第122回 「風立ちぬ(追悼 大瀧詠一・その3)」 2014.3
昨年末に亡くなった大瀧詠一さんを偲び、
名盤『NIAGARA CALENDAR』に因んで
カレンダー形式で僕のソフビコレクションを紹介していく、“ソフビ大好き!カレンダー”、
いよいよラスト、9月から12月です。
九月、長月、SEPTEMBER |
『Tシャツに口べた』 9月、と聞いて 僕がまず思い浮かべる言葉は、“からし色”。 秋冬になると からし色の服が流行るそうですが、 ファッションに疎い僕が そんな事で “からし色” を認識・記憶しているわけがないので、 どうしてだろうと考えてみたら、 竹内まりやさんの 『September』という曲(作詞:松本隆 作曲:林哲司)の歌い出しが、 ♪からし色のシャツ 追いながら〜 だったからだと気づきました。 歌の力は凄いなぁ・・・、と改めて実感(笑)。 竹内まりやさん、と言えば、 その『September』も もちろん素敵ですが、 60年代のアメリカンポップスのヒット曲『恋のひとこと』を 大瀧さんとのデュエットでカヴァーしていて、あれも印象的でした。 ただ、あの歌、 恋焦がれる相手に想いを伝えたいのだけれど、 「I Love You」という、気の利かない言葉しか浮かばない。 それが嘘偽りのない自分の真実の言葉なのに 軽蔑されるのが怖くて言えない・・・、 っていうような内容の歌詞だったと記憶していますが、 口説き文句が粋かどうか、なんて べつに気にしなくてもいいと思うンですけどね。 嫌われたくない、 って心情は解りますが、 気取ったってしょうがないじゃないですか。 恋をした時点で 人間なんてみんな冷静ではいられないンですから。 そんな、 狂おしく思いつめるほど誰かを好きになったのなら、前進あるのみ。 当たって砕けろ、です。 カッコいいとかカッコわるいとかじゃありません。 問われるのは、 相手を想う気持ちの純度。 それを馬鹿にするような相手なら、その恋に明るい未来など無いでしょう。 あと、それに関連して言うと、 着ている服がおしゃれかどうか、なんて事も、どーでもいい事だと思いますね。 先ほど、 僕はファッションに疎い、って言いましたけど、 昔、ボロボロのTシャツ着てて、 友人におもいっきり嘲笑された事があります。 ホント、気にしないンですよね、僕。 特にTシャツだと、 ちょっとくらい伸びたり破れたりしても 「(芝居の)稽古で着られる」って思ってしまうから なかなか捨てられない、って事もあるし、 それに、 ♪ぼろは着てても心の錦 じゃないですけど、 “着てる服がおしゃれじゃないからといって、それがどーした?” って意識があるので、 ファッションに関心がある人からしたら信じられないような格好を 平気で(って言うか、あえて)してしまう傾向もあります。 だいたい、 テレビや雑誌などで、 ファッションチェックなるものをしている人がいますが、 他人の服装に偉そうに優劣なんかつけて、何様のつもりか、って思いますね。 「この服、どう思います?」 って本人から聞かれたのならまだしも、 頼まれてもいないのに一方的にやってるわけですから、 余計なお世話にも程があります。 しかも、 服装のセンスから勝手にイメージした人物像で その服を着ている人の人格否定まで始める場合もあるので、失礼極まりない行為です。 そんな企画を見聞きするたび、 僕は、 「放っといたれ、そんな事。 どんな服着とろうが、その人の勝手だがや!」 って、 怒り口調の独り言を言ってしまいます。 第82回「自由を我等に」の中でも述べましたが、 僕は、 他人の髪型とか服装とかにケチをつける人が大嫌い。 見た目だけで人を批判し、 自分の考えや嗜好を押し付ける・・・、 よくもまぁ、そんな傍若無人な事が出来るものです。 とても不愉快。 何を根拠や自信にして 自分にそんな特権があると思えるのか、不思議。 脳の中に虫でもいるンじゃないか、って思いますね。 ファッションに興味やこだわりがあるなら、 自分がおしゃれをして楽しめばいいだけの事であって、 ファッションに興味の無い人や 自分とは好みやセンスが異なる服装をしている人を 否定したり愚弄したりする権利など、誰にもありません。 ましてや、 それを理由に中傷するなど、もってのほか。 心の底から軽蔑します。 なにがファッションチェックだ、アホか!
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全長約23センチ。 |
全長約17センチ。 |
十月、神無月、OCTOBER |
『アルミ鍋の中の芋』 10月13日は “サツマイモの日”、だそうです。 「誰が決めたンだてェ〜」 とネットで調べたら(暇だなぁ、僕も(笑))、 埼玉県川越市のサツマイモ愛好家のグループ “川越いも友の会” が制定した、とありました。 10月はサツマイモが旬である、という事と、 サツマイモ(焼いも)の異名 “十三里” の “13” が、ひっかけてあるそうです。 なんでも、 江戸時代に、 京都の焼きいも屋が “八里半” という看板を掲げていたそうで、 それは、 焼いたサツマイモの味が栗の味に似ていた事による、 “栗(九里)に近い”、っていうシャレだったわけですが、 川越の焼きいも屋がそれに対抗して、 かつ、 江戸から川越までの距離が約十三里である事ももじり、 「栗(九里)より(四里)うまい十三里」(9+4で13) という宣伝文句を謳った、との事。 巧い事言うなぁ・・・って思いますが、 良く考えたら、 京都の焼きいもは 栗に及ばぬ味だそうですが、 江戸から十三里のこちら川越の焼きいもは 栗よりも美味しい味ですよ、 って意味ですから、完全なる挑発。 喧嘩になったりしなかったンでしょうか・・・? まぁ、でも、 それが、サツマイモ(焼きいも)が “十三里” と呼ばれる由来でもあるそうですから、 歴史の重みのある、 決して安易だったり無理矢理であったりしない記念日制定理由なわけで、 なるほどなぁ・・・、 と納得させられました。
『がんばれ!!ロボコン』に登場する、 焼いも屋の見習いロボットです。 ロボットなのに、 屋台を引いて焼きいもを売るし、臭いオナラもします。 ロボットといってもロボコンの仲間ですから、 人間以上に人間らしい、というのが特徴ですからね。 向かって左側の人形は、 名古屋の骨董市で買った中古品ですが、 右側の人形は、 20年くらい前、 なんと、 川越のオモチャ屋さんの倉庫から、 袋入り新品の状態で発掘したものです。 会計の際、 「名古屋から来ました」 って言ったら、 店主のおじさんが、 「えっ? そりゃまぁ、ご苦労さんな事で・・・」 と、驚かれ、 甘くて美味しい蒸かし芋をごちそうしてくれました。 お店の近くにある御自宅から、 奥さんと思われるおばさんが たまたまおじさんのおやつ用に持ってきたものだったのですが、 湯気がたっている鍋ごとそのまま僕に差し出す、という おじさんの飾り気の無さが印象的だったので、よく憶えています。 その時は、 川越とサツマイモの関係など全く知らなかったのですが、 焼きいも屋のロボット・ロボプー人形を サツマイモの聖地・川越のオモチャ屋で見つけて 店主にをイモをふるまわれた、 なんて、 ずいぶん出来すぎた話だったンだなぁ・・・、と 今しみじみ感じています。 余談ですが、 田宮二郎さん主演のテレビドラマ『高原へいらっしゃい』の中で、 ホテルの従業員役だった由美かおるさんが、 宿泊客の子供が持っていたオモチャで一緒に遊んであげるシーンがあり、 ロボプーのミニ人形が使われていたのを憶えています。 その子供に 「これロボプー。オナラするンだよ」 と教えられて、 「まぁ」 と優しく微笑む由美かおるさんが、 子供心にとても素敵なお姉さんに思えたものです。 それがずっと頭にあったので、 以前、 『がんばれ!!ロボコン』を知らない僕の彼女に、 コレクションケースからこのロボプー人形を取り出し、 その『高原へいらっしゃい』の子供を真似て、 「これロボプー。オナラするンだよ」 教えてあげた事があるのですが、 「ふ〜ん」 と言われたので、 「違うっ! “ふ〜ん” じゃなくて、“まぁ” だ!」 と、 女性の正しく美しい所作を指導してあげました(笑)。 |
十一月、霜月、NOVEMBER |
『しんぼう』 西向く侍、という言葉があります。 二(に)、四(し)、六(む)、九(く)、十一(さむらい) といったように、 31日が無い月をおぼえる語呂合わせですが、 十一を縦に書くと “士” という字に見えるから 11月の事を “さむらい” と呼ぶのだと教わり、 “さむらい”は “侍” とも “士” とも書く事を知りました。 “侍” だと、 単に武士の事を指すのですが、 “士” は、 男の、強くて勇ましい精神や生き方を強調する際に用いるのだとか。 中学2年の時、 沢田研二さんの『サムライ』(作詞:阿久悠 作曲:大野克夫)が ヒットしていたのですが、 あれなんかは、 まさに、“侍” ではなく “士” の方の “サムライ” が歌われていますね。 ただ、 男はサムライだから・・・、 という理由で 愛する女性のもとからカッコつけて去っていく、 という神経が、 10代だった当時はもちろん、 50歳になろうかという今でも、僕にはまったく理解出来ません。 嫌われて捨てられない限り、 好きな女のそばからは絶対離れませんよ、僕なら(笑)。 そういえば、 沢田研二さんは、 大瀧さんが作った『あの娘に御用心』って曲も歌っていて、 それは、 とりこになって心を奪われてしまうから あの娘とは視線を合わせちゃダメだよ、 僕みたいなフヌケになっちゃうよ、 って内容で、 こっちの方が断然共感出来ますね(笑)。 でも、 結局は、 女に影響される男の生き方を否定しているわけだから、 やせ我慢してでも 女との甘い生活を断ち切る『サムライ』と同じで、 “辛抱する” ってのが、やはり男の美学なのでしょう。
このサナギマン、 戦闘能力は無いし、容姿も気色悪いし、 子供の頃は「カッコ悪いなぁ」って馬鹿にしてた存在でしたが、 今では全く反対の認識。 サナギマンは強くてカッコいいヒーローだ、と思っています。 だって、 腕力が強い男もカッコいいけど、 本当に強い男っていうのは、辛い時に平気な顔していられる男でしょ? 男なら、 サナギマンを愛し、サンギマンみたいにならなきゃ。 サナギマンこそ、 さむらい魂を持った、日本の真のヒーローだ! ・・・言い過ぎか(笑)。 |
十二月、師走、DECEMBER |
『12月の飴の日』 大瀧さんが、 松本隆さん、細野晴臣さん、鈴木茂さんと 組んでいた伝説のロックバンド・はっぴいえんどのナンバーに、 『12月の雨の日』という曲があります。 感情を表す言葉を一切使わずに心象を表現している歌詞と 瑞々しくもどこか苦味のあるメロディー・・・、 大好きです。 斬新で、凝ってて、明らかに異質な楽曲なのに、 奇をてらったようなイヤらしさや不自然さをまるで感じさせず、 溶け込むように歌の世界に浸らせてくれるその “表現力” には、只々感嘆。 聴く度に唸ってしまうほどです。 そんな名曲『12月の雨の日』、 歌詞の中に、 ♪雨上がりの街に 風がふいに立(おこ)る という箇所がありますが、 大瀧さんが亡くなった去年の12月30日は、 まさにそんな感じでした。 ここ愛知県では、 26日の夜に雨が降り、 冷たい空気のせいもあって、年末はずっと街全体が濡れている感じでした。 大瀧さんは、 そんな中を風立ちぬとばかりに、ふいに逝ってしまわれたのです。 僕は、 年末の数日間ずっと、 愛知県の豊橋、ってところでテレビドラマの撮影だったのですが、 薄手の衣装で、 朝から晩まで寒さに震えながら屋外にいなくてはならない、って状態が 何日も続いていたのと、 その26日の夜の雨に濡れてしまったのが決定的なダメージとなり、 久しぶりに風邪をひいてしまいました。 発熱、咳、鼻水、喉の痛み・・・、と すべての症状に苦しむかなりキツい状態で、 通常でしたらそのまま寝込んでしまうところだったのですが、 撮影を休むわけにはいきませんから、 せめて 喉の痛みだけでも抑えよう、と 30日は、一日中、のど飴をなめながら撮影に臨んでいました。 なので、 大瀧さんが風のようにこの世から去っていったあの日は、 僕にとって “12月の飴の日” なのです。 不謹慎なクダラナイ駄洒落ではなく、 大瀧さんのような偉大なる存在でもあっけなく死んでしまう現実を受け止め、 命のはかなさを改めて思い知ったうえで “生きる” とは何かを考えた僕の、自分自身に対する答えです。 同じ飴をなめるにも、 健康な時になめるのと 喉が痛い時になめるのとでは、 ありがたみや癒しの効果が全然違ってきます。 それは、 迷ったり、傷ついたり、嘆いたり・・・、が付き物の人生、 でも、それだからこそ、 優しさとか温かさとか幸せとかの価値を実感出来る、という事の、まるで縮図。 雨上がりの街で 体調不良に苦しみながら仕事をしていた12月の飴の日、 大瀧さんが音楽と命をもって、 「風邪をひくのも生きてる証。 感謝の気持ちを忘れずに、 人生のすべてを楽しみなさい」 と諭してくれた、そんな気がするのです。 ・・・って事で 雨 → 飴 → キャンディ → キャンディ・トイ(食玩)と、 “こじつけ” ではありますが(苦笑)、バンダイの食玩ソフビを紹介します。
バンダイが平成に入って初めて発売した、記念すべき食玩ソフビです。 カネゴンは1種類しかありませんでしたが、 ガラモンの方は、 このようにバリエーションがありました。
或る一定期間に発売された同一商品でこんなにバリエーションがあるのは、珍しい事でした。
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3回にわたって綴ってきた“ソフビ大好き!カレンダー”、
これにて終幕です。
長々とお付き合い下さり、ありがとうございました。
今、僕は、
ソフビ怪獣人形と大瀧詠一の音楽があるこの人生に、改めて感謝しています。
ホント、いい時代に生まれ育ったものです。
大瀧さんがもうこの世にいらっしゃらないのはとても寂しい事ですが、
美しく愉快な大瀧サウンドは永久に不滅。
大瀧詠一は、
その素敵な音楽と共に、
僕の、いや、人々の心の中で、永遠に輝きながら生き続けるでしょう。
最後は、
そんな、大瀧詠一の音楽をこよなく愛したすべてのファンの想いを表したような言葉で、
締めくくりたいと思います。
大瀧さんの訃報を受けて、
佐野元春さんが出した惜別のコメントです。
日本の音楽界はひとつの大きな星を失った。
でもその星は空に昇って、
ちょうど北極星のように僕らを照らす存在となった。
大瀧さん、ありがとう。
ご冥福をお祈りいたします。