真水稔生の『ソフビ大好き!』


第224回「妙技 “茄子のへた” ~パーツ分けに見るブルマァクの凄さ~」  2022.9

激しい暑さもようやく治まり、
茄子の美味しい季節になりましたね。
まぁ、べつに、茄子は一年中美味しいンですけど(笑)、

 秋茄子は、種が少なく身が締まっていて美味、

という情報に脳を支配されて、
春や冬よりも、やはりこの時季に、茄子を食べたくなる事が多い僕です。

かく言う今日も、
さきほど飲んだビールのおつまみが、“茄子の煮びたし” 。
秋を感じながら、美味しくいただきました。
   

ところで、
昔からずーっと思ってる事なのですが、
ブルマァクのザザーン人形、って、
スタンダードサイズもミニサイズも、頭部のパーツが、なんか “茄子のへた” みたいですよね。
       
醜いヘドロ怪獣なのに、
この “茄子のへた” みたいな頭部のおかげで、ずいぶん可愛らしい印象の人形に仕上がっています。

・・・ってか、
そもそも、なんでこの部分をパーツ分けしたのかが謎であり、
ブルマァクというメーカーの不思議な魅力、延いてはアンティークソフビの奥深い魅力を、
僕は感じずにはいられません。


そんなわけで、今回は、
ブルマァクのザザーン人形を紹介する事にします。

まずは、スタンダードサイズから・・・。 
3体とも、全長約21センチ。

ザザーンは、
『帰ってきたウルトラマン』の第1話「怪獣総進撃」に
タッコングやアーストロンとともに華々しく登場しながらも、
名曲(笑)『怪獣音頭』の中で

 ♪い~つも泣いてる 弱いやぁつ~~~

と歌われているとおり、
物語序盤で早々にタッコングに倒されてしまった(よって帰りマンとは闘わず仕舞いの)弱い怪獣で、
僕ら当時の子供たちには、ほとんど人気が無かったンですよね。

全身が腐った海藻で覆われたその姿も、
まるで浜辺のゴミの塊が巨大化したようで気持ち悪く、全然カッコいい怪獣じゃないンです。
       
   



なので、
それをオモチャの人形にしたところで
たいした売り上げは見込めないゆえ、
商品化の対象からは外れされそうなものなのに、
こうしてちゃんと、ソフビ怪獣人形になっているンですよねぇ。

当時、これを欲しがった子供は、ほとんどいなかったでしょうけど、
今は、アンティークソフビのコレクターとして、
僕はこの人形の存在を、ありがたく思います。
だって、蒐集対象は多ければ多いほど愉快だし、
マイナーな怪獣がソフビになっているのは、やはり嬉しいものですから。
勢いで何にでもGOサインを出してしまうブルマァクというメーカーの
その大味な社風(笑)に感謝、ですね。
しかも、
いろんな塗装のヴァージョン違いが、
蒐集生活を、それこそカラフルに彩ってくれるので、これまた嬉しい。
まだまだ違うカラーリングのものが存在するし、楽しくて仕方ありません。
頑張って、もっともっと集めよ、っと。
   

実物のザザーンは、
目が、頭部から長い前髪の如く垂れ下がった海藻に阻まれ、
はっきりと確認出来ませんし、
体色も、こんなカラフルなものでなく、
ほぼほぼモスグリーン一色の、地味な色具合をしていますので、
この人形の造形や彩色を
昭和ソフビ独特の過度なデフォルメだと思う人もいるかもしれませんが、
そうじゃないンですよね、実は。
ザザーンの着ぐるみは、
劇中に登場したもの以外に、最初に作られたNG版があり、
それは、目もはっきり確認出来るし、体色もわりとカラフルで、
この人形は、そっちをモデルに作られているのです。
なので、造形も彩色も、
結構、実物に忠実に作られてるソフビ、なンですよね、これ。
まぁ、“茄子のへた” みたいな頭部を除いては・・・、ですけど(笑)。
 

それにしても、ホント、
なんで、こんなところでパーツを分けたのでしょう・・・?


NG版着ぐるみの資料写真を見て、
帽子をかぶってる怪獣、だと思ったか(思えないけどなぁ(笑))、
あるいは、
担当者が焼き茄子か茄子の天ぷらでも食べた際にピンとひらめき、
それこそ本当に茄子をイメージして作られたか・・・(んなわけないだろうけど(笑))。

何にせよ、
凡人では思いつかない、天才的センスだと思います。
  凄いぞ、ブルマァク!







 



続きましては、ミニサイズ。
このように、成形色違いで2種、確認されています。
 




2体とも、全長約10センチ。
 
   
“茄子のへた” みたいな頭部が、
先述のスタンダードサイズの人形以上の “帽子感” を醸し出しているので、
なんか、サンタクロースに扮したおじさんが、
クラッカーを鳴らした後に飛び出た無数の紙テープを被って
優しく微笑んでいるようにも見えて、気持ちが和みます。
クリスマスツリーに、
色とりどりのオーナメントボールや雪だるまの人形など一緒に飾り付けても、
なんら違和感は無いでしょう。
実に可愛らしい。 サイコー!

今で言う “ゆるキャラ”に、近いものがありますね、この魅力は。

“ゆるキャラ” という言葉やその概念は、
時代が平成になってから、御存知みうらじゅんさんが生み出したものですので、
ブルマァクは、それを約30年、先取りしていたわけです。
それも醜いヘドロの化け物で・・・。

つくづく、ブルマァクって凄い。





さてさて、
原稿を書きながら

 お腹が空いたなぁ・・・、

って思ったら、そろそろ晩御飯の時間でした。
  今日は、麻婆茄子丼にします。

・・・え? さっきも茄子食べたのに、そこまでテーマに合わせなくてもいい?
いえいえ、
冒頭でも述べましたように、
茄子は、べつに今の時季だけじゃなく、いつ食べても美味しいのでね、
麻婆茄子丼は、
季節にもブルマァクのザザーン人形にも関係なく、

 ♪い~つも食べてる 美味いやぁつ~~~

なのです(笑)。 




               前回へ               目次へ               次回へ