真水稔生の『ソフビ大好き!』


第146回 「涙のソフビ」  2016.3

今日、
・・・いや、もう0時を過ぎて日付が変わったから、
昨日、
初めて息子たちと酒を飲みました。

長男も次男も二十歳を過ぎたので、

 そういえば、お酒飲めるンだな、

と気づき、
居酒屋に誘ってみたのです。

彼らが生まれてからの事をいろいろ思い出しながら、
飲んで食べて、
そして語り合いましたが、

 ついにこんな日が来たか・・・、

というよりは、

 いつの間に2人とも
   こんなに大きくなっちゃったンだろう・・・?

って気持ちでした。

というのも、
長男とは6年と8ヶ月、
次男とは4年と2ヶ月、
たったそれだけしか一緒に暮らしておらず、
それ以降は
たまに会うだけでしたから、
彼らが成長してきた日々にあまり実感が無いのです。

もちろん、
会った時には、毎回、
我が子の成長をちゃんと確認してきたはずなのですが、
やはり、
一緒に暮らしていた時の印象の方が圧倒的に勝るのと、
あと、
僕自身の暮らしに、
この10年余りずっと変化が無いので、
幼い子供が
お酒を飲めるような年齢になるほど年月が経っている事に、
気づかずにいたンですよね。

10年や20年経っても、大人は大人のままですが、
子供は違います。
大人になってしまうのです。

当たり前の事ではありますが(苦笑)、
それを、
身をもって痛感した、
ちょっぴり淋しいけどとても幸せな、感慨深いひとときでした。

       

昭和59年に公開された映画『ウルトラマン物語』では、
子供から大人に成長するウルトラマンタロウの姿が描かれましたが、
ウルトラの父も、
大人になったタロウとお酒を飲んだでしょうか・・・?(笑)

上の写真の、
少年時代のタロウ人形は、
商品名を色々変えながら発売され続けた、
ウルトラファミリーのミニソフビセットの中に入っていたもので、
バンダイ製、全長約11センチ。

背中に “コタロー” と刻印がある同じ型が
毎回流用されていましたが、
やはり、
発売時期によって、細かい違いがあります。

     昭和63年に発売された、
 “結集ウルトラヒーロー15” の中の1体。

 いちばん最初のバージョンで、
 塗装が、前面にしかされていません。 

     平成6年に発売された、
 “不滅のウルトラ戦士セット” の中の1体。

 背面まで、ちゃんと塗装されました。
 

 
 





 平成12年に発売された、
 “不滅のウルトラ戦士1” の中の1体。

 踵が高くなりました。 

   人形も成長している、という事でしょうか?(笑)
         
         

タロウをしっかりと育てたウルトラの父と違い、僕は、離婚で息子たちを手放してしまいました。
そのせいで息子たちは、
しなくていい嫌な思いをいろいろしたであろうに、
僕は
今までただの一度も、
ただの一言も、
彼らから恨み言を言われた事がありません。

子供に気を遣わせているなんて、なさけない親です(恥)。

こんな父親なのに、
息子たちは今日まで無事に育ってくれて、なんて幸せな事でしょう。
感謝の気持ちでいっぱいです。

 神様、ありがとうございます。
 そして、これからも、
 息子たちの事、どうかよろしくお願いします。

そう心の中で手を合わせながら、
いつのまにか大きくなったその背中を見送り、先ほど帰宅した次第。


で、
お正月に友人からもらった焼酎がまだ少し残っていたので、
独りで飲み直す事にしたのですが、
昔の写真などを見ながらしみじみ飲んでいたら、

 ♪お前が二十才になったら~
 ♪酒場で二人で飲みたいものだ~

で始まる、
河島英五さんの『野風増』が聴きたくなりました。

けど、残念。
僕は河島さんのCDを持っていないのです。

 「ベストアルバムの1枚くらい買っておけばよかったなぁ・・・。
  でも、
  あの歌の良さが解るようになるとは、思わんかったもんなぁ・・・」

などと心の中でつぶやきながら、
聴くのを断念しかけました。
でも、ふと、

 ・・・ん? そういえば・・・、

と思い出し、CDラックを探したら、
これがありました。

『愛の奇跡』や『愛は傷つきやすく』などのヒット曲や
『ご存知!女ねずみ小僧』の主題歌だった『真夜中の子守唄』が収録されている、
ヒデとロザンナさんのベストアルバムなのですが、
いちばん最後に、
ヒデさんがソロ(出門英 名義)で出した『野風増』が収録されていたのです。

よかったぁ~、嬉しい。

『野風増』だけリピートにして、何回も繰り返し聴きましたが、
いやぁ、いい歌です。胸に沁みます。
この歌に惚れ込んで、
シングル曲としてレコーディングされた河島さんやヒデさんのお気持ちが
窺い知れようというものです。

ただ、
河島さんもヒデさんも、40代後半で亡くなってしまい、
御自身の息子さんが二十歳になった時には
もうこの世にいらっしゃらなかったンですよねぇ・・・。

なのに、
ろくに父親らしい事もしてやってない僕が、
自分の息子たちと酒が飲めて、なんだか申し訳ないような気もして、
再度神様に感謝すると同時に、
いろんな思いが、涙となって込み上げてきてしまいました。

“ウルトラの父” ならぬ、“ウルウルの父” (苦笑)。

   ・・・ってか、
 もう、ウルウル通り越してますけど(恥)。 

 こんなンでも、一応、父親なのです。

 
  ・・・あ、そうそう、
こんなンでも、一応、ウルトラの父です(笑)。 
 

  ブルマァク製、全長約36センチ。

 昭和40年代後半の商品で、
 クリアボディから体の内部が透けて見えるようになっています。
  当時を知る僕と同世代の方なら解ると思いますが、
この珍奇なソフビ、
タカラの変身サイボーグを安易に真似たものですね。

確かに、
変身サイボーグは、
内部のメカが見えるクリアボディのアクションフィギュア、
という事で
僕らを虜にした大人気のオモチャでしたが、
それは、あくまでも、
“サイボーグである” という設定・ストーリーがあったからこそのもの。

ウルトラの父がスケルトンになったところで、
何の意味も無いし、
べつに面白くもないし、
特にカッコよくもないし、
この人形は、
まったくと言っていいほど売れなかったであろうと思われます。
 
 
   “ウルトラの父” というキャラクターの設定・成り立ちをまったく無視して、
 “変身サイボーグ” という他社のヒット商品を見た目だけ真似て、
 勢いで商品化しているところが、なんともブルマァク。

  しょうがねェなぁ、もう、

 って感じです(笑)。
でも、
オモチャとして
リアルタイムでは言わば “機能しなかった” このウルトラの父人形は、
まるで、
父親として
リアルタイムでは言わば “機能しなかった” 僕のよう。

大人になった息子たちに、

 しょうがねェなぁ、もう、

って、思われてるところまで似ています。

・・・なんだか、愛しさが倍増してきたゾ。
 

ただ、今は、
涙でぼやけて、クリアボディの内部もよく見えません(苦笑)。




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