第124回 「愛鳥週間にソフビ鑑賞を」 2014.5
今月の10日から16日は愛鳥週間。
この時期に活動が活発になる野鳥を通して、
自然の素晴らしさや大切さを再認識する目的で設けられた1週間です。
今回はそれに因んで、
鳥をモチーフにした怪獣・怪人を特集する事にしました。
僕の心の中を
勢いよく飛び回る “鳥” たちを紹介しながら、
ソフビ蒐集の楽しさや悦びを、改めて実感してみようと思います。
まずは、これ、
『ウルトラマン』第20話「恐怖のルート87」に登場した、高原竜ヒドラ。
ブルマァク製 スタンダードサイズ、全長約20センチ。 |
ひき逃げ事故で亡くなったアキラ少年の怨念によって
事故現場の国道に飛来し、走る車を襲う怪獣なのですが、
鳥のような姿でありながら手足の造形や動きが人間的、
というところがポイント。
ほかの怪獣がそんなであったら、
これは生き物ではなくて
中に人が入って演じている着ぐるみなんだ、って事を意識して
夢見る気持ちが冷めてしまいますが、
ヒドラに限っては、
逆にそれがリアルで、
怪獣に人間の魂が乗り移っている、という超常現象を
視聴者が実感出来るよう、効果的に作用しました。
怪獣であるヒドラから
“恨み” という人間的感情を感じ取って、
僕は子供心に、生々しい恐怖を覚えた記憶があります。
そもそも、このヒドラ、
ロケ地として使われた伊豆シャボテン公園に建っている、
“荒原竜の石像” をモデルに作られた怪獣であり、
その荒原竜は、
頭部が鳥で胴体が哺乳類、という架空の動物ですから、
“人間の魂が乗り移った鳥のような怪獣” である高原竜ヒドラの設定は、
無理なく自然に生まれたものだと思われます。
これが、その “荒原竜の像”。 ヒドラに思いを馳せて、記念撮影。 | |||||
ちなみに、この像、
ほかにも、
『仮面ライダー』のサボテグロンの回に、
ショッカーのアジトとして登場した事もありますが、
その際も、
鷲がシンボルマークであるショッカーにピッタリの素材として、
リアリティのある存在感を発揮していました。
言うなれば、
夢や空想の世界と現実とを繋げてくれる愛しの巨大アイテム、
といったところでしょうか・・・。
とにかく、
僕らの世代の特撮ファンには馴染み深い像なのであります。
ところで、
この『ウルトラマン』第20話「恐怖のルート87」、
脚本は金城哲夫さんですが、
空高く飛び去るヒドラの背中に
アキラ少年の亡霊が乗っている事に気づいたウルトラマンが
スペシウム光線を放つのをやめるシーンや、
ひき逃げ犯が自首した事でヒドラはもう現われなくなる、って結末が、
いかにも金城さんらしくて、僕は好きです。
・・・まぁ、
タイアップ先のシンボル像を
完全な悪者として描いてウルトラマンに退治させるわけにはいきませんから(笑)、
そういった事情も含んで、の物語であったとは思いますが。
そして、
第2次怪獣ブームの真っ只中に発売されていたこのソフビも、
そんな石像やお話の魅力に負けず劣らずの、情趣に富んだ出来になっています。
鳥という生き物が持つ、
怖さと可愛らしさの両方が感じられる顔の表情、
手作り感に満ちた、全身の細やかな “彫り”・・・、
その深く温かい見た目・手触りに、
アンティークソフビの味わいの妙を感じます。
原型師が江戸ッ子だったのか、 足の裏に “ヒドラ” ではなく “シドラ” と 彫られているのは、 ソフビコレクターの間では有名な話です。 これもまた、アンティークソフビの味わいの妙(笑)。 |
こちらは、 第68回「心は “せいたかさん”」でも紹介した、ミニサイズ。 |
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3体とも、全長約10センチ。 向かって左端と真ん中の2体がブルマァク製で、 右端のド派手な彩色の人形は海賊版です。 手に乗せて、餌をあげたくなっちゃいます(笑)。 |
そしてこれは、 昭和50年代の商品。 ポピー製 キングザウルスシリーズ、全長約17センチ。 |
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背中の、 ちょうどアキラ少年の亡霊が乗っていた辺りを中心に銀色が吹かれていますが、 アキラ少年の魂が ウルトラマンの色をした光の粒子となってそこに留まっているのでしょうか・・・。 単なるオモチャの人形ではなく、 これを手にして遊ぶ子供たちのための “交通安全の御守り” 、そんな気もするソフビです。 |
これらは、 昭和の終わりから平成の始めに発売されていた、 バンダイ製 ウルトラ怪獣シリーズ(ウルトラ怪獣コレクション)。 左の人形(初版)のみ、全長約17センチで、 下の3体は全長約16センチ。 |
リアル志向のシャープな造形である事と 目の玉を描かずに顔の表情を表現している事から、 何やら血の通わぬ印象で、 実物のヒドラよりも モデルとなった石像の冷たさをイメージしてしまいます。 むしろ、 先に紹介したブルマァクやポピーの人形の方が、 怪獣に宿った人間の霊魂が感じられて、 実物のヒドラをイメージしやすい気がしますね。 |
続きましては、始祖怪鳥テロチルス。
ポピー製 キングザウルスシリーズ、 全長約16センチ。 |
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ブルマァク製、全長約21センチ。 |
『帰ってきたウルトラマン』の、
第16話「大怪鳥テロチルスの謎」と
第17話「怪鳥テロチルス東京大空爆」の、前後編に登場した怪獣です。
2週にわたって描かれた怪獣となれば、
必然的に強敵なわけで、
視聴者である僕ら子供たちに熱く支持され、有名になる事は約束されたようなもの。
『ウルトラマン』のゴモラしかり、
『ウルトラセブン』のキングジョーしかり。
この『帰ってきたウルトラマン』でも、
グドンとツインテール、シーモンスとシーゴラス、
あるいはブラックキングを連れてきたナックル星人など、
印象に残る人気怪獣ばかりです。
なのに・・・、
なのに、このテロチルス、
僕と同世代の、子供の頃『帰ってきたウルトラマン』を観ていた人間でも、
憶えている人があまりいません。
姿形も迫力があってカッコいいし、
スペシウム光線だって効かないし、
口から吐く繊維状の物質が
排気ガスと化合すると毒ガスを発する、なんていうユニークな特徴もある、
実に魅力的な怪獣なのですが、
その存在は、哀しいくらいマイナーなのです。
原因は明白。
テロチルスの脅威よりも、
この回のゲスト出演者である石橋正次さんを中心に繰り広げられる、
物語自体の異質な印象の方が、
圧倒的に勝ってしまっているからです。
上原正三さん脚本のこのエピソードは、あまりに渋すぎました。
まず、
石橋さん演じる三郎が、
自分を裏切りお金持ちのボンボン・横川と婚約した由紀子に復讐しようと
殺人未遂を犯し警察から追われる、
という、
まるで刑事ドラマのような展開が、いきなりインパクト大。
そこへもってきて更に、
恋人未満であった郷とアキの仲を
三郎と由紀子と横川の三角関係に絡めていく事によって
恋人同士へと発展させていく、
という、
言わば青春群像劇のような味わいもある、重厚な作品になっているのです。
お話が2週にわたるのは、
この、
子供向け怪獣番組とは到底思えないお話が
じっくりと展開していくからであって、
決してテロチルスが手ごわいからではないのです。
特に後編などは、
完全にテロチルスは置いてきぼりを喰らっています。
みんな、
石橋正次さんがゲストで出たこの物語の事は憶えていても、
そこに出てた怪獣がどんなヤツだったか、は憶えていないのです。
かくいう僕も、
鳥の怪獣だった事は憶えていましたが、
その名前や、最後は帰りマンにどうやって倒されたか、を憶えていませんでした。
なんだか可哀想なので(笑)、
大人になった今、
僕は、そんなテロチルスを
コレクションのソフビ人形を通じて、精一杯愛してやろうと思っているのです。
フォルムの美しさ、充実したボリューム感、 これがブルマァクのソフビだ! と言わんばかりの見事な出来。 |
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やや上を見上げている首の角度と ナチュラルな “揺れ” が感じられる尻尾の曲線が秀逸。 シルバーやメタリックグリーンの吹きも鮮やかです。 |
それにしても、
由紀子という女は不愉快ですね。
三郎の想いを知りながらお金持ちのボンボンを選び、
そのボンボンが腰抜けだとわかったら、すぐさま郷秀樹を頼り、
最後には三郎に向かって
「死んでもいいからサブちゃんのそばにいたい」
などと言い出すのですから。
・・・信じられません。
しかも、
三郎が死んだ後は、一人、前向きに生きていく、という逞しさ。
当時、僕は7歳という幼き身でありましたが、
この由紀子の言動には、
強い不快感・不信感を覚えただけでなく、
女という生き物の恐るべきしたたかさを知ったのでした(笑)。
もちろん、
好きな女に振られたからといって、
その女や相手の男を殺そうとする三郎はとんでもないヤツなのですが、
石橋さんの強烈な個性によって、
愛や情熱のエネルギーを自身で制御出来ない若者の、
怒りや焦り、あるいは哀しみ、といったものが見事に表現されていて、
女(由紀子)のしたたかさや逞しさとは対照的な、
男の未熟さ・馬鹿さが感じられ、つい感情移入してしまいます。
・・・って、
やっぱりテロチルスより物語を語っちゃう(笑)。
お次は、怪人、行きます。
『仮面ライダー』第11話「吸血怪人ゲバコンドル」に登場したゲバコンドル。
バンダイ製 スタンダードサイズ、全長約25センチ。 |
両脇下にある伸縮自在の飛膜で空を飛ぶ、吸血鬼。
クチバシの無い顔に代表されるように、
コンドルを思わせる容姿はしていませんが、
モチーフにした動植物を単に変形させただけの
安易なデザイン・造形をしていないところがショッカー怪人の深さだし、
コンドルという生き物の能力よりも、
今までの怪人の長所だけを集めて作られた、という特長が “売り” なので、違和感はありません。
むしろ、
その野蛮で冷血な性質が滲み出たような顔貌にピッタリの、
“ゲバコンドル” という音の響きに、
手ごわい悪者としての説得力を感じます。
また、
そんな、実物の身の毛もよだつ醜い顔を、
近所の悪ガキ、あるいは酔っ払ったオッサンみたいな、
不体裁だけど憎めない顔にアレンジする事で、
愛嬌を持たせて絶妙に恐怖を緩和させている、
この放映当時のソフビにも、
優秀なオモチャとしての説得力を感じます。
こちらはミニサイズ。 ポピー製で、全長約11センチ。 襲いかかってくるようでもあり、空を飛んでいるようでもあり、 はたまた、 サイクロンに吹っ飛ばされた最期のようでもあり、 小さい人形ながら、迫力があります。 |
そして、
最後にもう一人、ショッカー怪人を。
第52話「おれの名は怪鳥人ギルガラスだ!」に登場した、ギルガラス。
ポピー製、全長約12センチ。 |
その名のとおり、カラスの怪人です。
ゲバコンドルと異なり、
今度は一目でカラスの怪人だと判る容姿をしていますが、
人間を殺人鬼に変貌させてしまう作用のある毒ガス(デットマンガス)をばらまき、
人間同士で殺し合いをさせる事が使命、
というこの怪人は、
カラスの持つ薄気味悪いイメージそのままに、
真っ黒なその姿で、
僕ら当時の子供たちにショッカーの恐怖を強く印象づけてくれました。
しかも、
この回で2号ライダー編が終了した事もあって、忘れられない存在です。
そういえば、
2号ライダー編の始まりは、
ヒドラの像が登場したサボテグロンの回でしたから、
なんか、
因縁みたいなものを感じますね(笑)。
焼鳥屋にやって来ました。 ギルガラスのソフビを見つめていたら、 劇中の、 立花レーシングクラブのお姉さんが カラスに向かって(ギルガラスが化けたカラスだとも知らず)、 「言う事聞かないと焼鳥にしちゃうゾ」 って言うシーンを思い出したので、 無性に焼鳥が食べたくなったのです。 もちろん、 カラスのではなく、鶏の、ですけど。 愛鳥週間に焼鳥を食べるなんて、なんだか気が引けるのですが(笑)、 家禽である鶏は、 自然保護の象徴である野鳥とは別物ゆえ、問題はありません。 |
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それにむしろ、 美味しくありがたく食す事こそが、鶏への “愛” だと言えますし、 名古屋コーチンとか手羽先とか、 鶏肉は名古屋の食文化の筆頭ですから、 鶏肉を好んでよく食べる名古屋人にとっては、毎月毎週が “愛鳥週間” なのであります。 |
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・・・屁理屈はさておき(笑)、 最近、僕はこの焼鳥屋によく来ます。 元々は 事務所の後輩がここでアルバイトしていた関係で知ったのですが、 何を食べても美味しいし、 お店の規模や雰囲気が 僕の生理に一致して居心地が良く、とても気に入ってしまいました。 地下鉄桜通線の国際センター駅の近くにあるそのお店の名は、琴三(ことぞう)。 38歳のイケメン大将の、 今は亡きお祖父様の名前だそうですが、 カッコいい名前だし、 それを自分が人生の勝負をかけたお店の名前に持ってくる、大将の思いやセンスが好きです。 美味しい料理で毎日お客さんを喜ばしているお孫さんを、 お祖父様は、 きっと笑顔で見守って下さっている事でしょう。 |
僕が必ず最初に注文するのがコレ、肝刺し。 絶品です。 「そのまま出してるだけで、ボクは別に何もしてないから・・・」 と大将は謙遜しますが、 こんなに美味しい肝刺しは、なかなか無いと思います。 もう、ビール飲んでコレ食べたら帰ってもいいくらい(マジ)。 |
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でも帰れません。 焼鳥屋さんなンだから、焼鳥を食べないと・・・(笑)。 |
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ぼんじり、ねぎま、ハツ。 これが僕のベスト3。 匂い、食感、味・・・、その全てに、生きてる喜びを感じます。 ・・・大袈裟じゃないよ。本当に凄く美味しいンだから。 |
というわけで、
以上、
「愛鳥週間にソフビ鑑賞(・・・と焼鳥で一杯)を」でした(笑)。
最後までお付き合い下さり、ありがとうございました。
また来月、お会いしましょう。
あ、そういえば、
先月は
ギロン人のソフビ見てたらお好み焼きが食べたくなって、
今月は
ギルガラスのソフビ見てたら焼鳥が食べたくなって、
・・・同じですね、毎月(汗)。
コレクションのソフビ眺めて、飲み食いに出かける・・・、
それしかやる事無いのかなぁ、僕(苦笑)。