロッケが1個18円(税込20円)で売っている、
大変ありがたいスーパーマーケットが近所にあり、
100円で5個買ってきて、
缶ビールを飲みながら、今、一気に全部食べ終えたところです。ゲプッ。

そこで、ふと、

 まだ食べられるなぁ・・・、10個でも全然いけるゾ。
 いや、
 お腹がもっと空いてたら、20個以上いけるかもしれない。
 それだけ買っても500円でおつりが来る。
 よぉし、今度、試してみよう!

と思ったのですが、

 50歳を過ぎてやる事じゃないな、

と、すぐ我に返りました(笑)。

いやぁ、でも、
それくらい大好きなンですよねぇ、揚げものが。
コロッケのほかにも、
トンカツ、ハムカツ、メンチカツ、チキンカツ、海老フライ、牡蠣フライ、魚フライ・・・、
みんな大好き。
書いてるだけでヨダレが出てきそうです。

   
衣と中身が
油によって絶妙に絡み合って奏でる、心地良い食感と優艶な味のハーモニー、
その美しくもパンチの効いた味わいは、
舌と胃袋だけでなく心までもしっかりと満たし、僕に生きてる事の悦びを与えてくれます。
そして、
そんな圧倒的魅力をまるで象徴するかのような、あの芳しい黄金色の輝き・・・、
もう、たまりません!
最強の食べ物。

おつまみやおやつとしても
よく食べますし、
キャベツと御飯があれば、おかずとしてもガッツリいただきます。
ホント、大好きなンです。
揚げもの、サイコー!

ただ、
毎日食べると、体に悪いンですよねぇ、これが。
悩ましいところです。

健康のため、
何日か間を空けて食べるようにはしているのですが、
今日の、
10個も20個も食べようと思ってしまった
スーパーマーケットの “1個18円のコロッケ” のように、

 安く買えて手軽に食べられる、

というのが
なんともハニートラップ(笑)でして、
気をつけていないと、簡単に引っ掛かってしまいます。

誘惑は、日常生活に密着しています。
その最たる例が、
“コンビニのレジ横のホットスナックコーナー”。
あれは、いけません(笑)。
揚げものなんか買うつもりはなくても、
何か買い物をしてレジで会計する際には
必ずあの黄金色の輝きが視界に入ってきますので、
つい、
追加で注文してしまうのです。

それを思いとどまるのは、なかなかの試練。

 あぁ、食べたいけど、昨日食べたばっかりだしなぁ・・・。
 けど、いっか、1個くらい。
 おつりでちょうど買えるし・・・。

 いやダメだ!
 ここで気を許したらズルズル行ってしまう。我慢だ、我慢!

 でも、
 我慢するとストレスになって、
 逆に体に悪いかも知れないしなぁ・・・。

 たまになら、続けて食べてもいいよな。
 よし!
 明日から、また間隔空ける事にして、今日は食べちゃおう!
 
 ん?
 ダメだ、ダメだ!絶対ダメ!
 そんな事言ってたら、
 結局、毎日食べる事になってしまう。
 明日も明後日も同じ事思うに決まってるンだから。
 
 ちっきしょう、食べたいなぁ~~~。

・・・こんな狂おしい葛藤と、僕はしょっちゅう闘っています。

今日、
コロッケを5個も食べてしまったから、
最低でも、3、4日は揚げものを控えた方が良いと思うので、要注意。
危険回避のため、
今週は、もう、コンビニへは行かないようにするかな(笑)。

・・・あ~あ、

 揚げものを毎日食べると体に悪い、っていうのは実は間違いで、
 揚げものは、
 毎日食べた方が体に良い、
 食べれば食べるほど、
 血液がサラサラになって、癌や生活習慣病の予防になる、
 
な~んて医学的新発見、されないかなぁ~(笑)。


ところで、
コンビニのホットスナックコーナーと言えば、
昨年、
そんな揚げもの好きの僕にとって、とてもショックな事が起きました。
ファミリーマートとサークルKサンクスの経営統合に伴って、
僕が愛して止まなかったサークルKのハッシュドポテトが、この世から消えてしまったのです。

思わず、

 「そりゃないぜ、セニョリータ」

と嘆いてしまいました。

経営統合後の現在も
ハッシュドポテトは売られているのですが、
あれはファミリーマートで元々売られていたハッシュドポテトなので、
味と食感が違うンです。
それに値段も。
サークルKのハッシュドポテトが1個75円だったのに対し、
ファミリーマートのハッシュドポテトは1個90円。
15円も高いンです。
とことん「そりゃないぜ、セニョリータ」です。

まぁ、
ファミリーマートのハッシュドポテトも
充分美味しいンですけど、
サークルKのハッシュドポテトの方が好きだったンですよねぇ、僕は。
もう一生あれを食べられないのかと思うと、淋しくて残念で仕方ありません。

違うコンビニ同士がひとつになるなら、
両方の揚げものメニューをすべて残してもらいたいものです。

ファミリーマートは、
以前にも、
ココストアを吸収合併した際、
僕が愛してやまなかったココストアの甘海老のクリームコロッケを
この世から消してますからね。
あれも哀しかった。
ホント、
「そりゃないぜ、セニョリータ」なのです(・・・くどい? ってか古い?(笑))。


というわけで、
今回取り上げるのは、
僕と “黄金色の輝きを好んで食す” という共通点のある(笑)、
こいつです。   



黄金怪獣ゴルドン

『ウルトラマン』第29話「地底への挑戦」に登場した、
地底に棲息する、金鉱石が大好物な怪獣です。

ブルマァク製 スタンダードサイズ、全長約26センチ。

物語の冒頭で、
食料の金鉱石が底をついてしまったため空腹となったゴルドンが
地底から姿を現し、

 喰い物よこせ~っ!

とばかりに咆吼するシーンがありますが、
今観ると、
サークルKのハッシュドポテトや
ココストアの甘海老のクリームコロッケが食べられくなって嘆いている自分がダブり、

 わかるぞォ、ゴルドン、!
 食べたいよなぁ、黄金色の輝き・・・、

と、同情の念が湧いてきて、
なんとも切なく愛おしい気持ちになってしまいます(笑)。
このソフビは、
昭和40年代半ばに発売された商品で、
“いかにも怪獣のオモチャ” って感じがして、僕は好きなンです。

なんといっても、
実物の着ぐるみの
イモムシのような体節の繰り返しを、
らせん状に巻いた形で表現する、という造形アイデアが秀逸。

そのユニークな形状に、
甘い匂いがしてきそうなこってりとした黄色のカラーリングも相まって、
ずっと触って遊んでると、
なんだかコルネパンを手に持ってるような錯覚に陥り、
パクッとかぶりつきたい衝動にかられます(笑)。 
けど、冗談ではなくて、
そんなふうに
実物の怪獣とは直接関係無いところでもイメージが膨らむのが、昔の怪獣ソフビの醍醐味なンですよね。
そして、
自由に空想する事の面白さを子供たちに伝えているその醍醐味こそ、オモチャの本領。
オモチャは夢を育むものですからね。
それが、
“怪獣” という、ファンタジーの世界の生き物の人形ならば、尚更です。

造形もカラーリングも着ぐるみに忠実でない分、
実物のゴルドンの再現率は、
当然の事ながら100%を下回りますが、
ゴルドンという怪獣の魅力は、120%表現されています。
素敵な事だと思います。


     
  こちらは、
同じくブルマァク製で、
全長約10センチのミニサイズソフビ。

“コルネパン” と言えど、
なるべく実物のゴルドンのイメージを壊さぬよう、
その形も色も、
最低限の配慮はされていたと思われるスタンダードサイズの人形と異なり、
このミニゴルドンは、
後ろ足だけで立っちゃてる造形といい、
全身紫色のカラーリングといい、
実物の特徴をほとんど無視した仕上がりとなっています。 

・・・が、
乗りかかった船で
とことん擁護させていただくと(笑)、
四足歩行の怪獣でも、
ウルトラマンと格闘中には一瞬こんな体勢になる事もあるだろうし、
体色も、
地底の暗闇の中では、こんな色に見える事もあるかもしれませんので、
劇中のイメージは崩壊していないンです。

え?
ウルトラマンと格闘したのは
地底じゃなくて地上でだったじゃないか、って?

う~ん、じゃあ・・・、
そうだ!
色なんか何色だっていいンですよ、実は。
ゴルドン人形に限らず、オモチャ屋さんに並んでいたソフビ怪獣人形は全て、
僕ら子供たちには
キラキラ輝いて黄金色のように見えていたンですから。

・・・ダメ? こんなの(笑)。

あ、でも、
角には、
実物に忠実な、黄金色の塗装が施されていたようです。
ただ、
経年による顔料の銅成分の酸化によって変色しているし、
塗装自体がだいぶ剥がれてしまっているので、判りづらいですけどね。




時の流れとともに消えて無くなる黄金色・・・。
サークルKのハッシュドポテトや
ココストアの甘海老のクリームコロッケの悲哀がオーバーラップします(笑)。 
こうやって、
劣化さえも “味” となり楽しめるのは、
やはり、その怪獣人形が、
単なるスケールモデルではなく、“オモチャ” だから、だと思うンですよね。 



  これは、
ポピー製 キングザウルスシリーズ、全長約23センチ。

昭和50年代半ばに発売されたソフビですが、
現在でも充分通用するリアル造形。
60種以上あるキングザウルスシリーズの怪獣人形の中でも
1、2位を争う、カッコよさではないでしょうか。 
       
   
              首や脚に見られるシワが、
生き物としてのシワではなく、着ぐるみのシワを意識して表現されているし、
黄金色も、
全身ではありませんが、効果的に吹きつけてあり、
“実物の再現” をめざす、
新時代のソフビ人形のコンセプトが窺い知れます。

先述の、
“いかにも怪獣のオモチャ” なブルマァクのゴルドン人形とは
対照的なソフビ、と言えますね。


コルネパンゴルドンや二本足で立ってる紫ゴルドンのデフォルメを
散々称賛した手前、
このリアルでカッコいいゴルドン人形には否定的でなければ
矛盾してしまうかもしれませんが、
これまでこの『ソフビ大好き!』を読んできて下さった方なら御存知のとおり、
こっちも大好きなンですよねぇ、僕。
 
手にして遊ぶ子供たちに空想の余地を与えない反面、
怪獣の姿形や迫力だけでなく
物語の面白さも含めたところでの “映像” を、ストレートに甦らせてくれるので、
やっぱ胸がときめくし、
時代や表現法は異なれど、
ゴルドンという怪獣に対する愛や敬意が感じられるものである事には
変わりありませんから。

例えるなら、

 ブルマァクのゴルドン人形は、やんちゃだけど根は優しい子、
 ポピーのゴルドン人形は、おとなしい優等生、

ってトコですかね。
どちらも愛すべき子供。 優劣なんてつけられません。

僕のコレクションは、すべて、
我が子のように愛しい、大切な大切な宝物なのです。 


ところで、
ゴルドンが登場する第29話「地底への挑戦」は、
『ウルトラマン』全39話中、
子供の頃、特に印象的だった回なンです。

まず、科特隊について。
金山の地下洞窟に取り残された人の救助に
ムラマツキャップとイデ隊員が向かうも、
乗り込んだ地底戦車ベルシダーがゴルドンとの衝突で故障したため、
地上に戻れず、
車内で窒息死寸前まで追い込まれるシーンがあるのですが、
汗びっしょりになって苦しむ二人を観て、
人名救助や怪獣退治といった科特隊の仕事の凄さ・大変さを、強く認識させられたンです。

結果的にはウルトラマンによって助け出されましたが、
その任務が命がけである事を思い知り、

 科特隊って、カッコいいなぁ・・・、

って心酔しました。

当時、
僕はゴルドンのソフビは持っていなかったのですが、
以来、怪獣ソフビで遊ぶ際には、

 “地底戦車で地中に潜り、事故に遭ってもがき苦しむ隊員”
 ってのを自分で演じてイメージし、
 それをウルトラマン人形なりウルトラセブン人形なりが助けに来る・・・、

って展開を、毎回のように演出したものです。
それくらい、
僕の中では強烈だったンですよね、あの回のムラマツキャップとイデ隊員が。

次に、
ウルトラマンとゴルドンのバトル。
あれも、実に面白くて忘れられません。
なんといっても、
ウルトラマンがゴルドンの首に尻尾を巻きつけちゃうシーンに惹かれましたね。
尻尾と首を繋げられて
思うように身動きがとれなくなったゴルドンが
バランス崩して倒れちゃうのを観て、
“怪獣” という強くて怖い存在の中に
滑稽さや哀しみみたいなものがある事を、子供心に感じたのを憶えています。

あぁいう演出が、
『ウルトラマン』が子供にウケた大きな要因のひとつだと思うンですよね。

たぶん、
特撮シーンを演出なさっていた高野宏一さんが
その場で思いついたであろうアイデアだと思うのですが、
あんなふうに
ユニークな要素を息つまる格闘の中に1アクセント入れる事で
ちょっとした “和み” が生じて、
幼い心が
怪獣の恐怖や闘いの緊張を拒絶するのを防ぎ、
更には、
その異形なる者同士のバトルを
より魅力的なものに映し出す効果があるンです。

ゴルドン人形がコルネパンに似ている事に、通ずるものがありますよね。
凶暴な怪獣をただ凶暴に描くのではなく、
迫力を損ねない程度に
ちょっと “遊び心” を加える事で、
その怪獣の愛すべき内面的魅力が表現されているわけですから。

『ウルトラマン』は、
本編のドラマも特撮の格闘シーンも幼い視聴者の心に響いて残る、
一級品の子供向けテレビ番組であった、と
改めて痛感するのと同時に、
ブルマァクのソフビがその象徴であった事に、感動を覚えます。 
     
               
 
 
先ほど、
特撮好きの友人から電話があり、
用件とは別に、
偶然、この『ソフビ大好き!』の話題になって、

 「今月のネタは何ィ?」

と聞かれたので、
ゴルドンについて今ちょうど書いていたところであった旨を伝えたら、

 「ゴルドン、ってさぁ、
  科特隊やウルトラマンに倒されなくても、
  地球上の金の埋蔵量には限界があるンだから、
  どっちみち餓死しとったよね」

って言われました。

なるほど、そうかもしれません。
怪獣は、やっぱ可哀想な生き物なンですよね。

そこへいくと、僕は断然幸せ。
だって、
サークルKのハッシュドポテトや
ココストアの甘海老のクリームコロッケが消えて無くなってしまっても、
ほかにも美味しい揚げものが、
まだまだいっぱいあるンですから(笑)。
   








手にしているのは、
ファミリーマートの
ホットスナックコーナーの商品の中で僕がいちばん好きな
鶏つくね串タレ(軟骨入り)と、
今年に入って
よりジューシーな食感にリニューアルされたスパイシーチキン。

美味いっ!

 
 
誘惑に負けて食べ過ぎないよう気をつけながら、
これからも、
黄金色の輝きを愛し、
健康で幸せに生きていきたいと思います。
どっちみち生きられない運命だったゴルドンの分も・・・。




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