真水稔生の『ソフビ大好き!』


第139回 「男の子の誇り」  2015.8

いやぁ、
満島ひかりさんは
何をやっても素晴らしいですねぇ。

・・・え?
あ、スイマセン、いきなり。
現在、日本テレビ系で放送中の実写版『ど根性ガエル』における、
“ピョン吉の声” の事です。

あの感性、あの表現力・・・、凄いですよね、ホント。

『ウルトラマンマックス』のアンドロイド役の時からずっと
才能豊かな人だとは思っていましたが、

 天才、っているんだなぁ・・・、

と改めて感服しています。

昔のアニメ作品が実写化されると、
やれ「夢を壊す」だの、やれ「イメージが違う」だの、と
なにかと酷評されがちですが、
満島さんのあのピョン吉なら、誰も文句は言わないでしょう。

夢を壊すどころか、夢を甦らせてくれましたよ。
子供の時に読んでた単行本を引っぱり出してきて、読み返しちゃってますもん。
今日は土曜日なので、
午後9時からの放送を楽しみに待っているところですが、
頭の中は、
もうとっくにお話の世界へ行っちゃってます(笑)。





ところで、
『ど根性ガエル』といえば、
最初のアニメ版が放送されていた頃、
僕は小学校の低学年でしたが、
ちょうど今頃の季節、
友達数人と田んぼでカエルを捕まえた帰り道に
夕陽を見ながら、
みんなで
番組のエンディング曲を合唱した事を憶えています。

あの、

 ♪男のい~じを 見せるでや~んす
    カラスが鳴いて~ 夕やけこやけ~、

ってヤツですね。
手にはカエル、目の前には夕陽、で
ふと浮んだのでしょう、誰からともなく歌いだしました。

それで、最後の

 ♪ざまぁカンカン カッパのへぇ~

を叫んだ際、
全員で大爆笑となったンです。

何がそんなに笑えたのか今ではよくわかりませんが(笑)、
そんな思い出のおかげで、
『ど根性ガエル』というと、すぐに、
その、近所の田んぼにカエルを捕まえに行っていた事を思い出すンです。


なので、
今回はカエルの話。

以前にも述べた事があるように、
僕は子供の頃、
昆虫や爬虫類(カエルは両生類ですが)といった生き物が大好きでした。
今では
見るのも嫌なくらい苦手なので(もちろん触れません)自分でも不思議なのですが、
母親が、

 この子は、将来、絶対その道に進む、

と思っていたほど、
何か生き物を捕まえてきては、慈しむように飼っていました。

中でもカエルは、
本当によく捕まえました。
カブトムシやクワガタムシを探しに森や林に行く時と違い、
田んぼに行けば
カエルは必ず目の前に現れてくれましたからね。
実に身近な生き物でした。

家から歩いて5分くらいの所に神社があり、
その裏の雑木林を抜けると
畑と草むらになってて、
その中を更に進んでいくと、
見渡す限り田んぼが連なった、とてつもなく広い敷地に出ました。
そこに、
いろんなカエルがいたンです。

トノサマガエル、ウシガエル、
アカガエル、ヌマガエル、ダルマガエル・・・。
また、
生態の違いから
田んぼにはいませんでしたが、
途中の畑と草むらで、アマガエルやヒキガエルを見かける事もありました。
言わばその一帯は、“カエルの国” だったわけです。

しかも、
カエルだけではありません。
田んぼの脇には用水路が流れていまして、
そこには、
ドジョウ、フナ、
アメリカザリガニ、ヌマエビ(スジエビ?)、
タイコウチ、ミズスマシ、ヤゴ、マツモムシ、コオイムシなど、
いろんな生き物がいました。
みんな捕まえて、飼いました。

時々、
ヘビと遭遇して驚いたり、ヒルに血を吸われたりはしましたが、
あの、
“畑と草むらを抜けた田んぼと用水路”
という空間は、
カエルをはじめとするいろんな生き物が捕まえられる、
当時の僕にとって “パラダイス” だったのです。
長靴履いて、
バケツとタモ網を持って、
胸を躍らせながら、毎日のように出かけたものです。

懐かしいなぁ・・・、
ってか、
やっぱ楽しかったなぁ、子供の頃は。

そりゃぁ、

 ♪ざまぁカンカン カッパのへぇ~

で大爆笑出来るくらいなのですから(笑)。

純粋無垢。
いろんな事に新鮮な驚きがあって、物事に対して素直に熱中出来る・・・、
そんな真っ新な心をしていたンですよね、あの頃。
昆虫や爬虫類といった異形な生き物を、
気色悪いと思わず、興味や好奇心のまま普通に接する事が出来たのも、
それ故でしょう。

・・・とうに忘れてしまったなぁ、そんな感覚。


なんか、
独りで勝手に遠い目をしちゃってますが(笑)、
話を “カエル” に戻します。

女の子は、
ほぼ100%嫌ってましたが、
僕ら男の子には、
なかなか魅力的な生き物でしたね、カエルは。

 オタマジャクシに四肢が生えて、尾が段々と短くなっていく、

という成長過程も
わかりやすくて面白いし、
鳴き声や格好が真似しやすくて、親しみがありましたから。
グロテスクで愛嬌がある、
というのは、怪獣にも通じていますしね。

人気があったのは、
やはり、王道のトノサマガエルか、
デカくて迫力のあるウシガエル、
あるいは、その逆の、
小さくて可愛いアマガエル、といったところでしたでしょうか。

僕はといえば、ヒキガエル派。
・・・ヒキガエル、俗に “ガマガエル” と呼ばれているヤツですが、
人間が近づいても
ほかのカエルたちのように跳んで逃げたりしないし、
触っても一切動じず、
お尻を押してやると、ようやく1歩だけ、面倒くさそうに進む、
という、
あの、なんともふてぶてしい感じが、ユーモラスで好きなのです。

周りを気にして自分自身を見失ったり、
狭い視野で生き急いでいたりする人間様たちよりも、
よっぽど賢い気がします(笑)。

まぁ、そんな屁理屈はともかく、
“異形なるもの” に惹かれる習性があるンですよね、男の子は。
先ほど、
女の子にはほぼ100%嫌われていた、とか、
グロテスクで愛嬌があるところが怪獣に通じてる、とか、述べましたが、
カエルの、

 見た目の悪さで “悪者” と判断される哀しみ、

みたいなところが、
たぶん、生理的に愛おしいンだと思います、男の子にとって。

そういえば、
先日お亡くなりになった愛川欽也さんが
若い頃に着ぐるみの中に入って演じておられた、
“ロバくん” という
可愛らしいキャラクターが
『おはよう!こどもショー』というテレビ番組の中で人気を博していましたが、
それに対抗してヒール的な役回りをするのが、
“ガマ親分” というキャラクターでした。

もちろん、モチーフはカエルで、
色は汚いこげ茶色、
頭の形はジャガイモみたいにイビツ、
という、
可愛らしさの欠片も無い容姿をしていました。

カエルはブサイクな悪役、と
最初から決め付けて存在させられているわけで、心無い設定です(笑)。

でも、
そういうところに、
女の子や大人に媚びてない “カッコよさ” みたいなものを感じるンですよね。

僕は断然 “ガマ親分派” でした。

「ロバガマ対決」なんてコーナーがあって、
内容は一切忘れてしまってますが、
いつもガマ親分を応援してた事だけは憶えています(笑)。


カエルを愛せるのは、“男の子の誇り”、そう思います。


  ガマギラー

バンダイ製 スタンダードサイズ、全長約25センチ。

『仮面ライダー』の
第34話「日本危うし!ガマギラーの侵入」に登場した、
ヒキガエルの怪人。


劇中、
五郎君が可愛がるように手にしていたカエルを、
立花レーシングクラブのお姉さんたちが
悲鳴をあげながら嫌ってたシーン、ありましたよね、確か。
まさにあれが、カエルの哀しみ。

女の子から嫌われれば嫌われるほど、
僕ら男の子は、カエルを擁護したくなります(笑)。

  ガマギラーは、
2本の角の根元から、
人間の思考を狂わす、
赤い神経ガスを出すのですが、
この人形は、
角の根元と角全体に
吹き付けの塗装が施されているので、
ちょうど、
“その神経ガスを出しているところ”
と解釈し、それに見立てて楽しむ事が出来ます。

色が違いますけどね(笑)。 
 

    印象的だったのは、やはり、“死に様” 。
通常のショッカー怪人のように
ライダーキックを喰らって果てるのではなく、
セスナ機に乗って逃亡を図ったところを
ライダージャンプで体当りされ、セスナ機ともども空中爆破、
という最期でした。

人間に押しつぶされても
シャツの中でどっこい生きてるピョン吉と違って、
随分、
地味でリアリティのある生涯でした(笑)。 


  こちらは、
同じくバンダイ製でミニサイズ、全長約11センチ。

このように、
スタンダードサイズと同様のカラーリングのタイプと
黒いタイプの人形が存在しますが、
ヒキガエルにも、
黄褐色のものや黒いものがいますから、
そう考えると、面白いバリエーションだと思います(笑)。
 


     







女の子や
当時の大人たちには
まず理解してもらえないだろうけど、
カッコよくて可愛くて、実に素敵な人形です、こいつら。
 



 
幼い頃のアルバムより。

通っていた幼稚園の行事に “芋掘り” があったのですが、
土を掘っていたら、
冬眠中だったカエルが出てきて、めちゃくちゃ喜んだのを憶えています。
アマガエルとヒキガエルでした。

母親も、
芋掘りに出かけた我が子が
芋なんかそっちのけで
捕まえたカエルを嬉しそうに掲げているのが可笑しかったのか、
“袋の中はカエル” とわざわざ記しています(笑)。 





 




先程も述べましたが、
僕が昆虫や爬虫類などといった生き物を苦手になっちゃったのは、
大人になって心が汚れたからだと思っています。
純粋無垢では、なくなっちゃたンですよね。

当たり前の事だから仕方ないンですけど、
僕は、そんな自分がすごくイヤなのです。
だから、
怪獣の人形なんかに
執着しているのかもしれません。
ありきたりの大人になっちゃった事を否定したいンですよね。

怪獣の人形を集めて、熱く愛して、

 僕は異形なるものがこんなに好きなんだ!

って他者に(自分自身にも)アピールする事で、
“男の子の誇り” を
なんとか自分の中に残そうとしている・・・、そんな気がします。



・・・あ、もうすぐ9時だ。
そろそろテレビの前に行きたいので、
今回はこのへんで失礼させていただきます。
毎度お付き合い、
どうもありがとうございました。

それでは、

 バハハァ~イ!

って、それはまた違うカエルか(笑)。






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