真水稔生の『ソフビ大好き!』


第127回 「救う光・導く光」  2014.8


“思い出し笑い” ならぬ、“思い出し泣き” をしてしまいました。
それも路上で・・・(恥)。

なぜかと言いますと、
『おらあガン太だ』の事を思い出したからであります。

『おらあガン太だ』とは、
『少年探偵団』のゴムカン役や
『5年3組魔法組』のガンモ役も演じた名子役・簾内滋之さん主演のテレビドラマで、
僕が小学4年生だった、
昭和49年の夏から翌春にかけて放送されていた番組です。

先ほど、
近所のスーパーで買い物した帰り道、
夏休みを謳歌すべくとても楽しそうに自転車を漕いでいる数人の小学生とすれ違い、
気づけば、

 ♪ペダルを踏むと〜 世界が動き出すぅ〜

って口ずさんでいたのですが、
それは、
『のんびり自転車』(作詞:中山千夏 作曲:端田宣彦 歌:こおろぎ'73)という歌で、
その『おらあガン太だ』の主題歌。

小学生たちの生き生きとした笑顔に癒やされながら
何気なく歌っていただけなのに、
『おらあガン太だ』の或る回を思い出し、思わず涙が溢れ出てしまったのです。
それは、
こんなお話でした。


  両親を亡くしたガン太(田舎で育った10歳くらいの男の子)は、
  東京で自転車屋を経営している叔父さん夫婦に引き取られ、暮らしています。
  叔父さん(演じるは玉川良一さん)も
  叔母さん(演じるは元祖ゴジラ女優(笑)の河内桃子さん)も、
  とても優しくいい人で、
  ガン太を我が子のように可愛がり、
  叔父さん夫婦の本当の子供である女の子(7、8歳だったかな?)も
  ガン太を兄のように慕っていました。
 
  或る日、ガン太は、
  その女の子や友達数人と一緒にサイクリングに出かけるのですが、
  予定通りの時間に
  家に帰る事が出来なくなってしまいます(道に迷ったか、何か事件が起きたか、理由は失念)。

  叔父さん夫婦をはじめとする親御さんたちは、
  心配でたまりません。
  今みたいに携帯電話が無い時代ですので、
  本人たちと一切連絡が取れず、
  事故にでも遭ったンじゃないか、誘拐されたンじゃないか、と大騒ぎになります。

  結局、
  夜遅くに、どうにかガン太たちは
  叔父さん夫婦の経営する自転車屋の前で待っていた親御さんたちのところへ
  無事帰ってくるのですが、
  そこからが、このエピソードの見どころ。

  友達たちは、みんな、
  「無事で良かった」と安堵して喜ぶお父さんやお母さんに抱きしめられ、
  それぞれの家へ帰っていきます。
  ガン太の叔父さん夫婦も、
  当然、子供たちが無事に帰ってきた事に安堵し喜ぶのですが、
  叔母さんは、
  なんとガン太には目もくれず、
  自分の本当の子供である女の子の方だけを抱きしめて、家の中に入ってしまいます。

  それを見て、
  ひとり残されたガン太は、
  自分にだけ親がいない事を改めて実感し、とても淋しそうな顔をします。
  実に切ないシーンです。
  いつも元気で明るいガン太が
  そんな暗い表情を見せるだけでも胸が痛くなるのに、
  それが、
  普段から自分の娘だけを可愛がって
  ガン太には辛く当たっているような継母ではなく、
  ガン太を我が子のように可愛がってくれていた叔母さんだけに、悲しさ倍増なのです。

   あんなに優しい叔母さんも、
   結局は、
   自分の本当の子供じゃないガン太の事なんかどーでもいいンだぁ・・・、

  と
  僕はテレビの前でショックを受けました。

  でも、その直後、
  ガン太は、ふと何か視線を感じます。
  気がつくと、
  叔父さんがガン太をジッと見つめていました。

  ガン太と目が合った瞬間、叔父さんはポツリとつぶやきます。

   「・・・馬鹿野郎、心配するじゃねぇか」

  驚くガン太。

   「・・・おらの事、心配してくれたのか?」

  叔父さんは少し笑みを浮べて答えます。

   「当たりめぇじゃねぇか」

  思わず叔父さんに抱きつき、大泣きするガン太。
  そして叔父さんは、
  そんなガン太を、温かい笑顔で抱きしめるのでした・・・。


めちゃくちゃ感動しました、当時。
番組が終わっても涙が止まらなかった記憶がありますが、
まさか、
40年後も
思い出して泣いてしまうとは・・・。

あぁ、もう一度観たいよぉ〜っ! 
DVDかBD、出ないかなぁ。


・・・と、
そんなわけで、
帰宅した今、この原稿を書いていた次第であります。

が、しかし、
ここまで書いて、
一旦、筆が止まってしまいました。

というのも、
この流れで紹介すべき『おらあガン太だ』関連のソフビが、
当時発売されていないからです。

 最初からわかっとる事だろ!?

と言われそうですが、
思わず泣けてきてしまったこの感情を
どうしても誰かに伝えたく、勢いで吐き出してしまったのです。
それに、
感覚だけで無計画に生きてる僕ゆえ、
書き出してしまえばなんとかなるだろう、という楽観もありましたし・・・。

でも、
簾内滋之さん繋がりの、
『少年探偵団』関連や『5年3組魔法組』関連のソフビも存在しませんので、
得意のこじつけ(笑)も、今回は不可能。
完全に行き詰まりました(汗)。

もどかしいです。
子供向けとはいえ『おらあガン太』はホームドラマなので、
登場人物が人形として玩具化されていなくても無理はありませんが、
『少年探偵団』と『5年3組魔法組』は、キャラクターもの・特撮ドラマですからねぇ・・・。
BD7のメンバーやロボター7、
そして怪人二十面相、
5年3組の仲良し5人組と彼らが乗るマジッカー、
そして魔女ベルバラ、
何かひとつでもいいから、
ソフビになっててくれたらなぁ・・・、って思います。

頼みのブルマァクも、
『少年探偵団』や『5年3組魔法組』の放送当時(昭和50年代のはじめ)は
潰れかかっていたから(失礼な言い方(汗))、
全盛期のような勢い、
あの、いたずらになんでも商品化する(もっと失礼な言い方(笑))パワーが、
もう無かったンだろうなぁ・・・。
残念。

 あぁ、どうしよう、今回のソフビ・・・。
 
 う〜ん、困った!


・・・と
コレクションルームを見渡したその時、
この光る瞳と目が合いました。


・・・そう、
ダイヤモンド・アイです。

『ダイヤモンド・アイ』は、
昭和48年の秋から翌春にかけて放送されていた、
川内康範先生原作の特撮ヒーロー作品ですが、
これに、
ガン太を演じる以前の簾内滋之さんが出演されていたのを思い出しました。
しかも、
ガン太の叔父さんを演じた玉川良一さんも警部役で出演。
先述した『おらあガン太だ』の、
あの、涙々の名シーンを演じたお二人が、揃って出演されていたのです。

いやぁ、これはもう、
『少年探偵団』や『5年3組魔法組』よりも濃い繋がりで
『おらあガン太だ』とリンクする番組。
主役のヒーローであるダイヤモンド・アイの人形は、
今回紹介するに相応しいマイ・コレクションと言えるでしょう。

 よしっ、これで行こう!

ってわけで、
せっかく書き始めた原稿、ボツにしなくて済みました(笑顔)。



        ポピー製、全長約13センチ。

目とベルトのバックルは、
本体とは別パーツで、ダイヤガラスが接着してあります。

でも、今の僕には、
ガラスではなく、
本物のダイヤモンド・・・いや、それ以上に輝いて見えます。
紹介すべきソフビが見当たらず(思いつかず)呆然としかけていたところを、

  「私がいるじゃないか」

とでも言わんばかりに僕の目に飛び込んできた、神々しい “光” だからです。
                     
               そういえば、
   ダイヤモンド・アイは、
   正義感溢れるジャーナリスト・雷甲太郎が
   人間の力ではどうする事も出来ないピンチに陥った際に、
   ダイヤモンドの中から現れる全能の神の遣い。
   時を超えて、
   原稿が進まない僕のピンチをも救いに来てくれたのでしょうか・・・(笑)。
   神様、ありがとう。

   まさに、

    ♪見たか 見えたか ダイヤが走るぅ〜
    ♪キラキラキラキラ ダイヤが光るぅ〜
    ♪神の心の ダイヤが走るぅ〜

   ですね(笑)。



       

ポピー製、全長約10センチ。

こちらのタイプは、
目もベルトのバックルも
ソフビの本体と一体成型で、銀色に塗装してあるだけなので、
輝いているようには見えませんが、
サイズの小ささを活かした “可愛らしさ” が輝きます。
・・・なんか、一休さんみたい(笑)。

和みや癒しを与えてくれる、
アンティークトイ・昭和ソフビならではの味わいですね。



     

これは、
海賊版の人形で、全長約15センチ。

なぜか、
全身が白。
光沢のある青い姿の実物とは、あまりにもかけ離れたイメージです。

原作者が川内康範先生だから、
月光仮面やレインボーマンと同じような
白いコスチュームのヒーローだろうと勝手に思い込んで、
実物のダイヤモンド・アイの姿をチェックする事なく、安易に製造したのでしょうか?
ノーテンキな人形です。

贋物でお金儲けしたいなら、
なんで、
ちゃんと番組を見て、
少しでも正規品に近い造形・彩色の人形にしないのでしょう?


・・・あ、もしかして、

 “騙して売りたいわけじゃない”

という、
贋物を作る者には贋物を作る者としての、
“ポリシー” というか “良心” というか、そんなものが当時はあったのでしょうか?(笑)




ところで、
ダイヤモンド・アイが闘う相手は、“前世魔人” という悪霊なのですが、
これが、実に奇怪でユニークなキャラクター。
普段は人間の姿をしているのですが、
ダイヤモンド・アイに “外道照身霊波光線” を浴びせられると
世にも醜いその正体を現し、
「ばれたかぁ〜っ!」と叫びながら、
歌舞伎の見得切りよろしく上体を振ります。
この、
怖いのか滑稽なのかよくわからない所作(笑)が、
ケラリン、ヒトデツボ、ワレアタマ・・・などというケッタイな名前に
ピッタリとマッチ。
怪獣・怪人のブームの中で育った僕らの感受性を絶妙に刺激する、名悪役たちでした。
当時、
彼らがもしソフビ人形になっていたら、
今頃は、僕のコレクター人生を大いにときめかせる、さぞかし魅力的なアイテムになっていた事でしょう。
残念。

まぁ、でも、
主人公のダイヤモンド・アイだけでも、ソフビ人形になっててくれて、
ホント、良かったです。
無事、『おらあガン太だ』の話からソフビの話に繋げられましたからね。


・・・って言うより、
そもそも、
自転車に乗る小学生たちとすれ違って『おらあガン太だ』を思い出した時点で、
最初からダイヤモンド・アイのソフビについて書くよう、
導かれていたのかもしれません。

 たかが自己満足のエッセイに何を大袈裟な・・・、

と笑われるかもしれませんが、
原稿を書き終えた今、ふと、そんな気がしてきました。







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