真水稔生の『ソフビ大好き!』


第148回 「改名の是非」  2016.5

台湾ラーメン。
名古屋発祥の食文化、いわゆる “名古屋めし” のひとつです。

元々は、
味仙(みせん)という台湾料理店の人気メニューでしたが、
現在では、
名古屋の中華料理店なら、
だいたいどこでも食べられます。
それほど名古屋では浸透し愛されているラーメン、という事になりますね。
もちろん僕も好きで、よく食べます。
唐辛子とニンニクで
じっくり煮込まれた挽き肉の辛みとコクが、
スープに溶け込み、
麺に絡み、
なんとも美味しいのです。   
面白いのは、
これが、
“台湾ラーメン” といいながら、実は台湾のラーメンではなく、
冒頭でも述べたように、
“名古屋めし” だという事。

台湾料理店で生まれたのでその名が付いただけで、
“台湾ラーメン” は、
べつに台湾料理というわけではなく、
濃い味・辛い味が好きな名古屋人の味覚に合うよう考案された、
名古屋のご当地ラーメンなのです。

ってか、
そもそも台湾には
こんなラーメンは存在しません。
アメリカにアメリカンコーヒーが無いのと同じなのです。

紛らわしいので、
“名古屋ラーメン” に改名した方がいいのかもしれませんが、
これだけ浸透してしまったら、もう手遅れですかね(笑)。

あ、そうそう、
激辛が苦手な人のために辛さを少し抑えた、

 “台湾ラーメン アメリカン”

なるものも存在します。
いったい、どこの国の料理なのでしょう?(笑)

やっぱ、
誤解や混乱を避けるために、
“名古屋ラーメン” に改名すべき、なンじゃないかなぁ・・・。

だって、
思えば、“ソープランド” も、
今から30年くらい前に “トルコ風呂” から改名されましたけど、
当初は、

 浸透しないのでは?

と心配されたものの、
わりとすぐ浸透して定着しましたし、
何より、誤解や混乱でトルコの人たちに迷惑をかける事がなくなりましたからね。

まぁ、
名古屋のご当地ラーメンの名前が “台湾ラーメン” だからといって、
台湾の人たちは
べつに迷惑しないかもしれませんが(笑)、
誤解や混乱を招かない名前の方が、スッキリするのは間違いないです。

それに、
“名古屋” をアピールする上でも、
“台湾ラーメン” でなく、“名古屋ラーメン” って名前にした方がいいのかも・・・、

な~んて
どーでもいい事を真剣に考えながら(笑)麺をすすっていたら、
ふと、

 “台湾ラーメン” は台湾には無い・・・、
 そういえば、
 キングザウルスⅢ世って、キングザウルスシリーズに無いな、

と思い出しました。


これまでにも何体か紹介してきましたが、
キングザウルスシリーズとは、
昭和50年代にポピーが発売した、
それぞれの足の裏に
足型がモールドされているのが特徴の、ソフビ怪獣人形です。

ウルトラ怪獣を80体近くソフビ化しながら、
人気怪獣であるキングザウルスⅢ世をラインナップ入りさせなかったのは、
やはり、
その商品名のせいでしょう。
キングザウルスシリーズでキングザウルスⅢ世が発売されたら、
なんだか、
キングザウルスⅢ世のためのシリーズ、って感じになってしまいますもんね。

おそらく、
最初、怪獣ソフビをシリーズで発売しようとした際に、

 強そうでカッコいい商品名を・・・、

と考えてのネーミングだと思いますが、
ウルトラ怪獣をメインに扱うのですから、
帰りマン怪獣に “キングザウルスⅢ世” という名前の怪獣がいるくらいの事は
事前にリサーチしておいてほしかったものです。

ブルマァクやバンダイからは、
当然のごとくキングザウルスⅢ世はソフビ化されていますから、
それがポピーにだけ無いのは、
なんとも残念な話。
“キングザウルスシリーズ” から、
通称だった “足型シリーズ” に正式に改名してでも、
キングザウルスⅢ世のソフビ化を果たしてほしかったですね。


でも、
キングザウルスⅢ世自体、
上原正三さん脚本の
第4話『必殺!流星キック』に登場した古代怪獣でありながら、
元は、

 諸事情で不採用となった伊上勝さん脚本のエピソードに登場する、
 古代アトランティス人に
 品種改良された怪獣・キングザウルスの末裔(ゆえに “Ⅲ世”)、
 という設定の怪獣、

との事ですので、
違う脚本家の違うお話に登場する事になったのに
改名されずそのまま使われた事を考えると、
はじめから、
“キングザウルス” というその名前に
“因縁” を背負って生まれてきたキャラクターだった、と
言えるのかもしれません。   

 






 キングザウルスⅢ世
 ブルマァク製 スタンダードサイズ。
 全長約21センチ。

  四足歩行の怪獣を
  無理矢理立たせてはいますが、
  カッコいい造形です。

  皮膚の表面の処理まで、
  実物の着ぐるみを意識したものになっていて、
  ブルマァクの洗練されたセンスと、
  マルサン造形からの脱却に成功した、
  鮮やかな独自性を強く感じます。
   

   

   




こちらは、
同じくブルマァク製で、 ミニサイズ。
全長約10センチ。 

青と赤、2種類の成型色を確認。


  この2体は、
バンダイ製 ウルトラ怪獣シリーズ、全長約23センチ。

上は、
平成2年にビデオとセットで発売されたもの。いわゆる初版です。

ビデオの内容は、
アトラク用の着ぐるみ怪獣たちが何体も登場し、
ウルトラ兄弟のお面を貼りつけた藁人形に釘を打ち込んだり、
ジムみたいな場所で体を鍛えていたり・・・、
という、
ずいぶん幼児向けなものでしたが、
高野宏一さんと鈴木清さんが共同で演出・編集を担当した、
由緒正しき(笑)作品でした。

少し遅れて、
人形の方だけ単品で発売され、
翌年か翌々年、
下のカラーリングに変更された記憶があります。
 
 
それにしても、
第4話「必殺!流星キック」の物語冒頭で、
キングザウルスⅢ世が
いきなり帰りマンを敗北させたのは、圧巻でした。

常食とするウランをエネルギーに口から放射能光線を吐くほか、
2本の角からも光線を発し、
その光線はバリヤーにもなって、
スペシウム光線をはじめとする帰りマンのあらゆる光線技をはね返しました。
帰りマンが一瞬ひるんだ、と見るや、
突進してその2本の角を帰りマンの膝上辺りに突き刺し、あっという間に戦いを制したのです。

当時小学1年生だった僕は
そのバトルシーンを観て、

 「強いなぁ、この怪獣・・・」

と、思わずつぶやき、
キングザウルスⅢ世のファンになってしまったものです。

よく考えたら、
放射能を吐く恐竜型怪獣(=ゴジラ)に
光線やバリヤーを発せられる角が生えてるわけですから、
そりゃあ、強いに決まっていますよね(笑)。 
         
最終的には、
帰りマンが特訓して生み出した流星キックで角をへし折られ、
バリヤーで身を護る事が出来なくなったところに
スペシウム光線を放たれて息絶えるわけですが、
四足歩行の怪獣としては、
『帰ってきたウルトラマン』の中だけでなく、
『ウルトラQ』、『ウルトラマン』、『ウルトラセブン』から通して考えてみても、
ぶっちぎりで強敵な、
いちばんカッコいい怪獣だったと思います。 
       
   
 
ただ、お話の中で
当時ひとつだけ違和感を覚えたのが、
ラストの加藤隊長の言動です。

戦いが終わった後、
郷秀樹をはじめとするMAT隊員たちに、

 今回は、MATとウルトラマンのチームワークの勝利だ!

みたいな事を言うのです。

帰りマン(郷秀樹)が、
独りで特訓して、
独りでキングザウルスⅢ世を倒したのに、

 MATは関係ないだろ?

と子供心に思ったものです。

大人になってから視聴してみても、
やっぱり、
帰りマンが独りで頑張って、独りで勝利してて、
MATなんて何も活躍しておらず、同じ事を思いました。

ウルトラマンの手柄に無理矢理乗っかてくる加藤隊長に、
郷秀樹は笑顔で応えていましたが、
絶対、腹の中で、

 「なんて卑怯で図々しいンだ、地球人は・・・」

と思ったに違いありません(笑)。 
                     
                   
 
・・・そういえば、
“帰ってきたウルトラマン” も、
改名ではありませんが、
番組終了後何年も経ってから、“ウルトラマンジャック” って名前が付けられましたね。

今でも “帰りマン” とか “新マン” とか、って呼ぶ僕らの世代の人間には、
全くと言っていいほど浸透していませんけど(笑)。

 ・・・そうだ。
やっぱ、
台湾ラーメン は “台湾ラーメン” って名前のままの方がいいな。

キングザウルスⅢ世が
脚本や設定が変わっても改名されなかったのは、
その名前に
諸事情を圧倒するパワーがあったからでしょうから、
それと同じで、
もはや “台湾ラーメン” って聞いただけで唾液が出てくるくらいパワーを得た名前に、
今さら変なケチつける必要はありませんもんね。

それに、
もし、“名古屋ラーメン” に改名して、
“ウルトラマンジャック” みたいに全然浸透しなかったら、なんだか名古屋がミジメだし・・・(笑)。



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